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このページは、はやみねかおるさんの本の感想のページです。

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「都会のトム&ソーヤ」講談社YA!ENTERTAINMENT(2003年12月読了)★★★★★お気に入り

内藤内人はごく普通の中学生。ある三日月の晩、塾の帰りに同じクラスの竜王創也が歩いているのを見かけ、思わず後をつけるのですが、曲がり角を曲がるわずか4秒ほどの間に見失ってしまいます。他には通行人もいなかったのに、その間に創也は一体どこに行ってしまったのかと不思議に思う内人。翌日、内人が学校で創也に前の晩のことを尋ねると、創也は鍵を1つ内人に渡します。その日の午後は、その鍵がかかっている場所で過ごす予定だというのです。授業が終わるとすぐに、内人は創也を探すのですが、創也は既に下校した後。内人は早速、前日創也が消えた場所へと急ぎます。

この物語で活躍するのは、内人と創也という2人の中学生。創也というのは、頭脳明晰にして眉目秀麗、ワインレッドのフレームの眼鏡が似合う冷静沈着な少年。しかも超巨大総合企業・竜王グループの一人息子。ここまで条件が揃っていると、主人公の内人が霞んでしまいそうなところなのですが、しかしそうではないところが、この作品のいいところ。主人公は一見ごく平凡な中学生に見える内人なのです。しかし平凡に見えながらも、内人は実は創也も一目置く能力の持ち主。とは言っても特殊な能力があるわけではなく、内人の力はもっと人間としての基本的な部分にあります。それは自分自身で考えて行動できることと、サバイバル能力。小さい頃に祖母に教わったことを基本に、予め万全の態勢を整え、予期せぬトラブルに遭った時も着実に窮地を脱していきます。これは頭脳派ではあっても、実地の経験の足りない創也には欠けている部分。この2人の関係がなんとも絶妙なバランスでいいですね。創也のような少年の相手方に、内人のような少年をもってきたところが、はやみねさんらしくてとても好きです。
そして物語自体もとても楽しかったですし、ニヤリとさせられる場面も沢山。特に「四大」ゲームには笑いました。「子牛缶殺人事件」「モグラ・マグロ」「ジャムへの荷物」「匣の中の溌剌」とは。そして「ルージュ・レーブ」を、日本語に訳すと…。はやみねさんらしいですね。


「ぼくと未来屋の夏」講談社ミステリーランド(2003年12月読了)★★★★

小学校6年生の1学期の終業日。学校から帰る途中の山村風太は、いきなり「未来を知りたくないかい?」と声をかけられて驚きます。それが100円で未来を売るという「未来屋」の猫柳健之介との出会い。そして猫柳は、風太の家に居候することになります。風太の住む髪櫛町には、いくつか不思議な話が伝わっていました。町の中央の髪櫛神社を囲む鎮守の森は、昔からこの森でかくれんぼをすると最後まで見つからない子がいると言われる「神隠しの森」。子供たちは、用事もないのにこの森に行くことを禁じられていました。そして人魚の宝物の伝説や、髪櫛神社で転寝している間に見た幻の駅前商店街の話。ほんの10年ほど前にも、警官に追いかけられた泥棒が風太の通う髪櫛小学校に逃げ込んで、煙のように消えてしまうという出来事があったのです。

ミステリーランド第2回配本。同時配本は有栖川有栖氏「虹果て村の秘密」、篠田真由美氏「魔女の死んだ家」。はやみねかおるさんは、元々児童書のジャンルで活躍している方ということもあり、このミステリーランドのシリーズでも特に期待していた1冊。やはり普段から書いてらっしゃるだけあって、全く無理がなく、しかも面白いです。あとがきに「ぼくは、自分が読みたいって思う原稿をかいてしまいました」とある通り、夏の夜の肝試しやザリガニつり、秘密基地、町に伝わる不思議な話など、小学生、特に男の子の夢がいっぱい詰まっています。夏休みが丸々1つ、この本の中に収まってしまったという感じ。
猫柳は夢水清志郎と同じような存在のようでありながらも、しかし夢水清志郎とは違い、あくまでも風太を引き立てるというスタンスのようですね。基本的にまず風太が答えを出してから、その道筋を修正する役目。風太の自由研究に対するスタンスと一緒です。そして小説家志望の風太が自分で書いている「少年名探偵WHO」という物語も面白いのです。現実世界で猫柳でやり込められている分、小説の中でネコイラズに仕返しをしていたりして。「この作品なら、乱歩賞… いや、ひょっとするとメフィスト賞もねらえるかもしれない」という言葉にも笑いました。
最後まで分からないまま残ってしまった部分もありましたが、それでも気持ち良く終わって満足。この先、風太と猫柳の物語はまた書かれることもあるのでしょうか。傍にいると憎たらしい面ばかり目についてしまう猫柳なのですが、やはり憎めない存在。読み終えてみると、もう会えないのが寂しくなってくるのだから不思議です。

P.189「名探偵が事件を解決するのは、人を幸せにするため。間違えた推理で、だれかを不幸にするなんて言語道断だよって。」


「僕と先輩のマジカル・ライフ」角川書店(2004年3月読了)★★★★

【騒霊】…春。M大学文化人類学科の1年生となった井上快人。月収5万円の快人の下宿は、家賃1万円の今川寮。本物の霊能力者である川村春奈は、幽霊などが出る場所ではないと断言するのですが。
【地縛霊】…夏休み。快人と春奈を、長曽我部先輩が錦ヶ原の海の家のバイトに誘いにやってきます。既にバイトは決まっていたはずの面々は交通事故に遭い、結局3人にお鉢が回ってくることに。
【河童】…秋。大学のプールに河童が出るという噂。快人と春奈もあやかし研究会の一員として長曽我部先輩と共に調べて回ることになります。まずは目撃者の大伴涼子の元に話を聞きに行くことに。
【木霊】…冬。家庭教師のバイト先の中学2年生・義一に、京洛公園の桜の下に死体が埋まっているという噂を聞いた快人。さらに神社の御神木の下に五億円が埋まっているという噂まで流れてきて…。

角川スニーカー文庫のミステリアンソロジー「殺意の時間割」に収められていた「天狗と宿題、幼なじみ」の井上快人と川村春奈が大学生となって再登場する物語。後で気づいたのですが、この2人は、夢水清志郎シリーズの「『ミステリーの館』へ、ようこそ」にも登場していたのですね。
2人とも地元の国立大学M大学の文化人類学科に進んでいますが、小学生の頃と雰囲気がまるで同じ。快人が生真面目に日々過ごしているのとは対照的に、春奈は要領良く世渡りしています。この2人のやりとりが何とも微笑ましくていいですね。そして舞台の中心となるのは、快人が住むことになる今川寮。この今川寮にも個性的な面々が揃っていて、高橋留美子さんの「めぞん一刻」を思い出してしまいました。住人の中でも一番個性的なのは長曽我部慎太郎先輩。自分が何学部の何年生かということも分からないぐらい大学に居座っている先輩は、全身にオカルトグッズをつけている、見るからに怪しげな人物。彼と「あやかし研究会」、そして胸の紋章などについてはまだまだ謎が残されているので、それが徐々に明かされていくのが楽しみです。
この1冊の中に4つの短編が収められており、その中で私が一番気に入ったのは冒頭の「騒霊」。ただの幽霊騒ぎかと思えば、そこには意外な必然性がありました。思いがけない伏線も鮮やかでしたし、快人の勘違いの理由が分かった時には大笑い。そして「地縛霊」の、春奈には快人がどのように映っているのか答えないシーンには興味津々。(「カッパのカータン」が謎だったのですが、「ピンポンパン」に登場するキャラクターだったのですね)
ちなみに村八分というのは、冠、婚、葬、建築、火事、病気、水害、旅行、出産、年忌という10の付き合いのうち、葬式と火事以外の8つの付き合いをしないこと、なのだそうです。勉強になりました。


「怪盗クイーンと魔窟王の対決」講談社青い鳥文庫(2004年6月読了)★★★★

今回の怪盗クイーンの獲物は、香港の大金持ち・王嘉楽の持っている半月石(ハーフムーン)。半月石は「願いがかなう石」とも「神の石」とも言われる石で、実際、香港九龍城砦出身の王嘉楽は、幸運の女神に魅入られているとしか思えない人生を歩んできていました。現在の王は、香港島沖に作った人工島・四龍島城砦、通称「魔窟」の中で暮らし、警察も手を出せない四龍島城砦は、事実上王の独裁国家状態。しかし王の70歳の誕生日パーティが開かれることになり、その席上で半月石が披露されることになっていたのです。トルバドゥールは早速四龍島城砦へ。そしてクイーンとジョーカーは香港映画の若手アクションスターに変装して、王の誕生日に招かれるよう画策します。

怪盗クイーンシリーズの第3弾。
今回も軽快な展開で楽しい作品となっています。まるで香港映画を見ているような感覚。これまでの怪盗クイーン物に比べると、ほんのちょっぴり不思議な要素が混ぜられていて、そういう趣向もとても楽しかったです。今回新しく登場した考古学者のパシフィスト・ドゥ・ルーべは、クイーンの過去を色々と知っていそうで、これから先も楽しみなキャラクターですし、シャンティとシャクティ姉妹もかっこ良いですね。しかも真面目なアクション映画になろうとするところで、クイーンとジョーカーにしか聞こえないRDのツッコミ、思わぬ3枚目役となったICPO(国際刑事警察機構)の武闘派の探偵卿・ヴォルフが笑いに誘ってくれて、その絶妙なバランスも楽しかったです。


「都会のトム&ソーヤ」2 講談社YA!ENTERTAINMENT(2004年10月読了)★★★★

【鬼ごっこ Day and Night】…竜王デパート南T店にはCMが2種類ありました。滅多に流れることのない甘栗のCMの謎を解くため、内人と創也は深夜のデパートの冒険に乗り出すことに。
【箸休め わたしを音楽室につれてって】…音楽室野球をしている時に割れてしまった壷の話。
【ゲームの館】…イータ・エリックこと、謎の天才ゲームクリエイター・栗井栄太から招待状が届き、創也と内人は三連休を栗井栄太の屋敷で、4人の人間と共に宝探しをして過ごすことに。

「都会のトム&ソーヤ」第2弾。副題は、「乱!RUN!ラン!」。今回は、ショートショートをはさんで中編2作が収められています。
前巻から引き続き、栗井栄太の謎を追う物語。前作に比べるとややこじんまりとまとまり過ぎた感もありますが、今回も面白かったです。内人の相変わらずのサバイバル能力もいいですし、完璧な頭脳派でありながら、意外と考えなしに咄嗟に行動してしまう創也も、愛嬌があっていいですね。内人の「おばあちゃん」が、実際に登場することがないにも関わらず、本当にいい味を出しています。
今回は、栗井栄太の正体がとうとう判明することになります。この「ゲームの館」での攻防はなかなか楽しかったです。しかし正体が明かされてしまうと、ストーリー的には一段落ということになりますね。栗井栄太を超えたいと考えているのは、創也のみ。それでも今後も栗井栄太との攻防が繰り広げられるのでしょうか。それとも内人と創也の楽しい冒険譚が、創也の作るゲームに生かされるという物語になるのでしょうか? しかし今回も面白かったのですが、この栗井栄太の正体という大きな出来事があったにも関わらず、前作に比べてこじんまりとまとまっているように感じられてしまったのだけが、少々残念でした。


「少年名探偵虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」講談社ノベルス(2005年1月読了)★★★★

【ミステリーゲーム】…今日野村響子を呼び出したのは、ミステリ研部長をしている沢田京太郎。「推理力のある人でないと」という響子の断り文句を聞いた京太郎は、恭助に宣戦布告します。
【幽霊ストーカー事件】…文化祭で見事ミステリーゲームの謎を解いた恭助に、響子の学校の1年生・山原美代子が、ストーカーに困っているので助けて欲しいという手紙をよこします。
【トップシークレット】…真衛門の14歳になる妹・美絵留が恭助会いたさに来日。今回は恭助+美絵留VS京太郎+響子で、ミステリ研の金庫を開ける暗号の謎を解くことになります。
【人消し村の人消し城】…沢田たちミステリ研部員たちが合宿費用を捻出するために虹北堂でバイト中。美絵留が駅前の不動産屋で見つけてきたお城に泊り込むことに。
【最後の挨拶… 真衛門の元に、フランスのミリリットル家からの手紙が届きます。真衛門に城探しを止めて帰国するように書いてあったのです。そして恭助もフランスへ…?

虹北恭助シリーズの4冊目。元々は漫画の原作本として書かれたようで、プラカードなど、いかにも漫画的な演出が見られるのが可笑しいです。この作品の響子ちゃんは高校2年生。虹北恭助は相変わらずの不登校なのですが、既に帰国。その時に一緒に付いてきたフランスの没落貴族、20歳のミリリットル真衛門が恭助の家に居候中。事件の謎を解くことによって、背後にある人間の暗い部分を見るのはもう嫌だという恭助ですが、やはり行動しなければならないところではきっちり行動してくれますし、「最後の挨拶」のラストが何とも嬉しいですね。しかしそんな恭助を動かしたフランスの古城事件というのは、一体どのような事件だったのでしょう。その話でこのシリーズは完結するそうなので、読みたいような読みたくないような複雑な気持ちですが…。


「笛吹き男とサクセス塾の秘密」講談社青い鳥文庫(2005年1月読了)★★★★

岩崎亜衣、真衣、美衣や中井麗一も中学3年生。夏休みも終わろうとしていたある日のこと、名探偵・夢水清志郎の元を警視庁特別捜査課の上越警部と岩清水刑事が訪ねてきます。なんとハーメルンの笛吹き男が日本にも現れているというのです。2人は終戦間際の13人の少年兵が消えた事件のことを語り、さらに塾帰りの中学生2人が笛吹き男を目撃した話をします。その数日後、セ・シーマの編集者・伊藤真理が持ってきた謎解き紀行の企画は、かならず成績の上がる塾・サクセス塾の話。夢水清志郎はその塾に講師として潜入、岩崎家の三つ子と中井麗一もサクセス塾に体験入学をすることに。

夢水清志郎シリーズも10周年。作中の時間では2年8ヶ月が経過したようです。あとがきに「教授は一作目から進歩してませんね。(逆に退化してるような…)」とありましたが、扱いもますます粗雑になっているような。(笑)  本編の謎よりも、物語序盤で解かれる少年兵13人が消えた謎が面白かったような気もするのですが、サクセス塾に関しては案外良かったです。勉強は大変だと思いますが、プロ意識を持った教師の存在は気持ちいいですね。この場合、その教師が子供の頃の夢も忘れていないのですから、尚更です。黒姫こと小野田硝子や星野英雄は、また登場することもあるのでしょうか。岩崎姉妹やレーチとは、いい仲間になれそうですね。目先の受験戦争よりも、ほのかな恋愛モードが微笑ましい1冊でした。


「都会のトム&ソーヤ」3 講談社YA!ENTERTAINMENT(2005年6月読了)★★★★

【第一幕 S計画】…堀越美晴を映画に誘いたくて密かに計画を練る内藤内人。しかし竜王創也にはお見通しでした。土曜日、2人は現地の下見に出かけます。
【おまけ ボウリングやっほ〜!】…屋上から投球、階段を転がり落ちて校庭に飛び出したボールが昇降口前のペットボトルを狙う3Dボウリング。今までストライクを出したのは創也だけでした。
【幕間 二階堂卓也、参る!】…毎月楽しみにしている月刊誌「保育技術」「保育士の友」を手に入れた二階堂卓也は、公園でシャドー保育を始めます。
【第二幕 ミッション・イン・スクールフェスティバル】…文化祭前日、どうしても午後7時までに準備の終わらない2年5組は、こっそり学校に戻ってきて準備の続きをすることに。

「都会のトム&ソーヤ」第3弾。副題は、「いつになったら作戦(ミッション)終了?」。今回も前回同様、ショートショートをはさんで中編2作が収められています。
栗井栄太の正体が判明し、これからの展開がどう盛り上がるのか気になるところでしたが、そちらに関しては今回は一休み。内人が堀越美晴をデートに誘う「作戦」が前面に出ているのですが、むしろ基本に戻った、内人と創也の冒険譚となっています。デートの下見に文化祭ととても中学生らしくて楽しかったですし、例えば「シンクロ」の場面など思わず噴出してしまった場面もいくつかありました。
内人の「おばあちゃん」の教えがいつも以上に登場するのも嬉しかったです。やはり派手な大技1つではなく、着実に小技を積み重ねて大技以上の効果を上げるのが内人らしいですね。創也はボケ役が板についてきたようで、クラスメートの前でも何度か大ボケぶりを見せていますが、大丈夫なのでしょうか。クラスメートたちは目の前で創也がボケていても、あまり本気にしていないようではありますが。創也もシリーズの最初の頃に比べると、かなり人間的になってきているようですね。
そして今回はいつも以上に伏線が効いていたように思います。短編を集めたように見せて、やはり1つの長編だったのでしょうね。そして今回は新たな敵も登場。この人物は今後レギュラーメンバーになるのでしょうか? 今後の絡みが楽しみです。


「出逢い+1」講談社青い鳥文庫(2005年10月読了)★★★

収容所でT-28として育ったジョーカー、伝説の大怪盗・皇帝(アンプルール)に弟子入りした若き日の怪盗クイーン、そしてM大論理学教授時代の夢水清志郎の物語。

講談社青い鳥文庫25周年記念企画「おもしろい話が読みたい!白虎編」に収められている、夢水清志郎や怪盗クイーンのファンのためのサイドストーリー。熱心なファンには堪らないかもしれないですね。ジョーカーの物語はなかなか良かったですし、修行時代のクイーンの姿も面白かったです。そしてM大時代の教授がどんな感じだったのかずっと知りたいと思っていたのですが、彼に関しては今とまるで同じだったのですね。(笑)


「オリエント急行とパンドラの匣(ケース)」講談社青い鳥文庫(2005年10月読了)★★★★

今回の「セ・シーマ」の「名探偵夢水清志郎の謎解き紀行」は、なんとオリエント急行が舞台。トルコのイスタンブールからフランスのパリまで列車の旅をするというのです。丁度その頃、手作りおでんをジョーカーに御馳走しようとして食べてもらえず怒った怪盗クイーンは、「ジョーカーのばか!」という置手紙を残して、1人トルバドゥール号から降下、イスタンブールへと向かっていました。オリエント急行に乗るのは、地中海に浮かぶ小さな島に住む海賊の息子で、探偵卿志望のジャック、探偵卿・マンダリンとトルコ警察の刑事・セラップ、マンダリンの1人娘のボタン、そしてパンドラの匣をパリに密輸出しようとしているトルコの犯罪組織・黒猫(アートルム・フェーレース)のジェラールとジャンダンという大富豪の双子の兄妹… 残念ながら、今回の岩崎三姉妹は留守番です。

今回は名探偵夢水清志郎と怪盗クイーンの共演。なんと挿絵も共演で、教授が担当の村田四郎さんと、怪盗クイーンのK2商会さんがお2人で挿絵を担当しています。
教授とクイーンは、季節の贈り物をする間柄だったのですね。クイーンが送ったカリブ海クルージングのお土産のお返しに教授が送ったのは、コタツやみかん、綿入れ半纏などが入った「日本の冬気分セット」。コタツを堪能するために飛行船の温度を下げてしまうなんて、いかにもクイーンらしいですし、ジョーカーやR2の怒りももっともですね。このクイーン、前半はジョーカーに怒られ、1人出て行ってもジョーカーとR2には心配してもらえず、しかも変装をあっさり見抜かれてしまうという体たらく。あまりいいところがありません。その反対に、いつもは暇さえあれば意地汚く食べている印象の教授ですが、今回はなかなかかっこいいところを見せてくれました。料理人グラハム・カーとの対決も楽しかったです。
ただ、教授とクイーンが他の面々の活躍を抑えてしまっている印象もあり、それだけは残念でした。2人がいない方が、逆にいい勝負になったのでは。探偵卿にしても黒猫にしても、本当はもっと見せ場があったはずなのに、いわば部外者の2人にすっかり場を攫われてしまったような印象。特に黒猫に雇われているヤウズ(冷酷な者)に、もう少し頑張って欲しかったところです。

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