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このページは、都筑道夫さんの本の感想のページです。

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「キリオン・スレイの敗北と逆襲」光文社(2001年11月読了)★★★★★お気に入り
青山富雄は、旅行会社主催のツアーの解説の仕事でNYマンハッタンを観光中、偶然道端でTシャツを売っていたキリオン・スレイに再会します。その日の夜、富雄は早速ツアーのメンバーたちを連れて、キリオンが現在住んでいるグリニチ・ヴィレッジのステュディオへ。その時、メンバーの1人・岡倉亜絵香が、成田空港で友達に貰ったキャンディーの中に入っていたという手紙をキリオンたちに見せます。そこに書いてあったのは、暗号のような謎の文章。そしてその手紙を見立てとした連続殺人事件が起こり…。キリオンは岡倉家に探偵として雇われるという形で、再び日本を訪れます。

キリオン・スレイのシリーズの長編。キリオンシリーズは、都筑さんのシリーズ物の中でも、物部太郎シリーズと並んで私が1番好きなシリーズ。フラフラしてて、女の子に迫られるとイヤとは言えないキリオンが、なんとも愛敬があるキャラクターで好きなのです。今までの短編では、キリオンに直接関係のない人々の事件を推理してきたのですが、今回はキリオン自身が事件の渦中に巻き込まれてしまったためか、これまでのような快刀乱麻の推理ぶりは見ることができません。そういう意味では、シリーズの中でも珍しい存在の作品と言えるのかもしれません。
このキリオン・スレイシリーズの特徴の1つが、ふんだんな言葉遊びです。キリオンの周囲には個性的で楽しい人物が揃っており、それらの人々のやりとりを読んでいるだけでも面白いのです。その中でもキリオンの使うアヤシゲな間違いだらけの日本語は、その間違え方にもとても味があります。
  キリオン「ひとりで出来るのは、そういうワカヤマ作戦だ」
  富雄 「なんだい、そりゃあ」
  キリオン「ミカン作戦だったかな」
  富雄 「わかったよ。キシュウ作戦だろう」
こういった会話がいたる所にあり、本当に飽きさせません。引き出しがとても多い都筑さんならではの余裕の技といったところでしょうか。日本語に本当に堪能でないと、なかなかできないことだと思います。
都筑さんの作品は短編が圧倒的に多いので、この作品のような長編は珍しいのですが、長編でも都筑さんの凄さは十分分かります。計算しつくされたプロット。やはり職人芸ですね。
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