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このページは、鯨統一郎さんの本の感想のページです。

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「邪馬台国はどこですか?」創元推理文庫(2001年6月読了)★★★★★お気に入り
スリーバレーという名の小さなバー。バーテンダーは松永。そして3人の常連客は、日本古代史が専門の三谷教授と、三谷教授と同じの学部の助手の・早乙女静香、そして日本古代史が専門の雑誌ライター・宮田六郎。宮田が静香相手に一見突拍子もなく見える仮説をあげ、その論証を繰り広げていきます。

これは面白いです。「ブッダは実は悟りを開いていなかった」や「織田信長の本能寺の変は実は自殺だった」など、国内外の歴史上の出来事や人物に対して様々な仮説が繰り広げられるのですが、この論証がとにかくすごいのです。始めは突拍子もなく見える仮説でも、読んでいるうちに、いつの間にやら納得(洗脳?)させられてしまいます。確かに今は史実とされていることでも、実はそれほど信頼度の高くない正史に頼っているだけだったりするのでしょうし、思い込みも多いのでしょう。ここに書かれている仮説は実は本当だったのかもしれない、と読んでいる私は作者の術中にすっかりハマってしまいました。歴史に対して専門的な知識を持っている人が読めば、また違った感想を持たれるのかもしれませんが、学校の授業程度の知識の私にとっては、とても面白かったです。正直、文章はそれほど上手いとは思えないですし、文献の引用が多すぎるなど、多少読みにくい部分もあります。しかし登場人物の会話が面白くてテンポが良いので、勢いで読めてしまう楽しい作品です。
…ところでこのバーのオーナーは… あの方なのでしょうか?

「悟りを開いたのはいつですか?」「邪馬台国はどこですか?」「聖徳太子はだれですか?」「謀反の動機はなんですか?」「維新が起きたのはなぜですか?」「奇跡はどのようになされたのですか?」

「隕石誘拐-宮沢賢治の迷宮」光文社文庫(2002年10月読了)★★
中瀬研二は、童話作家になるために一部上場損保会社を辞め、現在は結婚式場の便所掃除のアルバイトをしています。それだけでは収入が足りないため、妻の捻美がパソコンを使ってSOHOを開き、夫婦合わせて月25万円ほどの収入をようやく確保している状態。そのせいでこのところ夫婦喧嘩が絶えなず、そしていつにも増してひどい喧嘩をした日。研二が仕事を終えて家に帰ると、家には捻美と息子の虹野の姿がありませんでした。初めは実家に帰ってしまったのだと考える研二ですが、そこに1通の手紙が届き、驚きます。その中には、かつて宮沢賢治が発見したレインボーダイヤモンドの在り処を捻美の父が知り、それを1人娘の捻美にだけ伝えたとあったのです。研二は捻美たちがダイヤモンド目当てで誘拐されたと知って、「銀河鉄道の夜」幻の第5次稿に載っていたとされる手がかりを探し始めます。

宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」の中にレインボーダイヤモンドの謎が隠されているという、鯨さんならではのアイディアを、誘拐事件に絡めた物語。誘拐事件の場面では相当ひどいことが行われていますし、本来ならもっと緊迫感たっぷりになりそうなところなのですが、それがそれほどでもなく… むしろあまり緊張感の感じられない作品となっていますね。なんだかミステリを読んでいるというよりも、まるで子供用のアニメでも見ているような印象。あまり悲惨な物語にしたくないという意図の上で、わざとそういう雰囲気にしているのかもしれませんが、その分物語の中には入り込みにくかったです。宮沢賢治の作品に暗号が、というモチーフはとても面白いアイディアだと思うのに、もったいないような気がします。このアイディアなら、日常の謎的な物語というのも良かったのではないでしょうか。全体的な雰囲気が統一されていないのが気になりますし、あまりに軽く読み終えてしまって少々拍子抜け。もちろん研二と捻美が二重写しにされているのはすぐ分かりますし、きちんと読み込めば、更に色々な意図が見えてきたのかもしれませんが…。犯人に関しても、これは比較的分かりやすいのではないでしょうか。

「金閣寺に密室-とんち探偵一休さん」祥伝社文庫(2002年10月読了)★★★
室町幕府、三代将軍・足利義満の時代。義満は応永4年、40歳の時に造営した北山第(金閣寺)に移り住み、そこから政を執り行っていました。しかし美しい女人を見ると自分の側室に置かなくては気が済まず、家来や実の弟の妻でも構わず自分の妾としたり、第四代将軍職を継いだ義持よりも異母弟の義嗣を偏愛して、義嗣を帝の地位につけようとするなど、周囲の者が眉を顰める傍若無人ぶり。しかしそんな義満が、ある日金閣寺の一室で首を吊って死んでいるのが発見されます。部屋には内側からつっかい棒が施され、金閣寺の周りには隙間なく警備の侍たちが立ち並び、その部屋は事実上の密室。しかし義嗣の帝位を継承の目前だったこと、一色満範の娘・紗枝との床入りを心待ちにしていたことなどから、本当に自ら命を絶ったのかという疑惑が残ります。そして当代きっての知恵者と名高い一休がその謎に挑むことに。一休はこの時、若干15歳の小坊主です。

足利義満は本当に病死したのかという謎を元に、金閣寺を密室に仕立ててしまった作品。この密室の謎自体は、分かってみればかなり笑えるものなのですが、歴史的な背景を生かした物語自体がとても面白かったです。金色の鯉が義満の生まれ変わりだと真剣に言ってしまう時代的背景や、密室を「ひそかむろ」、動機のことを「心に持っている殺害の種」という表現方法も面白いですね。アニメなどで有名な一休さんのエピソードも、物語にとてもうまく絡められていて驚きました。これはアニメを見ていた人にも、かなり懐かしくて嬉しいネタなのではないでしょうか。(私は見ていませんが。)ただ、一休さんが京都弁というのは、京都という場所柄当然のことなのですが、とても意外な感じ。…これは単なる私個人の先入観なのですが。
六郎太と静のプロローグとエピローグは、やはり「邪馬台国はどこですか?」との絡みなのでしょうね。これなら一休さんでも、六郎太と静でも、続編ができそうですね。続編が出るのならぜひ読んでみたいです。

「千年紀末古事記伝ONOGORO」ハルキ文庫(2001年8月読了)★★★
天武天皇の命を受け、類稀な能力を持つ巫女・稗田阿礼(ひえだのあれ)が、既に忘れられてしまった倭の国の始まりの歴史を感知します。そして彼女が25年もの歳月をかけて感知した物語を、古事記の編纂者である太安万侶(おおのやすまろ)に語るという形式です。

私は元々古事記や古代史が大好きなので、とても面白く読めました。物語の内容は確かに古事記なのですが、細かい所を微妙に作り変えて、本家本元の古事記とは違う、鯨版の古事記が出来上がっています。それも「天岩戸が実は密室殺人だった」や「ヤマタノオロチの正体は実は…」など鯨さんの本領発揮。しっかりとミステリ的な部分も含まれています。あまり自然にやられてしまうので、自分の記憶違いだったかと思わず本家の古事記と照らし合わせたくなってしまうほど。しかしヤマタノオロチや草薙の剣に関する解釈は、本家より説得力がありますね。私もなぜ草薙の剣をヤマタノオロチが持ってるのだろうといつも思っていたのです。しかし最後の最後で驚きました。ここまでしますか!
しかしとても面白いのですが、「交合ひ」の描写があまりに多いのが…。確かに元々の古事記にもたくさんありますが、そちらはさらっと流しているはず。ここまでリアルだと、どうも照れてしまいます。それに死んだ神様が… 内容は古事記に間違いないのですが、まるで違うジャンルの物語を読んでるような感覚でした。しかしやはり面白いです。さすが鯨さんですね。

「なみだ研究所へようこそ!」祥伝社ノンノベル(2003年12月読了)★★★
【アニマル色の涙】…臨床心理士・松本清が就職した「なみだ研究所」は、波田煌子という伝説的な実績を持つセラピストのいるメンタル・クリニック。その日に来たクライエントは、動物が出てくる夢や幻覚を見ると言います。間違いなく精神分裂症だと思う清ですが、しかし煌子が見抜いた真相とは。
【ニンフォマニアの涙】…なみだ研究所にやってきたのは、ドメスティック・レイプの被害者。しかし襲ったのは夫ではなく妻であり、しかもその妻は、電車の中で痴漢行為まで働いていました。
【憑依する男の涙】…今回のクライエントは、花見の余興のため腹話術を練習していた会社員。今では人形を見ると、自分の意志に関係なく引きずり込まれてしまうと言うのです。
【時計恐怖症の涙】…中学1年生の息子が塾のドアを開けられなくて引き返してきたり、突然腕時計を捨ててしまうという母親。その息子は時計屋をやっている友達の家でパニックを起こしていました。
【夢うつつの涙】…依頼人の女性は、夢と現実の区別がつかなくなり、野球のバットの素振りの夢で手に豆ができたと語ります。なみだ研究所にやって来たのも、夢の中の行動らしいのですが…。
【ざぶとん恐怖症の涙】…会社の営業職にある男性は、ざぶとん恐怖症のため接待の時に困るのだと語ります。気付くきっかけとなったのは、テレビの「笑点」を見ていた時に頭痛がしたことでした。
【拍手する教師の涙】…人気催眠術師のショーに行った煌子たち3人。小野寺久美子が催眠術にかからなかったのを見て、1番前の座席で拍手をしていたのは、松本清の中学の時の理科の教師でした。
【捜す男の涙】…今回のクライエントは、現職の刑事。自分が捜している物が何なのかよく分からないと訴える刑事を相手に、煌子はサイコドラマを実演することを提案します。

副題は「サイコセラピスト探偵波田煌子」。どう見てもバイトの女の子にしか見えない、野暮ったくて小柄な姿の波田煌子。実は高卒で、心理学など勉強したことがないという人物。一緒に働いているのは、美人でスタイルもいい、働く30歳前後の会計士・小野田久美子。そしてそこにやってきたのは、大学院修士課程を修了し、尚且つ1年間の臨床経験を持つ臨床心理士の松本清。学歴はもちろんのこと、正しい知識もないままに危なっかしい治療を繰り返す煌子を見ていられずに苛つく松本清は、自分なりの診断を下せる人物だけあって、煌子の治療方法につっこみまくり。しかし煌子は、実は手がけた患者を必ず全快させてしまうという腕前の持ち主なのです。
サイコセラピストが探るのは、人間の心の中の謎。こういうところにもミステリが存在していたのですね。まずそれがとても新鮮でした。心理学を勉強した人には、かなり乱暴に見えるのではないかと思いますし、しかもミステリとして読む場合、煌子が真相を掴むまでの道筋はかなり強引。ほとんど勘の領域ではないかと思えることもしばしばです。ですがこの3人の会話はとても楽しく、とぼけた味わいがいいですね。この中で好きだったのは「憑依する男の涙」と「ざぶとん恐怖症の涙」。
毎回解説されていく心理学的精神学的理論を利用しての治療というのも、なかなか面白かったです。

「九つの殺人メルヘン」カッパノベルス(2002年3月読了)★★★★★お気に入り
【ヘンゼルとグレーテル】…77歳の女社長・富沢イシが殺されます。容疑者は、日頃社長に八つ当たりされていた副社長・畑山四郎と、横領でクビになった元専務の五十川孝行でした
【赤ずきん】…マンションの一室で、森戸キンと孫のいずみが殺されていました。容疑者は第一発見者でいずみの恋人の三田村勉。一番疑わしい森戸いずみの義母とその恋人には完璧なアリバイが。
【ブレーメンの音楽隊】…真昼の火事で3人の男性が焼死。その3人は「楽団四季」メンバーで、春原成美だけは自宅にいて無事。向いのタバコ屋のおばさんが、その家には出入りがなかったと証言します。
【シンデレラ】…キャッスルホテルのオーナーの息子・城拓哉の恋人だった吉野理保子が崖から転落死。吉野理保子は妊娠3ヶ月、城拓哉と鉄鋼会社令嬢の婚約が決まった矢先の出来事でした。
【白雪姫】…渋谷区に住む17歳の白石由紀子が撲殺されます。容疑者は、殺虫剤入りのアップルパイで毒殺しようとした23歳の義母・朋美と、第一発見者の河原崎大輔。
【長靴をはいた猫】…代官山の自宅で絞殺されていた猫田真沙実の事件で、真沙実がサクラをしていた出会い系サイトの管理人・唐場公将が容疑者としてあがるります。
【いばら姫】…タレントの疋田慎二の恋人だった野原夢子が服毒自殺。慎二には最近ミコシバ総業の社長の娘・御子柴徳美との結婚話が持ち上がっていました。夢子の死は本当に自殺なのでしょうか。
【狼と七匹の子ヤギ】…幼稚園の保母・月居あずみが西日暮里の自宅で絞殺されます。容疑者は同じ幼稚園に勤める保父・本谷雅和。しかし死亡推定時刻、本谷は幼稚園にいたというのです。
【小人の靴屋】…渋谷を中心にダイヤを狙う怪盗S89が現れます。毎週日曜日になると現れる怪盗の正体を、桜川さんはどうやら知っているらしいのですが…。

渋谷にある日本酒バー「森へ抜ける道」。店のマスターと、「僕」こと現職の刑事の工藤、そして友人で犯罪心理学者の山内という厄年トリオが、酒を飲みながら酒の薀蓄や世間話、最近起きた事件の話をしていると、その場に居合わせた20歳の女子大生・桜川東子(はるこ)が、大学で専攻しているというメルフェンになぞらえて事件の謎を解いてしまうという形式の連作短編集。「邪馬台国はどこですか?」とよく似ていますね。
この作品で「邪馬台国」と違うのは、こちらは童話の新解釈を扱いながらも、そこに現実の事件を絡めているということ。殺人事件の話をしているのに、いきなり童話の解釈を語り始める女子大生というのもすごいですが、「本当は恐ろしい○○童話」的な新解釈というのは、まさに鯨さんの本領発揮の設定。事件の謎解きと童話の新解釈がとても綺麗に組み合わさっています。「狼と七匹の子ヤギ」「小人の靴屋」には、少し無理があるような気もしますが、「赤ずきん」や「白雪姫」の2編などは本当に巧いですね。そしてこの中の事件はすべてアリバイ崩し。作中にも引き合いに出されている、有栖川有栖氏の「マジックミラー」の中にあるアリバイの9つの分類が、すべて網羅されています。お見事です。
事件の話になる前の雑談も、まるで漫才のように楽しいですし、雑学や一昔前の懐かしいネタが入っているのも面白く、厄年トリオと同年代でないのが残念なほど。出てくるお料理やお酒も美味しそうです。肝心の謎解きもとても切れが良く、内容がとても濃く感じられます。この作品はおそらく続編は出ないと思うのですが、多少時間をおいてでも、またぜひ同じメンバーで書いてほしいものです。今回はアリバイ崩しだったので、次回は例えば密室のバリエーションとか…。
最後の「小人の靴屋」にちらっと出てくる美貌の天才歴史学者は、きっと「邪馬台国」の彼女ですよね。それに怪盗は、淡坂妻夫さんの「怪盗S79号」が元ネタなのでしょう。他にも色々なネタがあり、そのたびにニヤリとさせられてしまいました。鯨さんらしいとても楽しい短編集でした。

「CANDY」祥伝社文庫(2002年2月読了)★
気がついた時は草原に、そして再び気が付いた時、「ボク」は雑踏の中に立っていました。ジャケットの胸ポケットには、黄色いキャンディが。そのキャンディのせいで、「ボク」は警察官にまで追い掛け回されることになります。追いかけられていた「ボク」を助けてくれたのは、鈴木鈴美、通称リンリンと名乗る女性。彼女は「ボク」を探していたのだと言います。「反ブッダ」として追いかけられているという「ボク」が助かる方法は、この世で3つしかないキャンディを食べることだけだと言うのですが…。

なんとも言えないような馬鹿馬鹿しい作品。鯨さんの独特のノリなのですが、それにしてもくだらなさすぎです。笑える部分もあるのですが、内容は無いに等しいかと。マッケン爺、日ペンの巫女ちゃん、ドーモ学園、ダイオ鬼神、シャーリーズ・エンジェル、など駄洒落が満載で、真面目なシーンは全くありません。これはSFでも何でもなく、ただの鯨ワールド。この短さで本当に良かったです。(しかも買ったのは古本セール)
最後に「この作品は架空の物語です」とわざわざ書いてあるのですが… 架空じゃなかったら困りますってば!

「タイムスリップ森鴎外」講談社ノベルス(2004年2月読了)★★★
何者かに毒を盛られたことに気付いた森林太郎は、外出着の和服に着替えて、自宅のある本郷の団子坂から渋谷の道玄坂へと向かいます。道玄坂には、以前執筆の時に利用したことのある宿があるのです。しかし道玄坂についた時、林太郎は何者かに身体を押され、崖から転落。次に気づいた時、林太郎はまるで日本とは思えない街にいました。大正11年にいたはずの林太郎はなんと、80年後、平成14年の渋谷の道玄坂にタイムスリップしていたのです。

(森鴎外の「鴎」の字は本当は違うのですが、変換できませんでしたのでご了承下さい)
平成14年にやって来た当初こそ、明治〜大正時代を生きる人間らしく若者に説教をしたりしていたものの、見る見るうちに現代の生活にも慣れていく林太郎。1人で電車に乗り、携帯電話を使いこなし、カラオケやラップの大会で熱唱することになります。その辺りはとてもテンポが良く、面白いです。博識で、留学経験もある森鴎外ならではという感じですね。麓麗(ふもとうらら)や三須七海、本間香葉子、小松崎拓海と、林太郎が現代の渋谷で出会う高校生たちも個性的ですし、うららの両親もいい味を出しています。しかしその反面、「邪馬台国はどこですか?」や「九つの殺人メルヘン」のように、気持ち良く騙されるという感覚は薄く、謎解き部分は肩透かしをという印象。軽いノリのまま終わってしまったのが少々残念でした。

「文章魔界道」祥伝社文庫(2002年10月読了)★★
一編の作品も書いたことはないが、凄まじい数の本を読んでいる大作家・大文豪(おおぶみ ごう)と、本を一冊も読んだことがないのに、書くことが大好きな弟子のミユキ。しかし大文豪が30年にもわたる作家生活で初めて書いた小説が、霊界の文章魔界道に棲むという文章魔王に奪われてしまいます。噂によると、文章魔王は、この世から小説というものをなくそうとしているらしく…。これはなんとしてでも小説を取り戻さないといけないと、ミユキは文章魔界道に繋がっているという電脳世界へと飛び込みます。

「Candy」の次は、戯曲形式の小説。ミユキと大文豪、そしてなぜか登場する青空球児・好児などの会話がテンポよく進みます。この作品も「Candy」に負けず劣らずの馬鹿馬鹿しさなのですが、こちらの方が言文一致、回文、同音異義文など言葉遊びがたくさんある分楽しめました。でも… それだけですね。

「ミステリアス学園」カッパノベルス(2003年12月読了)★★★
東京都M市郊外にあるミステリアス学園。その大学のミステリ研、通称ミスミス研に今年入部したのは、筋金入りの本格読み・薔薇小路亜矢花と、ミステリと名のつくものは、松本清張の「砂の器」しか読んだことがない湾田乱人。薔薇小路亜矢花はともかくとして、湾田乱人が入部したのは、なんと「E=MC二乗」を小説の形に表すには、ミステリが向いているのではないかと考えたため。2人は、早速先輩たちに好みのミステリを聞かれることになります。なんと本格ミステリを好む部員が1人しかおらず、本格ミステリ派とアンチ本格ミステリ派が対立していたのです。

まるで「そして誰もいなくなった」のような雰囲気の連作短編集。ミステリの分類や本格ミステリの定義、その歴史などの薀蓄がたっぷり詰め込まれていて、それを読んでいるだけでも体系的な勉強になる作品。しかもその合間には、「六本木にいい心理クリニックがあるらしい」だの、「たいへん、中には大量の缶ビールしかないわ」だの、小ネタがたくさん散りばめられています。最後の真相に関しては好みが分かれるところだと思うのですが… 私もあまり決着のつけ方には納得していないのですが、そこに至る構成は面白かったですし、この薀蓄部分と小ネタで楽しく読めました。(しかし火村は臨床心理士ではないでしょう…)
カッパノベルスの表紙や中の写真の「ヴィジュアル・スタッフ」に関しては、詳しくはコチラ。部長の小倉紀世治役をやっているのは、もしかして鯨さんご本人なのでしょうか? ミステリ作家さんの傾向が一目で分かる、巻末の「本格ミステリ度MAP」も面白いです。

収録作品…本格ミステリの定義・トリック・嵐の山荘・密室講義・アリバイ講義・ ダイイング・メッセージ講義・ 意外な犯人
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