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このページは、中島敦さんの本の感想のページです。

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「李陵・山月記」新潮文庫(2005年6月読了)★★★★★
【山月記】…若くして進士試験に合格して官吏となりながら、詩作を諦めきれずにいた李徴。しかし自分の詩業に半ば絶望した李徴は、ある時発狂して行方をくらまします。
【名人伝】…趙の邯鄲に住む紀昌という男が天下一の弓の名人になろうと名手・飛衛に弟子入り。飛衛はまず瞬きしないことを会得するようにと紀昌に言い渡します。
【弟子】…孔子の弟子となった仲由、字は子路の物語。
【李陵】… 漢の時代。匈奴に捕らえられた李陵の処置を計っていた武帝は、李陵に対する司馬遷の弁護に激怒。司馬遷は宮刑に処せられてしまいます。

どれも中国の古典から題材をとった物語。どこかで既に読んだ覚えのあるような物語ばかりですが、中島敦氏の漢文調の文体が読んでいてとても気持ち良かったです。文章は多少難しいのですが、注釈が細かくついているので大丈夫。
この中で一番好きなのは「山月記」。自分の奥底に潜む獣を飼いならしきれなくなった時に、人は獣となってしまうのでしょうか。臆病な自尊心と尊大な羞恥心という言葉がとても印象に残ります。そして最後の虎の姿が哀しいです。「名人伝」は、大真面目なユーモアが楽しい作品。「弟子」は、子路の長所は子路だけに許される魅力であること、「これはこれで一匹の見事な牛に違いないのだから」大体の方向の指示だけ与えればいいというところに、いつまで経っても大きな子供のような子路に対する孔子の愛情が感じられるのがいいですね。「李陵」には、李陵、蘇武、司馬遷という3人の男が登場。李陵が主役なのですが、物語の中では司馬遷の受けた宮刑の辺りが一番印象が強く、李陵は一番影が薄く感じられてしまいました。なぜこの李陵が主役となったのでしょう。どこか中途半端な気がしてしまったのですが、それもまた中島敦の意図したところだったのでしょうか?
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