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このページは、田中芳樹さんの本の感想のページです。

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「風よ、万里を翔けよ」中央公論社(2003年2月読了)★★★★

612年。中国史上最高の暴君とされる隋の煬帝の時代。長安から高句麗への大遠征・征遼之役には、113万余人、実に隋の総人口の14分の1もの人間が召集され、参加させられることになります。軍牌は、花木蘭の父・花弧の元にも届きました。既に50代半ばという当時では老人とも言える年齢の花弧は、身体の調子も悪く、寝たり起きたりの日々。それを見かねた17歳の木蘭は男装し、長男として父の代わりに従軍することに。そして軍中で、賀廷玉や「肉飛仙」と異名をとる沈光と出会います。遠征は高句麗に惨敗し大失敗。軍は長安へと戻ることになるのですが、煬帝は翌年に第2次征遼之役、そのまた翌年には第3次と軍を召集し、それによって隋の国力は見る見るうちに衰えていくことに。

中国では京劇にもなっているという、男装の女武者・花木蘭の物語。木蘭の目を通してみた隋盛衰記でもあります。この物語が始まった時は、隋の国力は最高で、煬帝も暗君などと考えられておらず、誰1人として隋が滅びるなどとは考えていませんでした。しかし栄華の絶頂からわずか7年半で、亡国の暴君へと没落した煬帝。元々の素材としては決して悪くなかったはずですし、本当は後戻りもできたはずなのですが… しかし一旦回り始めた歯車は、もう誰にも止められないのかもしれません。
この物語の中で、木蘭はひたすら男装のまま敵と戦い続けています。良い武将に恵まれようと恵まれまいと、戦う場所が変わろうと変わるまいと、常に変わらず賀廷玉と共に戦い続けているのです。凛とした木蘭の姿ももちろん素敵なのですが、そんな色気のないシーンが続く中で木蘭が女性の姿に戻る場面、特に木蘭が沈光の命をうけて後宮にもぐりこむシーンが印象的でした。普段は男になりきっており、女性の姿に戻ることを忘れてしまったかのような木蘭。しかし思わぬ場所で見せる茶目っ気がとても可愛いですね。そしてラストシーンも印象的。9年間も一緒に戦っていて、木蘭が女であることに一向に気付かない賀廷玉も相当のものなのですが、ここでの木蘭はとても女らしく可愛らしく、賀廷玉でなくても目が奪われてしまいそうです。言葉遣いこそ男のようでも、木の下で賀廷玉を待つ彼女の艶やかさは、まさに一幅の絵ですね。
そして張須陀も良かったのですが、沈光の最期が非常にかっこ良かったです。隋ではなく唐に従っていたら、これからも活躍できたはずの人材がたくさん逝ってしまいました。どのような暴君の時代にでも、どれほど助け甲斐のない暗君の時代にでも、救国の英雄は出てくるものなのですよね。しかもそういう人材に限って忠誠心や愛国心がとても強く… もったいないことですが、少し救われるような気もします。


「長江落日賦」祥伝社文庫(2003年6月読了)★★★

【黒竜の城】…明の永楽帝の命を受けた亦失哈は、東北辺境の地に奴児干都指揮使司を開設すべく、黒竜江河口を目指して京師を出発。吹雪の中、廃城に辿り着いた一行は、城の住人が紫色の漢式の衣を着用していることに驚きます。紫は皇帝の色。宋の欽宗皇帝の末裔だというのですが…。
【天山の舞姫】…若き玄宗皇帝の時代。唐の安西都護府に所属する武人・李炎は、大食軍(サラセン軍)の動静を探るためにやってきた抜汗那の街で、白い肌に青い瞳、黄金色の豪奢な髪を持つ舞姫に心を奪われます。李炎はゼノビアというその舞姫に、いつの日か長安に連れて行く約束をすることに。
【長安妖月記】…唐の太宗皇帝の時代。皇帝が最近になって得体の知れない方士を重用するようになったことを心配した尉遅恭と薛仁貴という老若2人の猛将は、軍師の李靖の元へと相談に訪れます。その方士の名は杜昇洋、李淳風の「皇帝を害する者」に関する予言がまた命中していたのです。
【白日、斜めなり】…三国時代。魏では重臣の司馬懿が息子の司馬師・司馬昭と共にクーデターを起こして政敵・曹爽魏を妥当。曹一族及び党与の者をことごとく処刑します。魏の右将軍だった夏候覇は、司馬一族のクーデターに反感を抱き、挙兵するが失敗。結局蜀漢に亡命することに。
【長江落日賦】…南北朝時代。梁の武帝に仕える羊子鵬は、父の書簡を携えて令名高い学者・陶弘景の元へ。陶弘景は子鵬に短命の相を見てとります。しかしそれは何も為さずに虚しく死ぬのではなく、大事を成し遂げて逝くという相だったのです。

中国を舞台にした、タイプのそれぞれ異なる5つの短編が収められた短編集。
「黒竜の城」宋の皇帝の末裔と名乗る兄妹の謎もさることながら、最後に明かされる秘密に驚かされました。最初にはっきりと明記されているのに気が付いておきながら、そういう体質の人なのかとばかり…。そういうことだったのですね。 「天山の舞姫」物語自体は少々感傷的ですが、史実ではない出来事をあたかも史実であったかのように感じさせる、最後の文章がなんともいいですね。「長安妖月記」年老いてしまった李世民を見るのは寂しいものがあるのですが… どんなに優れた君主でも、いつかは年をとってしまうのですね。歴代の皇帝たちが不老長寿を求める気持ちも分かるような気がします。李淳風の予言というのが面白くて、「推拝図」が散逸してしまったというのがとても残念。「白日、斜めなり」三国志の諸葛孔明の死後の物語というのは、なかなか読む機会がないので、これはとても興味深い短編。これまで何十年と敵対して戦ってきた国に亡命し、祖国と戦うことになる無常感。同じ立場とはいえ、姜維とはまるで重みが違います。しかし姜維の見果てぬ夢にもまた哀しくなってしまうのです。「長江落日賦」ここでも往年の名君主が登場。「長安妖月記」もそうでしたが、この作品にもなんともいえない悲哀感が漂います。しかし短編にしては少々長すぎて読みづらかったかも。これなら最初から長編にしてしまった方が良かったような気がします。
この中では「黒竜の城」と「白日、斜めなり」が好きです。元々主役として生まれてきたような人物ではなく、しかし1つのドラマを持っている人物、という主人公の選び方に田中さんらしさが伺えるようですね。


「紅塵」祥伝社ノンノベル(2003年5月読了)★★★

南宋時代。金が宋を攻撃して皇族をことごとく連れ去り、唯一難を逃れた高宗が臨安府で即位。その時権力を一手に握っていた秦檜が死んだ所から物語は始まります。抗金の名将の1人である韓世忠の息子・子温は、高宗皇帝から密命を賜ります。それは高宗皇帝の兄にあたる欽宗皇帝の境遇を探り、可能であれば何か力添えをして欲しいというもの。父・韓世忠が死ぬまで欽宗皇帝の身を案じていたということもあり、母・梁紅玉も同行を申し出、子温は母と共に金国に潜入することに。しかし子温が欽宗皇帝に密かに会うことができ、脱出する計画を打ち明けたのもつかのま、欽宗皇帝は翌日、金国の皇帝・完顔亮によって処刑されてしまうことに。完顔亮は従兄である煕宗皇帝を弑逆して自らが帝王の地位についたという人物。頭脳は鋭敏で容姿もすぐれた28歳の青年ではあったものの、殺人と淫虐を好み、結果的に隋の煬帝と並び称されることになった悪名高い人物でした。

田中芳樹さんには「岳飛伝」という作品があり、岳飛はこの物語の主人公である子温の父・韓世忠と共に「抗金名将」として称えられています。抗金の名将とは、岳飛、韓世忠、劉リ、呉かい(王+介)、呉りん(燐の王偏)、宋沢の6人。この物語は、実際には韓世忠の息子の世代の物語なのですが、しかし作中には父・韓世忠の活躍なども多く描かれており、「岳飛伝」を別の面から描いた作品とも言えるのではないかと思います。中国の歴代の英雄の中で圧倒的に人気がある岳飛。確かに才能と学識に富み、圧倒的に強く、民衆思いだった岳飛に人気があるのは分かります。しかし私にとっては、自信家で鼻持ちならない人物というイメージもあるのです。その点、朴訥で無骨な武人である韓世忠の方が好ましいような…。しかも韓世忠は、梁紅玉という美女に惚れられているのですから。
この作品では、かつて女将軍と呼ばれ、三国時代の英雄・趙雲の輩かとも言われる梁紅玉がとても魅力的。前半生は妓女、しかも京口一の美女として名高かった女性。それがある時技楼に連れてこられた下級の士官・韓世忠に惚れこみ、自分で自分の借金を綺麗にして韓世忠の押しかけ女房となったといいます。作品の中で一番印象的だったエピソードは、高宗皇帝に対して反乱を起こした苗傅が、前線にいた韓世忠を仲間に引き入れようとした時のこと。人質として囚われそうになった彼女は、女だてらに鎧を着て、中に赤ん坊の子温を抱き、弓と矢筒をかけ、槍を手に韓家一番の駿馬で自宅を脱出します。その時、「阿亮、お前は韓世忠と梁紅玉の子なんだからね。泣くのではないよ。泣いたりしたら棄ててしまうからね。虎にでも育てておもらい」と言うのです。(阿亮とは子温の幼名)そして無事脱出した彼女は、韓世忠との再会を果たすことに。この物語に登場した時は既に58歳となっていますが、それでもまだまだ賢く活発な美女。男気があってかっこいいです。彼女を主人公にした物語があれば、ぜひ読んでみたいものですね。特に四太子宗弼との戦いの場面が読みたいです。
ちなみに「紅塵」とは、騒がしい世のことをいうのだそうです。黄砂の上に舞い上がる紅の塵。黄河の流れる土地を舞台に活躍した梁紅玉の姿が思い浮かびますね。


「チャイナ・イリュージョン」中公文庫(2003年5月読了)★★★★

第1部…田中芳樹 中国歴史小説の世界
 「宛城の少女」「匹夫の勇」「騎豹女侠」「茶王一代記」「張訓出世譚」「潮音」「風梢将軍」
第2部… 田中芳樹 中国史の魅力を語る
 「中国ロマンの世界」(井上祐美子)
 「知られざる英傑の物語」(鄭問)
 「本格武侠小説入門」(土屋文子)
 「物語をおいしくするレシピ」(岡崎由美)
 「岳飛の魅力 中国史の魔力」(森福都)

第1部の短編は、アンソロジーの「異色中国短篇傑作大全」や田中芳樹さんの短編集「黒竜潭異聞」にてほとんど既読。今回初めて読んだのは「張訓出世譚」「潮音」のみでした。どちらも「五代群雄伝」という副題が付いています。「張訓出世譚」は、呉の国を建てた楊行密の下で戦った張訓の物語。不思議な奥方は、結局何者だったのでしょう。張訓の何に惹かれていたのかが知りたかったです。「潮音」10代で呉越王として即位した銭弘佐は異母弟と共に悪質な重臣を取り除き、国を盛り立てていきます。この少年たちがなんとも愛しくなってしまいますね。それにしても、日本では平安京で藤原一族が隆盛を誇っていた時代。呉越から国交を求めていたとは知りませんでした。
第2部は対談。作家や漫画家、中国小説の翻訳家などを招いた話はそれぞれに面白いのですが、この中では井上祐美子さんとの対談が一番面白かったです。同じ中国ものの作品を書く作家同士の苦労話なども、作品を読んでいるだけにとても分かりやすいですし、興味深いものがありました。森福都さんとの対談は「岳飛伝」の話ばかりなのですが、これから同時代の「紅塵」を読むところなので、丁度タイミングが良かったようです。


「黒竜潭異聞」実業之日本社(2003年2月読了)★★★★

【宛城の少女】…五胡十六国時代の西晋。洛陽の宛城は、杜曽の軍に囲まれて絶体絶命の状態。将軍である父・荀ッが襄城に援軍を求めると知った13歳の少女・灌は、自分が襄城に行くと言い出します。
【徽音殿の井戸】…南北朝時代の宋。生まれて以来皇太子の地位にある劉劭は、その地位に飽きて父王を殺することを考え始めます。しかし父王もまた、平時の名王であることに飽きていたのです。
【蕭家の兄弟】…南北朝時代の梁。侯景の大乱によって武帝が殺され、7男の湘東王・蕭繹は8男の武陵王・蕭紀に父の仇を討とうと呼びかけます。しかし武陵王は赴任先の成都城にて即位してしまい…。
【匹夫の勇】…乱世の梁に生まれ、侯景の乱で梁が滅びると陳へ、そして陳が滅ぼされる、代わりに政権を握った隋へ。常に戦い続ける蕭摩訶は、遂に煬帝に対する反乱軍の将として処刑されることに。
【猫鬼】…616年、隋の煬帝の時代。26歳の沈光は、技楼の帰りに刀傷のある猫を拾います。見知らぬ男たちに取り囲まれながらも家に戻り、猫の手当てをしていると、見知らぬ白髯の老人が現れます。
【寒泉亭の殺人】…玄宗皇帝の時代。豪商・鄭従徳の邸内にある寒泉亭で、嫌われ者の汪群が殺されます。この建物には、屋根に引かれた水が四方の軒から流れ落ちるという趣向が凝らされていました。
【黒道兇日の女】…801年、徳宗皇帝の時代。黄河下流を騎行していた元直は、聶隠という少女を助けることに。聶隠は4年間尼の元で仙術や武術を修行し、家に帰るところ。少女は刺客だったのです。
【騎豹女侠】…憲宗皇帝の時代、劉闢の乱が起きた頃。劉闢の部下の1人陳昭は、大蛇が兎を飲み込むように、劉闢が客人を飲み込んでしまうのを目撃し、慌てて逃げ出すことに。
【風梢将軍】…邪悪な妖怪に狙われているから助けてほしいと、黄文攸に呼び出された李光遠。黄文攸は、臨安府郊外の桐源山に薬草や薬材を採集しに行った時のできことを語ります。
【阿羅壬の鏡】…古い墓から鏡を掘り出したという阿羅壬。それは直径が一丈近くある秦鏡で、なんと人の身体の骨格が映る鏡でした。この鏡を利用して、阿羅壬医者のまねごとを始めます。
【黒竜潭異聞】…黒竜潭と呼ばれる湖のほとりで、劉瑾は1人の不思議な老人に出会います。老人に富貴を約束してもらった劉瑾は、老人に言われるがまま宦官となり、宮廷に入り込みます。

西晋から明まで、4世紀から16世紀までの時代を描いた11の短編集。「チャイナ・ドリーム」「チャイナ・イリュージョン」などのアンソロジーからの転載作品がほとんどです。
「宛城の少女」荀灌という少女がとても魅力的です。誇り高く勇気があり、女にしておくのが勿体ないと父親が思うのも頷けます。こんな彼女がその後どのような人生を送ったのか…。意外と平凡な幸せを掴んだのかもしれないですね。「徽音殿の井戸」アンソロジー「チャイナ・ストーリーズ 黄土の虹」にて既読。「蕭家の兄弟」兄弟喧嘩のあまり、他に何も見えなくなる状態も分かりますが…。そして勝利が目的になってしまい、その後のことを何も考えなくなってしまうというのも分かりますが、結局は皇帝の器ではなかったということなのですね。乱世と平時では、皇帝に求められるものも自ずと変わるはず。「匹夫の勇」56年もの歳月を戦い続けた蕭摩訶。なかなか主に恵まれず、結局戦場だけの男として終わってしまうのですが、しかし彼の誠実さを見る人はきちんと見ているのですね。「猫鬼」実在の人物が登場していますが、伝奇小説と言える作品。これは面白いですね。それに絵的にも美しいです。やはり妖異には猫が似合いますね。やはりただ歴史物よりも、一捻りしてある歴史物の方が面白いです。「寒泉亭の殺人」この短編集の中では珍しいミステリ。謎は単純ですが、それが却って味を出しているようです。学生時代に発表された作品とのこと。「黒道兇日の女」海音寺潮五郎氏の「中国妖艶伝」に収められている「蘭陵の夜叉姫」と出所が同じようですね。ということはあちらも聶隠娘だったのでしょうか。2度の出会いは切なく甘く幻想的。「騎豹女侠」題名も女侠ですが、確かにこちらの聶隠の方が女侠という感じです。物語自体もまるで時代活劇のよう。「風梢将軍」こういうのは、志怪小説というのだそうです。最後の仕掛けがとても面白かった作品。「阿羅壬の鏡」こちらも志怪小説。この物語自体も面白いですし、この後のことを色々と想像してしまいます。「黒竜潭異聞」やはり希代の悪党になるにも、それなりの器量と度胸が必要ということでしょうか。後世への繋げ方がいいですね。
1冊の本に11の短編ということで1話ごとのページ数が少なく、全体的にあっさりとした印象。この長さにぴたっとハマっている作品もありますが、物によっては少々窮屈な印象も。長編の素材を短編に押し込むと、やはり史実の羅列のようになってしまいますね。
この中で私が特に好きなのは、「猫鬼」「黒道兇日の女」「風梢将軍」。やはり伝奇物の方が好きなようです。


「ラインの虜囚」講談社ミステリーランド(2005年10月読了)★★★★★

1803年11月。父であるモーリス・ド・ブリクールの訃報を持ってカナダからフランスに渡った16歳のコリンヌは、祖父であるギイ・ド・ブリクール伯爵に会いに行きます。しかしギイ・ド・ブリクールは、大学を中退して勝手にカナダに出奔し、原住民と結婚したモーリスのことを、既に息子とは認めていませんでした。そしてコリンヌに、パリの東北東に百里、ライン河の東岸に立っている「双角獣の塔」と呼ばれる十字軍時代の古い塔に幽閉されている人物の正体を調べれば、孫娘として認めると言い出します。実は9年前にセント・ヘレナ島で亡くなったというナポレオン・ボナパルトが実はまだ生きていて、その塔に幽閉されているという噂があったのです。期限は12月25日、降誕祭当日の正午。コリンヌは早速行動を開始し、売り出し中の若手作家・アレクサンドル・デュマと、ジャン・ラフィット、モントラシェと名乗る男と知り合うことに。

ミステリーランドの7回目の配本。同時配本は、麻耶雄嵩氏の「神様ゲーム」。
「コリンヌは奇妙な命令を受けパリで勇敢な仲間をあつめる」「コリンヌは東へと馬を走らせ昼も夜も危険な旅をつづける」などという目次もどこか懐かしさがあって、講談のようで楽しいですし、作品自体も「紅はこべ」や「三銃士」を思い起こさせる冒険活劇。子供のためのレーベルであるミステリーランドに相応しい、良質のエンターテイメント作品だと思います。あとがきには、なぜ田中芳樹さんがこういう物語を書こうと思ったのかも書かれていて、その気持ちにもとても納得。
ナポレオンが実は生きていた?という大きな謎を始め、爵位にも財産にも興味のないコリンヌが、なぜ伯爵の言う通りにするのか、そしてなぜ伯爵がそのようなことをコリンヌにやらせるのか、その他にも謎はあるのですが、それらが最後には全てきちんと解決されて、とても気持ち良い作品でした。様々な事柄がきちんと歴史的な事実に即して書かれているのも嬉しいですし、コリンヌの仲間になるアレクサンドル・デュマや海賊のジャン・ラフィットという面々も実在の人物。彼らのその後についてもきっちりと書かれているのが嬉しいですね。こういった作品に子供時代に触れることによって世界史に興味を持つ子供もいるでしょうし、後々学校の授業などでこの作品に登場する人物や出来事に再会して、懐かしさと共に思い出す子供も多そうです。

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