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このページは、茅田砂胡さんの本の感想のページです。

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「伝説の終焉-デルフィニア戦記16」中央公論社C★NOVELS(2000年3月読了)★★★★★お気に入り
シェラがスケニアを探りに向かった隙を狙ったかのように、タンガが王妃を罠にかけます。騎士団の命と引き換えに虜囚となり、騎士団の解放と引き換えに薬を飲むことを了承する王妃。その裏には勿論ファロットの手が。そしてシェラとヴァンツァーの死闘。一方コーラル城にはとうとうリィの相棒が登場します。デルフィニア戦記第16巻。

「遥かなる星(とき)の流れに-」上下 中央公論社C★NOVELS(2000年3月読了)★★★★★お気に入り
トンガのゾラタスはリィを王子ナジェックと結婚させることを発表。デルフィニアに王妃かタウかを選ばせようとするのですが…。ウォルは王位を捨てて、シェラとルウと共にリィを救いにボナリスへ向かいます。ナジェックの魔手がせまるのですが、リィの意識と体はなかなか元に戻らず…。リィを取り戻したウォルは、もう戦など2度と起らないことを願ってタンガを、そしてパラストを叩きます。そしてシェラはファロット一族との決着をつけることに。物語は大団円へと向かいます。 デルフィニア戦記第17・18巻。

「デルフィニア戦記」全体を通しての感想
基本的なストーリーは「王座奪還&その後」なのですが、そんな簡単には伝えきれない壮大な物語が息をつかせず展開していきます。話のつくり自体もしっかりしていて実に読ませてくれますし、思わぬ所で笑わせてもくれます。1人1人のキャラクターもとても魅力的。出てくる人全員が強烈な個性を持っていて、そのやりとりがまた楽しいのです。沖麻実也さんの挿絵も、それぞれの個性を良く捉えていてイメージをふくらませてくれます。もう本当にオススメです!「4巻までとりあえず読んでみて」と言われたのですが、まさに同じ言葉を読んでない方に贈りましょう。きっと途中では止められなくなると思います。
それにしても「ファロットの誘惑」でのリィの王妃さまぶりと言ったら!惚れてしまいそう。(笑)
でも私は「闘うお花さん」が一番好き。ぜひいつか金銀黒ねずみにもう一度会いたいものです。

「スカーレット・ウィザード」1 中央公論新社C★NOVELS(2001年1月読了)★★★★★
宇宙の海賊ケリーが初対面の女性からされた仕事の依頼とは、「1年だけで良いから、自分と契約結婚をして欲しい」というものでした。実は彼女・ジャスミンは、宇宙一の大財閥・クーア財閥の新しい総帥だったのです。父親の腹心だった7人の重役がクーア財閥の権力を虎視眈々と狙っているということもあり、遺言に大人しく従って形だけの結婚しようと決心した彼女が欲しかったのは、財閥の権力や金に目がくらんだりせず、ほどほどに頭が良く、殺しても簡単には死なないような人物。彼女から見て、キング・オブ・パイレーツの異名を持つケリーはその役にぴったりだったのです。結婚を渋るケリーに対し、ジャスミンがもちかけた賭けとは、10時間以内に宇宙でケリーをつかまえてみせるというものでした。

「デルフィニア戦記」とうって変わって宇宙を舞台にしたSFファンタジーです。でもさすが茅田さんですね。魅力たっぷりのキャラクターや会話、ストーリー展開の面白さとテンポの良さは健在です。相変わらず笑える部分もあって大満足。脇役に関しては「デルフィニア戦記」の方が美味しいのですが、ケリーとジャスミンのカップルもとてもカッコいいです。それにケリーの相棒であるダイアナも良い味を出してます。SFとしての科学的考証に関してはあまり気にしない方が…。
そしてここで気になるのは、ちらっと登場した「ラー一族」。これはもしかしてデルフィニア戦記との接点となり得るのでしょうか?もしかしてキーワードはゲート?!これからの展開が楽しみです。

「スカーレット・ウィザード」2 中央公論新社C★NOVELS(2001年1月読了)★★★★★
ケリーとジャスミンが結婚して3ヶ月。重役たちの動きはますます怪しくなっていました。その重役の中でもジャスミンがまずターゲットとして定めたのは、クーア財閥の警備保安部門を担当するアロウェイ・ハワード。ケリーとジャスミンの秘書・プリスティンは現場の視察に訪れます。そして視察を終えて帰った後、惑星開発部門の輸送船・バーミリオンが行方不明という連絡が。ケリーたちはすぐに現地へとと飛びます。

1巻では押しまくられてジャスミンに迫力負けしていたケリーが、ようやく名誉挽回です。行方不明の輸送船を探しに行く場面では、「やる時はやるぞ」的なかっこよさ。やっぱりいざという時に頼りになる人はいいですねえ。でも 読んでいると、ケリーとジャスミンってとても契約結婚には思えないほど良い雰囲気に感じるんですけど、傍の人から見ても愛情がないと分かる程度なんでしょうか。その点が少々不思議です。

「レディ・ガンナーの冒険」角川スニーカー文庫(2002年2月読了)★★★★
19世紀半ば、西大陸の強国バナディス。今年14歳になるキャサリンは、バナディスでも1、2を争う名門・ウィンスロウ家の令嬢。ある日彼女の父親・エリオット卿の元に、旧友である隣国ヴィルドナのマクシミリアン公爵からの手紙が届きます。キャサリンに、1日でいいから公爵の子息・フランツの婚約者となって欲しいというのです。ヴィルドナの成り上がりの貴族・ルビンスタイン男爵の令嬢アンジェラが、公爵という由緒正しい地位を得るためにフランツとの結婚を希望し、マクシミリアン公爵はキャサリンとの婚約を口実に断ろうとして、結局キャサリンをフランツの婚約者として春の女神の祭典でお披露目することになってしまったというのです。アンジェラは、大変な美女ながらも男性関係の噂の絶えない毒婦的女性。マクシミリアン家としては、現在財政的に相当に苦しく、ルビンスタイン家の財産は大きな魅力ではあるものの、アンジェラのような女性を嫁に迎えるわけないはいかず…。キャサリンは幼馴染のフランツの窮地を救うためにメイドのニーナと共にヴィルドナへ向かうことに。しかし港についてみるとヴィルドナ行きの船はすべて欠航。結局4人の用心棒・ケイティ、ベラフォード、ダムー、ヴィンセントを雇って、デューダ半島を馬車で横断することになります。

賢く行動的、しかし何をしでかすかは分からないというお嬢さま・キャサリン。さすが茅田さんの生み出した主人公らしく、1本筋が通った考え方をしているのはとても気持ちのよいものです。しかも一応お嬢さまのお転婆レベルに抑えられているので、読んでいる方も安心できます。
そしてこの作品の一番の特徴は、「アナザーレイス」という異人種の設定。「猫の人」や「鳥の人」、「蛇の人」などがどんどん登場します。この「アナザーレイス」というのは人間が「変身する人々」という意味でつけた総称。その名の通り、普通の人間かと思ったら突然動物に変身してしまったり、優に20mある大蛇が人間に変身したら貴公子然とした美青年になってしまったりとかなり楽しい設定。そして人間との混血は「インシード」、異種族同士の混血は「ブリジアン」。この設定が頭に入るまでは、読んでいてかなり混乱しましたが…。
そして物語方も二転三転。茅田さんの作品となると、どうしても「デルフィニア戦記」や「スカーレット・ウィザード」と比べてしまいますし、そうなるとやはり強烈なインパクトには欠けると感じてしまうのですが、でもこれはこれでとても楽しかったです。こういう異人種が存在する世界というのは、もしかするとまた他の作品との繋がりが出てくるのでしょうか?これが惑星ボンジュイだったら…など、色々と今後の展開に期待してしまいました。

「スカーレット・ウィザード」3 中央公論新社C★NOVELS(2001年1月読了)★★★★★
マタニティ・ブルーの間はあまり一緒にいないほうが良いということで、ジャスミンは自宅に、ケリーは本社の会長室にと別れて暮らすことになります。そして総帥の座も一時的にケリーへ。しかしそのケリーの行く先々で車は暴走し、頭上からは落下物が、喧嘩にはまきこまれるという波乱ぶり。そこに、クーア財閥の駅開発部門の重役・スタニスラス・ワイリーから内密の会談の申し込みが。行ってみると情報回線部門の重役・ジョン・ブライアンも同席、早速ケリーの抱きこみ工作が行われます。そして後半、ジャスミンの出産に間に合うようにと出かけたケリーが、宇宙海賊に誘拐されるという事件がおこります。

前半は抱き込み工作とその後という感じで、比較的(?)おだやかに進むのですが、後半は気が付いたら怒涛のような事件の波です。やっぱりこの巻のハイライトはケリーの誘拐ですね。ここでケリーの昔の知り合いの天才アレンジャー・クライストが登場してダイアナと対決する場面も見所。巻末には「十一番目のダイアナ」というダイアナだけの短編もおさめられています。本編でもジャスミンと会話するゼウスがなかなか可愛かったり、フェリクスが意地っ張りだったりと、人間以外もかなり楽しませてくれます。
次回にひっぱったお楽しみは、ケリーがジャスミンの出産直前に一体何を買いに行ったのかということ。これはかなり興味をそそりますね。あとは昔のケリーに関することや相変わらずのラー一族も、これからどう展開していくのか興味深いところです。

「スカーレット・ウィザード」4 中央公論新社C★NOVELS(2001年1月読了)★★★★★
無事に出産を終えたジャスミンは、自分の戦闘機・クインビーで誘拐されたケリーを救出に向かいます。そして続いてダイアナも。クインビーの威力とダイアナの凄まじいパワーに、海賊は一転して防戦一方。絶体絶命かと思われたケリーも海賊の船から脱出に成功します。そして本気で怒ったケリーを止められる者は誰もおらず…。しかし誘拐騒ぎが一段落したと思った途端に、今度は内部からの裏切り者(?)が。

ケリーのパワー炸裂です。怒ったジャスミンも怖いのですが、普段何があっても動じないし気にしないケリーが一旦本気で怒ると本当に怖い。そしてケリーの過去も少しずつ明らかになり、この展開には本当に目が離せなくなってきました。伏線が伏線を呼んで、今後の展開もかなり大変そうです。特にあの好奇心の強い彼が、最終的に暴走しそうで心配。そんなことになったら、ケリーが黙って見逃すわけもないですし、一体どうなることやら…。全てを知ることばかりが能ではないと思うのですが、こういうタイプの人は思い込んだらまっしぐらですから、やはり今後また一波乱あるということなんでしょう。
それにしても金と権力に目の眩んだ人間はとんでもないことをしでかすものですね。いや、そういうのに目が眩むという時点で、すでに賢い人とは到底言えないので仕方ないのかもしれませんが…。

「スカーレット・ウィザード」5 中央公論新社C★NOVELS(2001年4月読了)★★★★★
ジャスミンとケリーは攫われたダニエルを救い出すために動き出します。しかしダニエルがいるのは、クーア財閥の最先端の技術を駆使した巨大な要塞「ガーディアン」の奥深く。ダイアンやクライストの天才的なアレンジ技術を持ってしても、ガーディアンの百を超える人工知能を陥落させるのは至難の業と分かります。しかしジャスミンとケリーは、そんなことでは諦めません。持てる限りの機動力や人脈をフルに活用したとてつもない計画をたててしまいます。

「スカーレット・ウィザード」最終章です。「デルフィニア戦記」のことを考えると、到底5巻では話がまとまるとは思っていなかったのですが、なんと本当に終わってしまいました。でもその分ぎっしりと詰まっていて、とても読み応えがある一冊。ケリーとジャスミンのダニエルを救出計画は、ハラハラドキドキというよりは、とても痛快。こんなことしてしまうなんて、やっぱりこの二人は只者ではありませんね。そしてケリーやジャスミンの今まではっきりとしていなかった過去が明かされ、話は思いもかけぬ結末へ…。でもこれもまた一つのハッピーエンドと言えるのではないでしょうか。またいつかこの二人(+ダニエル)に会える日が来るといいですね。その時はきっとまた新たな展開を見せてくれることでしょう。

「桐原家の人々」4 中央公論新社C★NOVELS(2002年4月読了)★★★★★お気に入り
桐原零が小学校を卒業し、そのお祝いにと家族で港町へ遊びに行った帰り道。車の後ろのシートでうとうとしていた零は、前の座席で交わされている両親の会話に驚きます。天涯孤独で田舎も親戚もないと聞かされていた両親には、実は結婚にまつわる様々な事情があったのです。しかし零が話を聞き返そうとした丁度その時、真正面からは眩しいヘッドライトが。車はトラックに激突され、両親は即死。零は奇跡的に助かったものの、ショックで一時的に口が利けない状態になってしまいます。そんな零を迎えに来たのは、父親の兄にあたる桐原広美でした。零は広美の家に引き取られて家族として生活することに。桐原家のシリーズの番外編です。

桐原家の長男、今まで脇役だった零の物語。実はこの桐原家で私が一番気に入っていたのが零なので、こうして再会できるのがとても嬉しいです。しかしいつも落ち着いていて、何事にも動じないように見える零ですが、やはり波乱万丈な人生を送っていたのですね。今まで過去形だった話が現在形になり、しかも視点が零に移ることで、何というか静かな迫力があります。メインテーマは、身近な人の「死」とその後。「死」そのものよりも、「死」を体験した後の、周りの人間の生き様にスポットが当てられます。零もそうですが、零の親友となる輪の母親の話には、なかなか重いものがありました。零の両親が亡くなったのは残念ですが、桐原家に引き取られて本当に良かったです。この家でなければ、きっともっとずっと長い間、辛い思いをし続けなければならなかったでしょうね。
ラストもなかなかです。麻亜子がどういう心境の変化で零の申し出を受けることにしたのか、その辺りをもう少し詳しく知りたかったので、さらりと流されてしまったのが少々残念ではあるのですが、零の視点だと、こんなところなのかもしれませんね。
この4巻は番外編で、物語としては一応独立しているのですが、先の3巻のネタをかなりたくさん含んでいます。3巻までを読んでいない方は要注意!ぜひとも順番通りに読みましょう。

「スカーレット・ウィザード外伝」中央公論新社C★NOVELS(2001年12月読了)★★★★
30歳まで生きられないはずだったジャスミンは無事に30歳の誕生日を迎えて戸惑います。しかしケリーにそのことを告げることができないままに毎日の職務に忙殺されているジャスミン。ケリーも副総帥としての仕事に追われる忙しい毎日。そしてダニエル(ダン)はすくすくと育ちます。しかしやがて訪れる決別の日。ケリー改めて総帥として生きる道を選びます。そして8年がたった時、ダンは12歳になっていました。連邦宇宙大学付属の中等科に進学する時、ダンは総帥にはなりたくない、経営専科ではなく操縦過程に進学したい、と言い出します。その時は自分の力がないため仕方なく経営専科に進んだダンでしたが、その後ケリーの元に天使がやってきてダンの家出を伝えることに。

「天使が降りた夜」という副題がついた外伝です。この天使というのが実は…。デルフィニア戦記とかなりリンクしていて驚きました。もうほとんど話が重なる伏線は完成したと言っていいのではないでしょうか。闇と太陽と月の3人が現れた時。デルフィニア戦記を読んでる人ならすぐ分かりますよね。ジャスミンはまだ目覚めていないのですが、これはきっとその後その3人とジャスミンとケリーの世界が重なっていくということで… その時一体何が起きるというんでしょう。あまりに恐ろしくて想像もしたくありません。(笑)
ジャスミンとケリーの息子のダンは、なんと4代目総帥の座を捨てて家出するのですが、その理由の1つが「キング・オブ・パイレーツ」と呼ばれる伝説の海賊への憧れ!そしてそれをケリーに言う場面が…。ケリーの心の中のツッコミにはかなり笑えます。ダンもいつか自分の父親が当のキングオブパイレーツだと知る日は来るのでしょうか?誰もなかなか言いそうにないですが、私としては誰かに伝えて欲しいです。でもそれを知ってしまったら、もうダンは2度と立ち直れないかも…。
それにしてジャスミンとケリーの再会、再活躍というのも現実味が帯びてきたし、まだまだ外伝は続きそうで楽しみです。でも次回の学園物というのは、どうなるのでしょう?本当に「スカーレット・ウィザード」という題名に似合った作品になるのでしょうか?
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