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このページは、小林泰三さんの本の感想のページです。

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「密室・殺人」角川ホラー文庫(2002年2月読了)★★★
四里川探偵事務所に谷丸警部の紹介で訪ねてきた仁科順子。彼女の依頼は、息子・達彦にかかった殺人の容疑を晴らして欲しいということ。仁科達彦の妻・浬奈が亜細山中にある別荘で死亡、達彦も容疑者の1人だというのです。達彦の他に一緒にいたのは友人の新藤礼都(れつ)と弁護士である西条源治。まず助手の四ッ谷礼子が、所長の代わりに現場である仁科家の別荘へと向かいます。ここの事務所では、所長の四里川陣(よりかわじん)が「僕みたいな職業についてる者にとって、顔が知られているってことは致命的なんだよ」と表に出たがらず、客の応対を始めとする主だった仕事はすべて礼子の役割となっているのです。現地についた礼子は、早速事件を担当する谷丸警部と合流、事件の説明を聞くのですが、それは一風変わった不可思議な状況でした。被害者である仁科浬奈が入った部屋には内側から鍵がかかっていたのですが、しかし浬奈の死体は外の河原にあったというのです。その状態は、まさに「密室・殺人」。 

この作品が収められているのは角川ホラー文庫。読む前はホラー系だからと読むのを躊躇っていたのですが、ちょっぴりホラーの雰囲気はあるものの、実際は全く怖くなかったです。それどころか、とても楽しい小説ですね。ホラーを期待している人には、かなり肩透かしな作品かも。四里川陣という探偵の言動も、絵に描いたような「名探偵」っぷりも、四ッ谷礼子の軽快な語り口も、谷丸警部の存在も、個性的でとても楽しいです。
仁科順子の依頼内容は「仁科達彦の無実を証明する」こと。この依頼では仁科達彦が犯人だった場合が考慮されていないので、結局四里川と礼子は「仁科達彦が無実なら無実であることを証明し、無実でなくても無実であることを証明する」と理屈っぽい解釈することになります。これもなかなか面白い点。それにしても「密室・殺人」というこの題名がこんな意味だったとは!「密室・殺人」と表記される経緯までストーリーに織り込んであって、思わず笑ってしまいました。この状況はなかなか考えてありますね。でもこの作品の真のトリックは…。驚きました。しかしこんなのアリなんでしょうか?
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