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このページは、南伸坊さんの本の感想のページです。

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「仙人の壺」新潮文庫(2003年5月読了)★★★★★お気に入り
様々な中国の古典に見られる神仙譚や怪異譚を元に南伸坊氏が漫画を描き、そのそれぞれの漫画に、解説を兼ねた「蛇足」というタイトルのエッセイを付けたという本。全部で16編が収められています。

中国物の物語、特に仙人が登場するような物語は私も子供の頃から大好きですし、この中にある物語も知っているものが多かったのですが、それでもやはりとても面白かったです。今までただ単に好きというだけで、特に何も考えていなかったのですが、南伸坊氏のコメントを読んでいると、「ああ、そういえば、こういう物語は徹頭徹尾、オオボケだったな」「そういえば、妖怪らしきものが出現すると、すぐ棒で殴りかかっていたな」などと改めて思い出し、「そうか、私もこういう部分が好きだったんだ」と再確認。これらの物語は、現代の日本人が持っていない、普通に考えるとワケの分からない感覚が大きな魅力。オチも何もない、のほほんとした終わり方が、またなんとも心地よいのです。このイラストも物語に妙に合っていますね。あっけらかんとした物語に、シンプルで、しかし趣きのあるイラストがぴったり。中国ならではの不思議の世界を体感できます。
読んでいると、まるで南伸坊氏自身が仙人のような気がしてきたりして。
参考文献としてそれぞれの物語の原典が記されているので、中国物への入門編としてもオススメです。

「李白の月」ちくま文庫(2006年6月読了)★★★★
「仙人の壺」の続編。「仙人の壺」と同じように、様々な中国の古典を元に南伸坊氏が漫画を書いたもの。全17編。

前作はもっと仙人・仙女譚が多かったと思うのですが、こちらではほとんどなく、いわゆる志怪小説らしい話が中心。そのせいか、仙人・仙女好きの私には、前作の方が面白く感じられましたし、「蛇足」に書かれている事柄についても、前回の方が「なるほど」が多かったように思います。それでも、本来ならホラーになりそうな妖怪の話が、南伸坊氏の絵で描かれていると、何ともいえない味わいがありますね。日本でなら、同じ物語でもしっかりとホラー小説として演出されそうなところなのですが、中国の志怪小説はとても大らか。題名で既にねたばれ状態のことも多いですし、物語自体も唐突に不条理なラストを迎えたりします。たとえば蝶に脇の下に触れられて、主人公が唐突に亡くなってしまったり、耳から出てきた小人を見ているうちに狂ってしまったり、あるいは、蛤に入っていた刀の話を聞いた途端、聞き手の首が飛んでしまったり。そこには納得のいくような説明は何もありません。1人しかいないはずの少女を2人見たことが、なぜか数ヵ月後の主人公の死に結び付けられていることもあります。しかしそういった物語こそが中国らしいとも言えます。妙に裏読みや深読みなどしようとせずに、そのまま受け入れることこそが、中国の不思議な小説を読む上で大事なのでしょうね。

「311 人魚 南海の果てに鮫人がいる。水中に住み、魚の形をして、機織りの手を休めることがない。泣くと、眼から真珠がこぼれ落ちる。」(捜神記)
「晋の義煕の初年、晋陵の薛願の家に虹が下りて、釜の中にたまった水を飲んだ」(異苑)
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