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このページは、牧野修さんの本の感想のページです。

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「呪禁捜査官-訓練生ギア」祥伝社文庫(2004年1月読了)★★★★

35年前、賭け麻雀で負けた借金を踏み倒した男が呪い殺されるという事件が起き、それがきっかけで、非合法呪法の制定に関する法案が可決され、呪法を専門に扱う呪禁局が設立されます。ギアこと葉車創作は、幼い頃に優秀な呪禁官だった父親を殉職で亡くし、自分もまた呪禁官になるべく県立第三呪禁官養成学校で学ぶ少年。しかしなんとか2年に進級したものの、2年生になると授業も実習もますます激しくなり、ギアも、ギアのルームメイトであるソーメーこと針山宗明、吉田哲也、辻井貢もまた、授業についていくのがやっとの状態。しかも1年上級の望月とその取り巻きがギアを目の敵にして、何かとちょっかいを出してくるのです。一方、学校の外では、不死者(ノスフェラトウ)とも噂される魔術結社<月の花嫁>の首領・蓮見、反オカルト派の科学者を募った<ガリレオ>の面々が、それぞれに不穏な動きを見せていました。

オカルトと科学の立場が逆転し、オカルトが科学を迫害する世界を舞台にした伝奇小説。強大な力を持つ呪術師と、過激な科学者集団の動きに対して、呪禁官の卵、しかし現在は落ちこぼれている4人組が対抗します。古今東西の呪術が登場し、妖しい雰囲気は満点。かなり濃い空気を作り出していますね。特にガブリエルの異様さには圧倒されました。ただ、警察官とは違って銃器の携帯を認められていない呪禁官なので、その訓練風景にはまるで軍隊の演習のような体力勝負の部分が多いのです。これがもっと呪術寄りになれば、もっと面白くなりそう。それにガリレオが当初思っていたほど活躍しなかったのが少々残念でした。しかし神の軍勢を指揮できるという三神器の存在も面白く、そのオカルティックな雰囲気の割に、4人の少年たちが爽やかに活躍するというのも良かったです。
この1冊だけでは正直物足りない部分もあったのですが、この設定自体はとても好き。この作品が1作目となってシリーズ化されているようですね。続きもぜひ読みたいです。


「ルーキー-呪禁局特別捜査官」祥伝社ノンノベル(2004年2月読了)★★★★★お気に入り

3年ほど前から起きている連続殺人事件。傷口に残った呪術的痕跡の解析をした雨宮リリルによると、それらは全て黄金の夜明け系エノク魔術によって造られた鳥のような人工精霊によるもの。雨宮の同一犯説を元に、研修生のギアこと葉車創作は、元教官の龍頭と調査を開始、殺しを引き受けているという魔術師・大迫の存在を突き止めます。しかしその囮捜査の中で龍頭が殺され、同じ日に大迫までもが殺されてしまうのです。事件の捜査はそのまま停滞。しかしその時ギアは、サイコムウと名乗る者に出会っていました。「魔術でこの世を破壊しつくすために生まれてきた」と言うサイコムウの最終目的は。

「呪禁捜査官」の続編。前作の後でギアは無事に養成学校を卒業、研修期間を経て、現在は新人呪禁捜査官として活動しています。しかし前作に登場した3人の友人のうち、呪禁局に残っているのは辻井貢のみ。それも呪禁捜査官ではなく、呪具開発課の課長補佐というポジションです。ソーメーこと針山宗明は実家のブティックを継ぎ、吉田哲也もまた自分の道を歩んでいるようですね。
前作は楽しみながらも、正直少々物足りない面もあったのですが、今回は2冊目ということもあるのか、乗りに乗ってるという印象。凝った世界設定に、オカルトモチーフが盛り沢山。牧野さんの、戦隊物に対する愛にも微笑ましくなってしまいますし、かつての仲間とのやりとりも楽しかったです。前作では科学対オカルトという図式がはっきりしていて、力もまだ均衡状態だったのですが、オカルトの勢いが一段と増したようで、科学は最早風前の灯状態。 しかしオカルト色の強い伝奇物でありながら、前作同様、ギアの成長物語という側面も楽しめました。濃い雰囲気ながらも、なかなか爽やかな読後感。ただ、惜しいと思うのは彼女のこと。妙なキャラクターですが、龍頭麗香との掛け合いがなかなか楽しかったのです。復活する予定があれば嬉しいのですが。

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