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このページは、竹本健治さんの本の感想のページです。

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「闇の中の赤い馬」講談社ミステリーランド(2004年2月読了)★★★★
明治時代から続く、フランス系のカトリックの学校・聖ミレイユ学園。室井環が所属しているのは、いかにも人を喰った名称にも関わらず、その実態は「ただ浮世離れしたことをダラダラくっちゃべっているだけ」という汎虚学研究会。部長を務める室井の他には、タジオこと但馬睦夫、マサムネこと寺堂院正宗、フクスケこと福田悠里の3人。ある日の夕方、校庭を歩いていたウォーレン神父が突然の落雷に撃たれて死亡します。突然の出来事に、重苦しい雰囲気に包まれる学園。そして夜。室井は寮の部屋でふと目が覚めます。時計を見ると夜中の3時。寝苦しさから室井が窓を開けると、なんと向いの棟の地下室には電気がついていました。今はほとんど使われていない地下室で、そんな夜遅くに一体何が行われているのか。フクスケはその話に興味を持ち、自ら女ホームズを名乗り、室井をワトソン役に調べ始めることに。

ミステリーランド第3回配本。同時配本は、 高田崇史氏「鬼神伝-鬼の巻」と太田忠司氏「黄金蝶ひとり」。
落雷による神父の死、女子生徒はもちろん、男子生徒にも人気があるという花岡翼の存在など、意味ありげないくつかのモチーフによって、読みながら他の方向へと意識を逸らされそうになるのですが、それが実は違う意味合いにおいて重要な伏線となっているのが上手いですね。作中で起きた出来事は確かに謎ではあるのですが、実際の謎の姿以上に、上手く演出されているという印象。しかもその謎の存在に負けないだけの真相。なかなか凄いですね。あとがき代わりの「わたしが子どもだったころ」によると、竹本さんは、文章も内容も特に子供向けということを意識しないで書かれたとのこと。ラストの扱いなど、この作品が子供向けに相応しい作品かどうかという議論も出てきそうではありますが、無理に子供を意識していないという自然さが、この作品の一番の魅力であり、そこが結果的に、子供にもアピールするような気がします。余計な教訓や説教臭さがまるでなかったというのもとても良かったです。
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