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このページは、貫井徳郎さんの本の感想のページです。

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「天使の屍」角川文庫(2001年5月読了)★★★
コンビニに行くと言って出て行った中2の息子が、近所のマンションの屋上から飛び降り自殺。死の直前にいじめを苦に自殺した中学生のニュースを見て、「苛められて自殺する奴なんて、馬鹿だよ。」と強い語調で言っていたの優馬の死は本当に自殺なのか…。遺体からはLSDが検出されます。学校でも家でも「大人びて思慮深い」と思われていた優馬がなぜ自殺したのか、なぜLSDをやるようになったのかを知るため、父親の青木は息子が学校で仲良くしていた友達たちに聞いて回ります。しかし数日後、その友人グループの別の1人が自殺するのです。そしてまた1人。

優馬の担任である光岡が「子供には子供の論理があります。」と言うのですが、これがこの作品の全てですね。どこに行っても何を聞こうとしても、青木はこの「子供の論理」に阻まれてしまいます。この論理は情にも威圧にも屈しない、かなり手ごわい存在。あからさまな拒否や無視はされなくても、彼らは決して本心は明かそうとしないのです。最後まで読んでみると、この一連の騒動の原因はなるほど納得だし、青木にも理解できたと思うのですが、でもこの「子供の論理」ならではの真相は…。親としてはやりきれないでしょうね。(中学生を「子供たち」というのも何か違うような気がしますが)
この作品は私が読んだ貫井さんの2冊目の作品。「慟哭」ほどの痛みはなかったので安心しました。「慟哭」は真に迫りすぎて、本当に痛かったので…。しかし非常に上手いのは分かるのですが、この方の作品の持つ雰囲気というのは、やはり苦手かもしれません。痛いです。

「被害者は誰?」講談社ノベルス(2003年10月読了)★★★★★
【被害者は誰?】…自宅の庭から白骨死体が見つかった男は、自分の犯行であることは認めるものの、誰の死体なのか一切話そうとせず…。しかしワープロの中には3人の人間を憎んでいたという手記が。
【目撃者は誰?】…大学時代の片想いの女性と社宅で一緒になり、不倫関係となった男。しかし何者かがその不倫に気付き、口止め料2万円という脅迫状が2人の元に送られてくることに。
【探偵は誰?】…吉祥院先輩の新作は、先輩が学生時代に遭遇したという事件。桂島はそれを読んで、どの人物が先輩なのかを当てることに。4人の男性モデルが訪れた社長の別荘で起きた殺人事件。
【名探偵は誰?】…朝起きてみると自室に見知らぬ女性の死体があったという通報。通報をした丸山吉輝は知らない女性だと言い張るのですが、彼女の行動半径で丸山は何度も目撃されていました。

185cmを超える身長にモデル並のスタイル、その上容姿端麗にして頭脳明晰、しかも大学を卒業してすぐ小説家としてデビューし、現在は超人気小説家という吉祥院慶彦先輩。そして吉祥院の大学の後輩で、「ぼく」こと警視庁捜査一課の刑事・桂島のデコボココンビの連作短編集。桂島が持ち込んだ「面白い事件」の話や、吉祥院先輩の書いたミステリを元に、推理が繰り広げられていきます。
まずこの吉祥院と桂島のキャラクターが楽しくていいですね。「吉祥院慶彦」という名前はどうやらペンネームのようですが、この華麗すぎて胡散臭い(笑)名前がこの先輩にぴったり。しかもこの美形ぶりでも、部屋は常に相当汚く、桂島がいつも掃除させられるという、まるで漫画のような設定。これで桂島をあからさまに馬鹿にする言葉が少し減れば言うことなしなのですが。登場する謎自体も凝っていて面白いですね。分かってみれば… という謎なのですが、あっさり騙されてしまいました。
貫井さんも、こういった軽くてテンポの良い作品を書かれるのですね。いつもの重厚な作品は、上手すぎ辛くなってしまうことが多いので、この作品の楽しさは読んでいてほっとしました。ぜひとも続けて欲しいシリーズです。
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