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このページは、鯨統一郎さんの本の感想のページです。

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「謎解き道中-とんち探偵一休さん」祥伝社ノンノベル(2003年11月読了)★★★
【難波・明の景色】…代官の娘を巡る2人の男の剣の試合。負けた方の男の首が失われていました。
【大和・栗鼠の長屋】…密室状態の堂の中で、首を吊って死んでいるのが発見された寺の住職。
【伊勢・魔除けの札】…地震を予言して以来、生き神となった女性のために、村は存亡の危機。
【尾張・鬼の棲み家】…草原に建つ2軒の家。しかし翌朝、片方の家が消えうせていたのです。
【駿河・広い庭】…密室の中で、喉に毒針を刺して死んでいた内儀。本当に自殺だったのでしょうか。
【伊豆・鰻の寝床】…朝になると崖の上の細長い家が消失、中にいた亭主もいなくなっていました。
【相模・双子の函】…地主の葬式にやって来たのは、跡取り息子の勘当された双子の弟でした。
【武蔵・猫と草履】…遂に茜の両親のことが明らかになります。

建仁寺の小坊主・一休、京都の検使官・蜷川新右衛門、そして建仁寺の下女・茜の3人が、茜の両親の噂を追いながら、東へ東へと旅を続ける物語。行く先々で、ちょっとした事件に巻き込まれ、それを解く為に一休は1つ頓知を効かせなければいけなくなり、そして事件の解決と共に、茜の両親に関する情報がもたらされるというパターン。1つのイベントが終了すると、次に行くべき場所が分かるというのは、まるでRPGのようでもありますね。
首なし死体、密室、家消失など、扱っているモチーフは、非常にミステリらしいミステリ。それぞれに短いながらもまとまった短編となっています。しかし、あまりに完璧にそのパターンに則っているためか、途中で少々飽きてしまいました。1つの話ごとに謎解きと頓知が1つずつ入っているのですが、謎と頓知は全くと言っていいほど関連性がないというのも、原因の1つかもしれません。ことさらに人を試すような言動というのは好きではないので、それが8回も続くとなると少々ツライという面も…。しかし最終話の禅問答は非常に面白かったです。これもまた1つの回答なのですね。

「タイムスリップ明治維新」講談社ノベルス(2004年2月読了)★★★
麓麗(ふもとうらら)は17歳の女子高校生。入浴中に親友の三須七海に襲われたと思った瞬間、気を失ってしまいます。次に気がつくと、うららがいたのは長州藩の江戸藩邸下屋敷の一室。なんとうららは、幕末の江戸にタイムスリップしてしまったのです。うららを助けたのは桂小五郎。しかしそんなうららを、森の石松と名乗る男が訪ねてきます。彼は実は25世紀の政府機関・統一執行部から幕末へと送り込まれてきたという人間。同じく25世紀からやってきた人間が小栗上野介に化け、歴史を狂わせようとしているので、それを阻止しなければならないと言うのです。歴史が正しく流れないと、もう2度と未来の世界に戻れなくなると聞き、うららは森の石松と、自分と一緒にタイムスリップしてきた剣崎薔薇之介と共に、明治維新を正しい姿にしようと奔走することに。

「タイムスリップ森鴎外」のシリーズ第2弾。幕末の勤皇の志士や新撰組が登場する、はちゃめちゃ歴史SF小説。前作でなぜ森鴎外が突然タイムスリップすることになったのかという謎も、ここで分かります。歴史上の人物の人物が現代に来るよりも、現代人が歴史の中にタイムスリップする方が馴染みやすいのか、前作よりも面白く読めました。歴史上の人物たちの意外な素顔を見たような気になってしまいますね。特にまるでやる気を見せない坂本竜馬を動かすために、うららが「竜馬がゆく」を読ませてしまうという設定は凄いですし、天理教のエピソードも可笑しかったです。突然過去に行ったうららがなぜ1人であっさりと着物を着られるのか、あまりに簡単に幕末の生活に馴染みすぎているのではないか、など細かい疑問は残りますし、いくら作品の中の人物とはいえ、女子高生のうららをあまり色々な人物たちと関係させるというのも如何なものかと思いますが…。幕末の資料として、鯨さんのデビュー作「邪馬台国はどこですか?」がちゃっかり登場するのも可笑しいですね。

「新・世界の七不思議」創元推理文庫(2005年3月読了)★★★
古代史の世界的権威であり、現在52歳のジョゼフ・ハートマン教授は、早乙女静香に連れられて繁華街の外れにあるうらぶれたバーへ。上流階級として生きてきたハートマン教授は、そのバーの薄汚さに不安になります。しかしバーテンの松永は意外と美味しいギムレットを作り、宮田と呼ばれるフリーライターは、静香や松永、ハートマン教授の話から意外な推理を繰り広げるのです。

「邪馬台国はどこですか?」の姉妹編とも続編とも言える作品。美貌の歴史学者・早乙女静香とフリーライターの宮田、バーテンの松代はそのままですが、今回は三谷教授の代わりにペンシルベニア大学教授のハートマンが加わります。彼は古代史の世界的権威。しかしせっかくの肩書きの割にあまりいい所がありませんね。ほとんど物語の視点のための存在。静香との京都旅行が伸びに伸びて、毎晩のようにスリーバレーで宮田と静香の応酬を見ているだけです。
そして今回も、静香の舌鋒鋭い攻撃に、宮田が飄々と一見突拍子もない推論が繰り広げていきます。こういった歴史ミステリは、やはり鯨さんの作風に一番良く似合っているように思いますね。明るく楽しい展開も、鯨さんならでは。しかし今回も楽しくはあったのですが、残念ながら、「邪馬台国」ほどの説得力は感じられませんでした。読んでいても、「邪馬台国」を読んだ時の「本当にそうなのかも!」と思わされてしまうような感覚はなく、「そう来るか」という感じ。謎のスケールが格段に大きくなった分、謎の解明も大味になってしまったような気が… それだけが少々残念でした。
ここで活躍する早乙女静香は、 「すべての美人は名探偵である」で、「九つの殺人メルヘン」の主人公の桜川東子と共演しているそうなので、そちらもぜひ読んでみたいです。

「アトランティス大陸の不思議」「ストーンヘンジの不思議」「ピラミッドの不思議」「ノアの方舟の不思議」「始皇帝の不思議」「ナスカの地上絵の不思議」「モアイ像の不思議」
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