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このページは、剣持鷹士さんの本の感想のページです。

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「あきらめのよい相談者」創元推理文庫(2005年11月読了)★★★★
【あきらめのよい相談者】…藤堂法律事務所のイソ弁・剣持鷹士がある日聞くことになったのは、ホテルの入り口の暗さのせいで、ガラス扉にぶつかって頭にコブを作ったという白石氏の相談。こういった相談者は大抵諦めが悪いという先入観とは裏腹に、あっさり引き上げる白石氏に鷹士は驚きます。
【規則正しいエレベーター】…鷹士やコーキと一緒に飲んでいた広瀬彰彦が出題したのは、マンションやビルでエレベーターに乗ろうとした時、たまたま自分のいる階にエレベーターが止まっている確率。広瀬が住んでいるマンションのエレベーターは、いつも2階で止まっているというのです。
【詳し過ぎる陳述書】…離婚の相談に事務所を訪れたのは、加藤美佐子という女性。夫が日本心霊教という宗教に走ってしまい、彼女は子供を連れて家を出ていました。
【あきらめの悪い相談者】…立て続けに3件の相談を持ちかけてきたあきらめの悪い相談者・東条英雄が殺人を犯したとニュースに流れ、鷹士は驚きます。

表題作「あきらめのよい相談者」は、第1回創元推理短編賞受賞作品。福岡を舞台にした連作短編集です。「五十円玉二十枚の謎」の一般公募で最優秀賞だった高橋謙一氏が、この剣持鷹士氏。
イソ弁をしている新人弁護士・剣持鷹士が関わった件を、高校時代からの親友・コーキこと女王(めのう)光輝が鮮やかに解いてしまうというパターン。この推理がまさにパズルとして素晴らしいのです。特に表題作「あきらめのよい相談者」の解決は、ハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」のよう。いくつか提示されていた事実が思いがけない状態で繋がり、真相を明らかにしていきます。作者の剣持鷹士さんご自身が弁護士だそうで、法律的な薀蓄や、裁判などにまつわる具体的なエピソードも楽しいですね。しかし「詳し過ぎる陳述書」の「裁判ってのは、こちらの主張が正しいと裁判所に思わせること、あるいは相手の主張が正しくないと思わせることなんやから、実際に起こったことは何かって考えてもしょうがなかよ。」という言葉などから、弁護士にとって、真相こそが重要なのではないというのも良く分かります。もちろん正義を振りかざし、個人の権利を守るために存在するというわけではないのは良く分かっているつもりなのですが、弁護士という職業に対する世間のイメージとはかなり違いますね。やはり現実の仕事としての弁護士には苦労が多いのだろうなという印象を持ちました。
このまま書き続けていれば、剣持さんは間違いなく人気作家になっていたと思うのですが、出版されている作品はこの1冊のみ。本業の方がお忙しいのでしょうか。勿体ないですね。
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