中国を舞台とする作品にも色々とあります
真面目な歴史物から中華ファンタジーまで、お気に入りの作品を取り揃えてみました
中国を舞台とする既読作品を年代順に並べてみたものはコチラ
中国を舞台とする作品(歴史物編)■
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天空の舟-小説・伊尹伝・上」「
天空の舟-小説・伊尹伝・下」宮城谷昌光 文春文庫
中国の伝説の夏王朝の最後の王・桀王を倒し、商(殷)王朝を建てた湯王とその名宰相・伊尹(いいん)の物語。資料などほとんどないも同然の幻の夏王朝をここまで血肉のある存在として描きあげているのも素晴らしいですし、これまでただの暴君としか描かれていなかった桀王が宮城谷さん独自の解釈によってまた独自の姿を見せているのもとても興味深いのです。(画像はハードカバーを代用)
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王家の風日」宮城谷昌光 文春文庫
600年にも及ぶ栄華を誇った商(殷)王朝の最後の王・紂王と共にあった、これまた希代の名宰相・箕子の物語。夏王朝の桀王と同じく、どこの本でもただの暴君としか描かれていない、そして残虐非道な王として有名な紂王や希代の悪女・妲己をまた違った解釈で描いているのはとても新鮮です。聡明すぎた1人の王と、その王を理解する宰相の物語。太公望も登場します。(画像はハードカバーを代用)
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墨攻」酒見賢一 新潮文庫
戦国時代の中国に存在した戦闘集団・墨子教団。その目的は、非攻の哲学によって侵略されようとしている国や城を守り抜くこと。その俊英のうちの1人が、大国・趙の侵攻から梁の国を守ろうとします。趙の軍勢の2万に対し梁の軍勢は1500。果たしてこの圧倒的な劣勢に、彼は梁を守り抜くことができるのか…。未だ謎の多い墨子教団を中心に据えたフィクション。小国がただ城の守りを固めるだけの物語のはずなのに、なぜこれほど面白いのか不思議になってしまうほど。私の詳しい感想は
コチラ。
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王昭君」藤水名子 講談社文庫
漢の元帝の時代、後宮の女性たちの中から1人選ばれ、匈奴の王に嫁ぐことになった王昭君の物語。王昭君は史書にもたったの1行の記述しか残されていないという、歴史上ではほぼ無名の女性。しかし絶世の美女として様々な作品の題材となっていますし、この作品に王昭君も実に生き生きとして魅力的。今までに読んだものの中で、私が一番好きな王昭君がこの作品の中にいます。私の詳しい感想は
コチラ。
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三国志」全13巻 北方謙三 ハルキ文庫
三国志にも色々ありますが、北方版三国志は何と言っても登場人物に漢気があり、それぞれがむしょうにかっこいいのがポイント。この人物造形は、さすがハードボイルド作家として名高い北方氏ならでは。特に前半は呂布の漢気の溢れる生き様に惹かれる人が多いのではないでしょうか。正史を元に書かれているので、三国志演義を元にした吉川英治三国志などとはかなり違う部分がありますし、演義ファンには受け入れられにくいかもしれませんが、私はこちらの方が断然好きです。私の詳しい感想は
コチラ。
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泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一 文藝春秋
酒見賢一版三国志。もしくは三国志読本。ご自分のデビュー作「後宮小説」が、「シンデレラ+三国志+金瓶梅+ラスト・エンペラー」の面白さと評されて初めて、「三国志」を手に取ってみたという酒見さん。「正史三国志」も「三国志演義」も難しすぎて、適当に訳された三国志本を眺めることになったという言葉が信じられないほど詳細で、斬新な解釈が目をひきます。元々薀蓄文が面白い酒見さんなので、突っ込み加減も絶妙。孔明を神がかった仙人ではなく、ただの宇宙的変人、それも村一番の鼻つまみ者のように描いているのも面白いです。私の詳しい感想は
コチラ。
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赤壁の宴」藤水名子 講談社文庫
三国志で有名な赤壁の戦い前後を、孫策と周瑜の視点から描いた作品。ボーイズラブ系とも言えるような作品なので読者を選ぶと思いますし、間違っても真面目な三国志ファンにはおすすめしませんが、孫策を失った周瑜の切なさと痛々しさがひしひしと伝わってきて、私はとても好きな作品です。私の詳しい感想は
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公子風狂」藤水名子 講談社文庫
「三国志外伝・曹操をめぐる六つの短篇」という副題通り、曹操、曹昂、曹丕、曹叡という曹家の4人の男達と、その妻妾たちが描かれている短編集。こちらの短編では中心となっていた人物が次の話では脇役に回り… と同じ人物が様々な角度から描かれていくのも面白いです。三国志を読んでいるだけでは見えてこない姿がここにはあると思います。私の詳しい感想は
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風の王国」毛利志生子 集英社コバルト文庫
唐の玄宗皇帝の時代に吐蕃に降嫁した文成公主をモデルに描かれたシリーズ。コバルト文庫の作品なのでかなり王道の展開ではありますが、かなり史実に忠実に描かれており、読み応えがあります。当時の
吐蕃の風俗もその歴史もとても興味深いもの。私の詳しい感想は
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女帝 わが名は則天武后」山颯 草思社
中国4千年の歴史でただ1人の女帝となった則天武后。漢代の呂后、清代の西太后とともに「中国の三大悪女」として有名な彼女の姿は後世の歴史家によって作られたものだとして、実は名君であった彼女の真実の姿を描きだそうとする作品。静謐な文章がとても美しいです。私の詳しい感想は
コチラ。
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楊家将 上」「
楊家将 下」北方謙三 PHP文庫
北宋初期に実在した武門・楊一族の物語。当時北宋では、騎馬軍団を擁する遼軍の度重なる侵攻に苦しめられ、宋軍の中で遼軍に対抗できたのは楊家軍のみだったのだとか。民衆には「楊無敵」と呼ばれ、楊業の死後に民間に伝わった「楊家将」の伝説が、現代の京劇で人気の演目の1つとなっているのだそうです。私の詳しい感想は
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海東青-摂政王ドルゴン」井上祐美子 中公文庫
明を下し、清国を打建てた女真族の実力者・ドルゴンの物語。圧倒的な実力と魅力を持つドルゴンですが、その生き方は見ていて切なくなってしまうものでした。同じ時代に生き、ドルゴンと出会うことになった呉三桂の物語「
紅顔」(
感想)を合わせて読むと、さらに興味深いのではないでしょうか。私の詳しい感想は
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中国を舞台とする作品(歴史物ファンタジー風味編)■
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山月記」中島敦 新潮文庫
若くして進士試験に合格しながら挫折してしまった男の物語「山月記」、天下一の弓の名人の物語「名人伝」、孔子の弟子となった仲由の物語「弟子」、匈奴に捕らえられた漢の李陵物語「李陵」の4編が収められています。文章は多少難しいのですが、中島敦氏の漢文調の文体が非常に気持ち良い1冊。私の詳しい感想は
コチラ。
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陋巷に在り」全13巻 酒見賢一 新潮文庫
中国の春秋時代、魯の定公の時代。孔子が52歳にしてようやく魯国の官吏となり、その後定公に抜擢されて司空になった頃。孔子一門の白眉でありながら仕官もせず父の顔路と共に陋巷に住み、貧しい暮らしの中で、ただ孔子の教えを習い復していた顔回の物語。帯には「サイキック孔子伝」とありますが、主人公はあくまでも顔回。史実を元に酒見賢一さんが書き上げた壮大なファンタジーです。そして、文献資料の解説的部分が、またとても面白いのです。私の詳しい感想は
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博浪沙異聞」狩野あざみ 新潮文庫
「史記」などに題材をとり、実在の人物や史実を使って書かれた短編集。よく知られている出来事を斬新な解釈で描き、時には神仙や占いなどによって、なんとも不思議な雰囲気を生み出していきます。歴史書の中では無味乾燥なはずの史実が、これほど幻想的な物語に仕立て上げられているのには驚きました。私の詳しい感想は
コチラ。
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僕僕先生」仁木英之 新潮社
第18回ファンタジーノベル大賞を受賞した、仁木英之さんのデビュー作。何万年も生きている仙人の「僕僕」がなんと美少女姿! そしてこの可憐な僕僕先生が何とも魅力的なのです。全体的にもう少しきりっとさせて欲しいと思う面もあったのですが、その緩さ加減が逆にほのぼのとして心地良いとも言えます。作者の中国物好きが伺えるような部分も多々あり、今後の作品がとても楽しみ。私の詳しい感想は
コチラ。
中国を舞台とする作品(ファンタジー編)■
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聊斎志異・上」「
聊斎志異・下」蒲松齢(立間祥介訳) 岩波文庫
清初の作家・蒲松齢が民間伝承から取材し、書き上げた短編集。この岩波文庫版では、全491編から92編を選んでまとめているのだそう。幽霊や、狐などの妖怪変化、神仙の話など、ちょっぴり不思議な存在が普通の生活に紛れ込んでくる話が満載です。私にとっての中国物の基本はこの「聊斎志異」と「西遊記」。小学生の頃から父の平凡社版を読んでいました。
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西遊記」全10巻(中野美代子訳) 岩波文庫
小学生の頃から愛読している「西遊記」。言わずとしれた「孫悟空」が大活躍をする物語です。私が好きなのは平凡社版で、これは小学生の頃から何度読んだか分からないほど。孫悟空の能力をなかなか理解できず、分かりやすい猪八戒になびきがちな三蔵法師が歯がゆくて堪らなかったですね。中国古来の神話や道教、そして仏教の混ざり具合も絶妙です。
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桃夭記」井上祐美子 講談社文庫
「長安異神伝」(全7巻)や「桃花源奇譚」(全4巻)が長すぎるという場合はこちらからどうぞ。中国らしいちょっと不思議な出来事を描いた短編が4つ収められています。桃の木というのは、やはり中国を舞台にしたファンタジーには欠かせない存在ですね。私の詳しい感想は
コチラ。
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夢醒往還記」井上祐美子 学研M文庫
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桃夭記」と同じく、ちょっと不思議な世界を描いた短編集。この中でもデビュー前に書かれたという「魔月秘伝」は、中国風でありながらアラビア辺りのエキゾティックな雰囲気も併せ持つ作品で、とてもファンタジー味が強いです。私の詳しい感想は
コチラ。
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仙人の壺」南伸坊
中国ならではの仙人の物語が16編。南伸坊氏自身のほのぼのとしたイラストが楽しいです。南伸坊氏の独特の視点がユニークで、読んでいるうちに南伸坊氏自身が仙人のような気がしてくるかもしれません。中国仙人物の入門編としてもオススメ。私の詳しい感想は
コチラ。続編「
李白の月」も。
中国を舞台とする作品(ミステリ風味編)■
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双子幻綺行-洛陽城推理譚」森福都 祥伝社
中国史上唯一の女帝、則天武后の時代。即天武后に仕える少年宦官・九郎と女官・香蓮の双子の兄妹が、様々な謎を探っていく連作短編集。中国を舞台にしたミステリというのがまた珍しく嬉しいところです。ラストの上手さには唸らされました。私の詳しい感想は
コチラ。
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十八面の骰子」森福都 光文社文庫
全国を行脚しつつ地方役人の不正を断罪していく巡按御史は、まるで水戸黄門のよう。勧善懲悪の悪人退治は痛快無比。次の「冒険活劇編」に入れても良かったかもしれません。続編「
肉屏風の密室」も出ました。もしこの作品が気に入ったら、中国ではなく朝鮮が舞台となりますが、中内かなみさんの「
李朝 暗行御史霊遊記」もどうぞ。私の詳しい感想は
コチラ。
中国を舞台とする作品(冒険活劇編)■
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あなたの胸で眠りたい」藤水名子 集英社文庫
唐の時代を舞台にした活劇ロマンス。しかし藤水名子さんの他の作品に比べると活劇という面では抑え気味でしょうか。しかしロマンス部分も十分楽しめます。かつては貴族のお嬢様だった主人公の、大人の女の顔と少女の顔のギャップが魅力的です。私の詳しい感想は
コチラ。
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臨安水滸伝」井上祐美子 講談社文庫
宋の時代を舞台にした冒険活劇。中国でも人気の英雄・岳飛を謀殺したことで悪名高い秦檜と、その権力に楯突こうとした2人の若者の物語です。実在の人物が登場しますし、「歴史物編」に入れてもいいのですが、この作品の楽しい作風から敢えてこちらに入れました。ただの悪役で終わらない秦檜の描写が良かったです。題名に「水滸伝」とついていますが、有名な「水滸伝」とは全くの別物。私の詳しい感想は
コチラ。
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色判官絶句」藤水名子 講談社文庫
明の時代の寧波の港町を舞台にした活劇物。色男の判官と、港を牛耳る女傑、冷酷非常な寧波一の富商を中心に、活気に溢れる痛快な作品となっています。私の詳しい感想は
コチラ。
中国を舞台とする作品?(架空歴史物編)■
中国を舞台とする作品?(中華風ファンタジー編)■
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後宮小説」酒見賢一 新潮文庫
第1回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した、酒見賢一さんのデビュー作。初めて酒見さんの作品を読む方は、これがファンタジーなのかと驚かれると思いますし、もしファンタジーノベル大賞受賞作品でなければ、「架空歴史物編」に分類しても良かったと思うのですが、やっぱりこれはファンタジー。酒見さんのユーモアセンスが光っています。「雲のように風のように」という題名でアニメ化もされています。私の詳しい感想は
コチラ。
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酒仙」南條竹則 新潮文庫
物語の始まりは日本ですし、厳密には中国物と言いがたいのですが、中国の仙人が沢山登場するファンタジー。美味しいお酒と料理があればこの世は満足?人間も仙人も、登場人物は皆揃って酒好きで、読んでいるだけでお酒の匂いが漂ってきそうです。私の詳しい感想は
コチラ。
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遊仙譜」南條竹則 新潮社
中国の仙界を舞台にしたファンタジー。南條竹則さんの酒飲み小説第2弾です。こちらには途中からはギリシャ神話の神々も乱入し、「酒仙」にも負けない華やかで賑やかな世界が繰り広げられます。私の詳しい感想は
コチラ。
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炎恋記」森福都 講談社X文庫
中国史に題材をとった作品を沢山書いている森福都さんですが、これは架空の世界を舞台にした、中華的な雰囲気を持つファンタジー。何ともいえない、美しく優雅な空気が流れています。私の詳しい感想は
コチラ。
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雄飛の花嫁-涙珠流転」森崎朝香 講談社X文庫
和睦のために、新興国の王のもとに嫁ぐことになる公主が主人公。とてもオーソドックスな展開ながらも、なかなか読ませてくれる中華風ファンタジー。これがデビュー作とは驚きです。2作目の「
天の階-竜天女伝」(
感想)も同じ世界の物語ですが、オススメしたいのは断然「雄飛の花嫁」の方。同じ時代の物語が3作目「
翔佯の花嫁-片月放浪」、4作目「
鳳挙の花嫁-朱明探求」と書き続けられていますが、一番面白いのはやはり1作目。私の詳しい感想は
コチラ。
中国を舞台とする作品?(資料編)■
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中国帝王図」田中芳樹、狩野あざみ、井上祐美子、赤坂好美 講談社文庫
中国の伝説の黄帝から、清朝のラスト・エンペラーとなった宣統帝溥儀まで、中国史にその名を残す代表的な皇帝や王など総勢52人を紹介している本。皇名月さんの繊細かつ華麗なイラストがとても美しいです。私の詳しい感想は
コチラ。