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このページは、梶尾真治さんの本の感想のページです。

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「地球はプレイン・ヨーグルト」ハヤカワ文庫JA(2005年9月読了)★★★★★
【フランケンシュタインの方程式】…金星ヴィーナス・ポリスに定期的に資材を運ぶ、極紘宙商(株)の宇宙船虎馬号に乗り込んでいたナワとモリ船長。しかしモリ船長が酸素ボンベのうちの1本を勝手に味噌樽と取り替えていたことから、酸素が不足することに。
【美亜へ贈る真珠】…「航時機」が始動してから1週間経った頃。「私」は、20歳を過ぎたぐらいの美しい女性が激情の色を浮かべて「航時機」を見つめているのに気付きます。
【清太郎出初式】…西暦1900年。地球は火星人の超科学的兵器攻撃によりあっけなく全滅。侵略当時の日本では清太郎という1人の若者が命からがら生き延びて…。
【時空連続下半身】…加塩が2日ほどの関西出張から戻ってみると、アパート中が足跡だらけ。アパートの管理人・徳田はこの2日間は顔見知りしか来ていないと言うのですが、隣の銀ちゃんの愛人・すみちゃんが、高さ1mほどの影を目撃したらしいのです。
【詩帆が去る夏】…娘の裕帆が20歳になり、「私」は次の日曜日に水子岬に花束を持っていこうと誘います。今年は、今は亡き妻・詩帆の20周忌に当たるのです。
【さびしい奇術師】…舞台に立っている奇術師は、実は無から有を創造りだす超能力者。しかし強迫観念の持ち主、悲観論者の彼はなかなかカウントをやめられないのです。
【地球はプレイン・ヨーグルト】…創作料理の料理人・麓(ふもと)は、料理の才能を見込まれてあるプロジェクトに参加することに。T市上空に現れたUFOに乗っていた宇宙人は味覚によってコミュニケーションを行うというのです。

「美亜へ贈る真珠」はデビュー作。「地球はプレインヨーグルト」は星雲賞受賞作品。
この1冊の中に「フランケンシュタインの方程式」「時空連続下半身」「地球はプレイン・ヨーグルト」といったドタバタ系SFや、リリカルな「美亜へ贈る真珠」「詩帆が去る夏」、ノスタルジックな「清太郎出初式」が収められ、とてもバラエティ豊かな短編集となっています。
私がこの中で特に好きなのは「美亜へ贈る真珠」「さびしい奇術師」「地球はプレイン・ヨーグルト」の3編。「美亜へ贈る真珠」は叙情的で切ないラブストーリー。物語全体がしんと静まり返っているようで、最後の場面がとても美しく印象的。「さびしい奇術師」の何とも言えない哀愁も良かったですし、「地球はプレイン・ヨーグルト」はとにかく可笑しい作品。宇宙人との交信のために、とあるグルメの老人が宇宙人の出す分泌液を舐めるのですが、それが「塩っぽい味から、ブルー・ベリイ・ジャムへ変化。さくらんぼ酒、焼酎と氷砂糖で作って二ヶ月経った味だ。次にカルヤラン・ピラッカ。卵バターを抑えて塗ってある味。ヘルシンキの《クラフト》という小料理屋で作った味つけだ。ターフェルシュピッツに変化。かなり贅沢なワインを煮込みに使っていい味を出している。それから味噌おでんに変化。いや、味噌おでんの汁だな。中部地方の赤味噌をキザラで長時間煮こんである。オリーブ油の味。変わった。ちょっと待ってくれ。スペイン料理とはわかるのだが…そうだ、パエリヤに入っているムール貝の味だ。薬味がローズマリーの味に変化して…そのまま中和」といった具合。最後のオチもブラックで面白く、梶尾さんの発想の自由さには驚かされます。
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