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このページは、霧舎巧さんの本の感想のページです。

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「ドッペルゲンガー宮」講談社ノベルス(2000年1月読了)★★★
晴れて大学に入学した二本松翔は、ひょんなことから「《あかずの扉》研究会」に入会することに。そしてそこに持ちこまれた、行方不明の女子高生を探して欲しいという依頼。メンバーは早速流氷館へと向かいます。

島田荘司氏が久々に名付け親になったという霧舎巧氏のデビュー作。第12回メフィスト賞受賞作品です。副題は「《あかずの扉》研究会流氷館へ」。
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」的な作品。この話で面白いのは、なんといっても携帯電話の使い方。電話でのやり取りによって、館の外にいるメンバーにもリアルタイムで中の様子が伝わるので、よくある館物とは一味違う独特な雰囲気を盛り上げています。それに館の中と外にそれぞれ探偵がいて、連絡をとりあって推理しているというのも面白いですね。肝心のトリックも、いかにも島田氏好みの大掛かりなもの。伏線の張り方もなかなかいい感じです。ただ、途中やや散漫な印象を受ける部分あるのが少し残念ですね。もう少しエピソードを削ったほうが、全体にしまった作品になったのではないでしょうか。しかし終盤、謎解きが始まってからは、本当に息もつかせずにぐいぐいと読ませてくれます。

「カレイドスコープ島」講談社ノベルス(2000年1月読了)★★★★
今回《あかずの扉》研究会の面々が向かったのは、八丈島沖にある月島と竹取島。ユイの友達に招待されて、ゴールデン・ウィークは南の島へ楽しい旅行という予定。しかし島に向かう途中の船の中で、二本松翔は月島の岸壁から死体らしきものが投棄されるのを目撃してしまいます。

《あかずの扉》研究会シリーズ第2弾。副題は「《あかずの扉》研究会竹取島へ」
前回の館物に続き、今回は孤島物です。孤島物と言っても無人島ではなく、他の島への交通手段はきちんとあり、登場人物は2つの島を行ったり来たりしています。霧舎版「獄門島」という言葉通り、土台にはまるで横溝作品のような雰囲気。しかし謎を推理するのが《あかずの扉》研究会の面々ということで、全く違う雰囲気の作品に仕上がっています。
前作「ドッペルゲンガー宮」に比べ、かなりこなれていきている印象です。前回気になった点は、今回はほとんど気になりませんでした。《あかずの扉》研究会のメンバーにも今回は違和感なく入り込めましたし、賛否両論ありそうな咲さんの能力の使い方についても一工夫されているように思います。散りばめられている小道具も物語の雰囲気を盛り上げるのに一役買ってますし、相変わらず伏線の張り方もいい感じ。読み応えのある作品です。
次回の嵐の山荘物も楽しみです。

「ラグナロク洞」講談社ノベルス(2000年11月読了)★★★
世間から隔絶されたような、山間の小さな在所・影郎村を訪れた鳴海雄一郎と二本松カケルは、落盤事故により洞窟に閉じ込められてしまいます。その洞窟の中には1人の老人と2人の若い女性という先客がいました。村の消防団員でもある八十島大作が助けを求めに行ってくれているはず、と始めは楽観的だった彼らですが、まさにその洞窟内で連続殺人事件が起きることになり、外との連絡手段もなくなってしまいます。

《あかずの扉》研究会シリーズ第3弾。副題は「《あかずの扉》研究会影郎沼へ」。「館物」「孤島物」に引続き、三作目は予告どおりの「嵐の山荘物」。しかもダイイング・メッセージとミッシング・リンクという、ミステリの王道中の王道とも言える設定です。
話自体は面白いのですが、登場人物、特に女性の描写がイマイチですね。読んでいても現実感がまるでなく、読み進めるに従って、違和感を感じるばかり。これならステレオタイプな女性が出てくる方がまだマシかもしれないとまで思ってしまいました。それに、なぜわざわざミッシングリンクを作ったのかという理由付けが不十分のような気がします。作者の都合の良いように話が流れすぎているような印象。しかし《あかずの扉》研究会の面々はいい感じ。これで研究会内でのラブコメ的要素がなければ言うことないのですが… 別に恋愛物が嫌いなわけではないのですが、このシリーズの中では、その部分がいつもとってつけたようで、邪魔に感じてしまうのです。私としては、霧舎さんには本格ミステリの王道の設定での純粋な謎解きで勝負して欲しいです。
ミステリ好きなら知っている名探偵の名前やあの建築家の名前などが登場、そういう点でも楽しめる作りになっています。霧舎氏のミステリの好みの方向性も良く分かりますね。でも逆に言えば、ミステリ初心者にとっては、分からない部分が少なからずあって少しツライかもしれません。ここまで名前を出すのなら、後書きでも注釈でも何でもいいから説明をつけておいた方が親切なような気がします。

「マリオネット園(ランド)」講談社ノベルス(2001年12月読了)★★★★
今はもう閉鎖されたテーマパーク・マリオネットランドにある塔は、ピサの斜塔のように傾いた形をしています。その形状のせいか首吊り自殺が多く、現在では「首吊塔」と呼ばれる心霊スポット。この曰くありげな塔に、後動悟が「もりさきめぐみ」という女性を追ってやってきていました。一方、大学にいる鳴海たちの元には、沢入美由紀という女子高校生が訪れていました。彼女の元に妙な手紙が届いたので相談したいというのです。その送り主は、「ドッペルゲンガー宮」の事件の時に死んだはずの野々原涼子。その手紙にある暗号のような文章と「お待ちしています」という言葉を見て、鳴海たちも早速行動を開始します。暗号文と謎の電話に翻弄された末、彼らが向かう先は、やはりマリオネットランドの首吊塔…。

《あかずの扉》研究会シリーズの第4弾。副題は「《あかずの扉》研究会首吊塔へ」。
研究会の書記である二本松翔が、ドッペルゲンガー宮の事件をミステリ作品にまとめた物が「霧舎巧」というペンネームで本になる、というところから物語は始まります。翔がペンネームの由来を説明する時、鳴海さんが「それで、下の名前は『棺桶』か?」と言ったり(エラリー・クイーンの「ギリシャ棺の秘密」)、「巧」は「巧千暁」からではなく、「隈能美堂巧」から取ったのだと説明したり(巧千暁は西澤保彦作品、隈能美堂巧は島田荘司作品の登場人物)、前作同様ニヤリとさせられる場面が多いです。しかも途中で出てくる暗号は、古今東西のミステリの知識がないと解けないもの。この最初の暗号解きがとても面白かったです。メインのトリック以上にワクワクしてしまいました。今回は研究会の中のラブコメも少なくて(全くないわけではありませんが)とても読みやすかったです。
後動さんと鳴海さんの出会いの事件というのも気になります。これもそのうち書かれるようですね。その前に霧舎さんがどうしても書きたくなってしまった作品があるそうなので、その後になりそうですが、そちらも楽しみです。
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