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このページは、はやみねかおるさんの本の感想のページです。

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「徳利長屋の怪」講談社青い鳥文庫(2001年7月読了)★★★★★

「ギヤマン壷の謎」に続く、大江戸編下巻。岩崎3姉妹が長屋に住む夢水清志郎左右衛門や絵者、巧之介らを連れて江夢川へ花見に出かけてみると、そこには「怪盗九印」からの予告状が。見事殿様の食べただんごの串を盗みだした怪盗九印の事件を、教授が鮮やかに謎解きする「怪盗九印は最後に笑う」。そしてれーちが長崎から江戸に出てくる途中にあった不可思議な事件「れーちの東海道中膝栗毛」を挟んで、幕末の日本を舞台に激動の時代をくぐりぬけることになる「徳利長屋の怪」へと続きます。

夢水清志郎シリーズの第8弾。どれも楽しい話なのですが、私が一番気に入ったのは最後の「徳利長屋の怪」。幕末という時代設定を生かして、勝海舟や西郷隆盛など時の人が登場した楽しい作品となっています。それに中村巧之介の使う天真流に対向して、闇の天真流が出てくるというのもいかにも時代劇らしくていい感じ。そしてこの話には江戸城を消すという大トリックが!とは言ってもネタはとても分かりやすいのですが、それでもこういう技が入るとワクワクしてしまいます。この本も上巻である「ギヤマン壷の謎」同様、他の歴史上の人物や現代の人物などを絡めて遊び心いっぱいの楽しい作品に仕上がっています。その中でも「徳利長屋」の名前の由来には驚きました。そしてこの物語は「いつも心に好奇心(ミステリー)!」にも繋がっていきます。


「虹北恭助の冒険」講談社ノベルス(2001年7月読了)★★★★★お気に入り

野村響子は小学校5年生。(作品途中で6年生になります。)実家は虹北商店街の中にあるケーキ屋さん。一番仲の良い虹北恭助の家は、虹北商店街で一番古い虹北堂という古本屋。恭助も響子と同い年の小学校5年生なのですが、恭助は学校には行っていません。それは「行っても無駄だから」。虹北堂の本を読んでいれば学校に行かなくても必要な知識が得られるということで、恭助は1日中店の本を読んでいるのです。そんな彼の特技は、不思議な出来事を聞くだけで解決してしまうこと。人はそんな彼のことを「魔術師(マジシャン)」と呼びます。
【虹北ミステリ商店街】…虹北商店街の中にある駄菓子屋に、誰かが無断で商品を持ち込んでる?しかもその包装紙には穴が。駄菓子屋のおクマばあさんの悩みを聞いて、響子は恭助に相談します。
【心霊写真】…体育祭の写真を見ていた三好由香が、いきなり悲鳴をあげて家に帰ってしまいます。見ていた写真の中には心霊写真らしきものが…。由香と家が近い響子は、かばんを持って由香の家へ。
【透明人間】…虹北商店街に透明人間が出現?!河戸酒屋の店主が深夜ほろ酔い気分で商店街を歩いていると、数メートル先の遊歩道に黒い足跡が現れ、ぺたりぺたりと歩いていったというのです。朝になってみると、遊歩道には色とりどりのペンキの足跡と、季節を無視した様々な飾り物が。
【祈願成就】…不況打開の策として、虹北商店街ではプロモーションビデオを作ることになります。そのビデオの監督は恭助、助監督は響子。そして題材はお願いビルディング。建築途中で作業が中止された「幽霊ビルディング」でお願いごとをすると叶うと商店街では話題になっていたのです。
【卒業記念】…恭助がいなくなって3日。そんな時に、ケーキ屋のお得意さんである小学校2年生の美亜ちゃんが、雷雨の晩に鬼を目撃します。

恭助と響子ちゃんがとっても可愛いシリーズです。恭助は学校に行ってないのですが、学校の先生も周りの子供たちも、「恭助は恭助」と見守っているのが良いですね。皆が恭助という個性を大切にしています。虹北商店街は昔ながらの商店街という風情で暖かみがあり、まるで1つの大きい家族のよう。謎自体はちょっとした錯覚と利用したものが多く、それほど突飛なものではないのですが、恭助の鮮やかな解決振りは微笑ましくもお見事。色々な小道具使いや言葉遊びも面白いですね。「メヌエット賞」第1回受賞「すべてがトウフになる」や第2回受賞「コミック」などには大爆笑。「迷走するメヌエット賞」…。「数の子広告(ビラ)」というのは… もしかしてあかずの扉」なのでしょうか?!(爆笑)
はやみねさんは本業は小学校の先生で、子供たちにミステリの面白さを知ってもらうために書いてるそうです。そして今回初めての大人向けの媒体に書かれたとのこと。この作品は大人にも子供にも楽しめると思いますし、勉強以外の大切なものを思い起こさせてもくれる物語です。講談社青い鳥文庫に入っているという夢水清志郎シリーズというのも、ぜひとも読んでみたいものです。


「いつも心に好奇心(ミステリー)!」講談社青い鳥文庫(2001年7月読了)★★★★

青い鳥文庫創刊20周年特別企画により、はやみねかおる氏と松原秀行氏の競作が実現。「クイーン」「ジョーカー」「飛行船」「人工知能」という4つのキーワードを使った「名探偵・夢水清志郎シリーズ」と「パソコン通信探偵団シリーズ」が収録されています。
【「怪盗クイーンからの予告状」はやみねかおる】…国籍、性別、年齢、外見、全てが不明の「怪盗クイーン」と助手の「ジョーカー」。巨大な黒い飛行船トルバドウールで移動する彼らが次の仕事に定めたのは、倉木伶博士の開発しているという人工知能でした。日本に夢水清志郎という名探偵がいることを知った彼らは、倉木博士と夢水清志郎に挑戦するという予告状を出します。
【「パスワード電子猫事件」松原秀行】…パソコン通信で授業を進めるという塾「電子塾」の「電子探偵団」に所属する小海マコト、鳥遊飛鳥、仙崎ダイ、林葉みずき、神岡まどか。入団資格テストに合格した選りすぐりのメンバーを率いるのは、ネロこと野沢レイ。彼らは電子捜査会議の席上で、突然回文に熱中し始めます。実はまどかが預かっている電子猫AIMIAが回文を作る人工知能を持っているというのです。早速電子猫AIMIAを見に行くメンバーたち。しかし翌日まどかとみずきがAIMIAを連れて散歩に出かけた時、AIMIAが行方不明になってしまいます。

はやみねさんの作品は、「怪盗」というジュブナイルならではの存在を出してきたことで、とても楽しい作品となっています。いつもの通り、小さなエピソードの積み重ねが大きな事件へと繋がっていくという流れ。いくつか面白い小道具があったのですが、その中でも怪盗が予告状を「ど忘れ防止メモ」代わりに使ってしまうというエピソードがいいですね。さすがこのシリーズの登場人物。夢水清志郎といい勝負で、そのうち書かれるかもしれないという怪盗クイーンシリーズも楽しみです。
松原さんの作品は、これが初めて。話の流れが軽快で、回文を始め、ちょっとした言葉遊びや暗号っぽい書き込み、なぞなぞ的な謎も詰め込まれている楽しい作品。クイーンの名前の秘密は上手いですね。しかも作品中に「怪盗クイーン」の中の一部分が登場したり、その部分の挿絵は村田四郎さんが担当していたりという遊び心も嬉しいです。しかしいかんせん回文が多く、しかも少々苦しいのが多いため、その部分は読むのが少しつらかったです。
結果的に、2人ともきちんとキーワードを使ってはいるものの、はやみねさんの「クイーン」と「ジョーカー」は人名となっていますし、松原さんの「ジョーカー」も、あまり必然性がないのですね。…などと考えてしまうのは、野暮というものでしょうか。どちらも「人工知能」の盗難がメイン。そしてどちらにも影のテーマとして、人間の死についてのメッセージがこめられています。やはりはやみねさんも松原さんも子供相手の仕事をしてらっしゃるだけあって、これから先の世界の流れを色々と考えてしまうということなのでしょうか。どちらも深いものを含んでいる作品でした。


「人形は笑わない」講談社青い鳥文庫(2001年9月読了)★★★★★

岩崎3姉妹もとうとう中学3年生。今回「セ・シーマ」の伊藤真里が教授に持ってきた話は、毬音村にあるという、夜歩き回る人形の謎。その村で代々人形師をしている栗須家が建てた人形の塔では、3年前に謎めいた事件が起きていたのです。予算がゼロとなった文芸部の部費捻出のために、レーチはその村で映画の撮影をすることを決定。いつものメンバー+文芸部員は毬音村へと向かいます。

夢水清志郎シリーズの第9弾。今回は文芸部の映画撮影がメインのストーリーなので、文芸部員がかなりクローズアップされています。亜衣は部長、レーチは副部長になり、あとの部員は2年生の千秋と美琴、1年生の一ノ瀬匠。このメンバーの組み合わせがなんともいい感じです。その他のメンバーも教授と真里さんも相変わらずの味を出してますし、毬音村の東野さんが思わぬ伏兵となっていますね。
今回の話に大きく関わってくるのは、人形師が人形にこめようとした人間の心。この人形師のメッセージがなんとも切ないです。尊敬と恐れの表裏一体の心。そして人間そのものが好きだからこその行動。こうなってしまう前になんとかならなかったのかとも思うのですが…。しかし歴史に培われてしまった感情というのは、なかなかどうにもならないのでしょうね。


「怪盗クイーンはサーカスがお好き」講談社青い鳥文庫(2002年9月読了)★★★★★

飛行船トルバドゥールで世界中を旅する怪盗クイーンとパートナーのジョーカー、人工知能のRD。仕事もせず、毎日のらネコのノミ取りばかりしているクイーンに閉口したジョーカーとRDは、クイーンに仕事をするよう説得。次の仕事のターゲットと決まったのは、日本に住む星菱大造所有の赤いダイヤモンド「リンデンの薔薇」でした。これは実は、26年前にエジプトのカイロ美術館から盗み出された「ネフェルティティの微笑み」。クイーンは早速星菱大造と警察、そしてマスコミ各社に予告状を流します。しかし当日、クイーンの目の前で開けられた金庫からは、「リンデンの薔薇」は消え失せていました。しかもそこには、クイーンがいつも犯行現場に残していくカードとそっくり同じ物が置かれていたのです。

「いつも心に好奇心(ミステリー)!」に初登場した怪盗クイーンが主人公の新シリーズ。このクイーンは、明らかに「徳利長屋の怪」にも登場した怪盗九印の子孫だと思われます。さらに物語には、旅と料理の雑誌「セ・シーマ」の編集者・伊藤真里、上越警部、岩清水刑事も登場して活躍。
ミステリの楽しみは、もちろん名探偵が謎を解き明かすことにあるのですが、その一方で、怪盗ルパンのような怪盗の華麗な活躍というのも捨てがたいもの。怪盗主体の物語では、正義の味方の地位が逆転し、警察や名探偵は怪盗の単なる引き立て役。しかし怪盗とは言っても泥棒には変わりありません。その場合、一番のポイントとなるのが「怪盗の美学」でしょうか。独自の美学をきっちりと守り、しかも魅力的な怪盗は華麗な存在となります。このクイーンもパートナーのジョーカーも、外見はもちろんのこと、頭の回転の速さや会話、そして愛嬌など、怪盗の資質は十分です。こちらの物語は、トリックを重視する夢水清志郎のシリーズとは少し違い、スリルとサスペンスのスピード感が前面に出たもの。また違った魅力が楽しめます。楽しい物語の中で、戦争の影についても触れられているのが、エンディングと共に物語を引き締めているようです。

ちなみにあとがきにある怪盗は… 怪盗ルパン(モーリス・ルブラン)、ルパン三世(モンキー・パンチ)、怪盗ルビィ・マーチンスン(ヘンリィ・スレッサー)、怪盗ニック・ベルベット(エドワード・D・ホック)、怪盗ジバコ(北杜夫)、二十面相(江戸川乱歩)、オヨヨ大統領(小林信彦)、妖盗S79号(泡坂妻夫)、怪盗紳士(飛鳥幸子 )、怪盗キッド(青山剛昌・名探偵コナン)、怪盗シュガー(さいとう・たかを)、怪盗アマリリス(和田慎二)、怪盗道化師(はやみねかおるデビュー作)、怪盗鶴の007号(こち亀)ですね。
怪盗聖者と怪盗ルーズルーズが分かりませんでした。どなたかご存知の方は教えて下さい!


「『ミステリーの館』へ、ようこそ」講談社青い鳥文庫(2002年9月読了)★★★★★

岩崎3姉妹と教授、レーチ、そして伊藤真里は、20年ほど前に引退したという名マジシャン・グレート天野の作ったテーマパーク「ミステリーの館」へ。そこのマジックコーナーで、「本物のミステリーの館」への鍵を手に入れた6人は、迎えに来たリムジンに乗ってグレート天野の待つミステリの館へ。そしてN大学の民俗学研究室にいる井上快人、その恋人で霊能力のある川村春奈、ソフト開発会社・ダビデの矢口淳子、彼女に呼ばれた上越警部と岩清水刑事に出会います。そしてグレート天野の元には、幻夢王と名乗る人物からの挑戦状が。

夢水清志郎シリーズの第10弾は、なんと初の袋とじ。しかも二重の袋とじ!凄いですね。最初の袋とじは、ここから物語が本格的に始まるぞという区切り程度の物で、本当に袋とじらしい袋とじは後の方のだけなのですが、それでもそれぞれの袋とじの前には謎かけがあります。自分で答えを考えて、実際に切り開いてそれを確かめる、という行為自体にわくわくしてしまいますね。最初の謎は簡単。次の謎は少々難し目。しかし思わぬ所に伏線がきちんとありました。こんな風に袋とじに出会えるとは、今時の子供が羨ましくなってしまいます。そうして自分でも気づかないうちに、赤い夢の住人になっていくのですね。
シリーズでお馴染みのキャラクターも相変わらずで、その会話だけでも十分楽しめます。亜衣とレーチの進展度はあまりはかばかしくないようですが… 2人きりの会話で、本題に近づくと突然に2段抜きになって、2人の心中が同時に分かるようになっているなど、工夫がこらされているのがまた楽しいです。


「虹北恭助の新冒険」講談社ノベルス(2002年12月読了)★★★

【夜間飛行】…野村響子も中学1年生。恭助は相変わらずの不在。2週間ほど前に、S市の小学校で掃除をしていた1年生の女の子が屋上から落ちた事件があり、響子はその事件の記事を持ち歩いていました。屋上には外側から鍵がかけてあり、校舎の出入り口も施錠されていたのです。
【外伝の一 おれたちビッグなエンターテインメント】…カメラ屋「大怪獣」の若旦那。燃える一介の映画人である彼は、イラストレーターの宮崎くんとFADE INのマスターに上映会を開こうという提案をします。そして虹北キネマで、彼ら3人組の名作は幻の作品「妖」と一緒に上映されることに。

「夜間飛行」は、久々の恭助登場です。S市で起きた事件、若旦那たちのプロモーションビデオ撮影というそれぞれのエピソードが、意外な繋がりを見せるのには驚きました。ちょっとした伏線の使い方が上手いですね。久しぶりの恭助も相変わらずで、最後はほのぼのとする結末となっています。後書きではやみねさんご自身も書いてらっしゃいますが、やまさきもへじ氏によるアメコミ風の挿絵は最高。「外伝」の方も、ぜひともそれで見たかったのですが、残念。こちらは、ひたすら若旦那のキャラクター物です。一応トリックもあるのですが、果たして実現可能なのかどうかは… 謎です。


「虹北恭助の新・新冒険」講談社ノベルス(2002年9月読了)★★★

【春色幻想】…同級生の久留美と鉄也の結婚式の夢をみた響子。この2人は本当にカップルなのですが、大人しくて目立たない久留美と暴れん坊の鉄也の組み合わせを、響子は不思議に思っていました。
【殺鯉事件】…喫茶店「FADE IN」のマスター・青谷とバイトの由美子が結婚することになり、若旦那たちが8ミリビデオを撮影することに。しかし登場予定の鯉が殺されて発見されるという事件が。
【聖降誕祭】…マスターと由美子の結婚式で上映するビデオを撮影中で、若旦那は宮本スポーツ店の主人・宮本秀也に車椅子を借ります。撮影後、響子は宮本と一緒に虹北堂、そして病院のお見舞いへ。

「虹北恭助の新冒険」と同時に刊行された1冊。
「春色幻想」は、日常の謎。同じ事柄でも、見る角度によって、まるで違う姿が見えてくるという物語。ルビンの壷の「盃と顔図形」の挿絵があるともっと分かりやすいと思うのですが。「殺鯉事件」この中では一番本格的な謎解き要素の強い物語。殺されるのは鯉なのですが、この本の中にあるとそれでも十分猟奇的に見えてきます。「カンキリサイクル」には笑いました。「聖降誕祭」読み終わった時、心が温かくなる物語。雪の上の足跡についての真相がとても良かったです。
このシリーズが始まった時は小学生だった響子と恭助も、もう中学生なのですね。「春色幻想」では中2、「殺鯉事件」では中3。3作とも結婚という言葉が大前提になっているせいか、読後感がとても柔らかく、幸せな気持ちになれました。そして今回、目の不自由な泉子さんと、車椅子を使っている宮本さんという身体にハンディのある2人が登場し、仕事中の盲導犬の話など、普段接点がないと分からないことを教えてくれるのがいいですね。身体のハンディだけでなく、心のハンディについても。


「怪盗クイーンの優雅な休暇」講談社青い鳥文庫(2003年9月読了)★★★★

怪盗クイーンの元に届いたのは、サッチモ・ウィルソンからの招待状。豪華客船・ロイヤルサッチモ号の処女航海が決まり、怪盗クイーンは12日間のカリブ海クルージングに招待されたのです。サッチモ・コレクションと呼ばれる宝石のコレクションも用意されてると聞いたクイーンは、早速ジョーカーを連れてニューヨークへ。しかしロイヤルサッチモ号では、10年前にも宝石を盗んでいったクイーンを根深く恨んでいるサッチモを始めとして、同じく10年前にクイーンによって壊滅状態にさせられた伝説の暗殺集団・初楼(ういろう)の7人、ICPOの探偵卿の1人・ジオット・メイズ・ウインドミルとその秘書の冥美などが、クイーンを待ち受けていました。クイーンとジョーカーは、アンジェリク・フォン・ペリゴール伯爵夫人と弟のジルとして、船に乗り込むことに。

怪盗クイーンシリーズの第2弾。
今までにない分厚い1冊なのですが、長い物語の中にバランスよく初楼との対決が織り込まれ、テンポの良い展開と対決のバリエーションは長さを感じさせません。茶魔との対決も笑えるのですが、ズキアとのポーカー勝負がなんとも鮮やかでいいですね。クイーンとジョーカー、そして人工知能のRDとのかけあい漫才もとても面白いですし、ジョーカーとイルマ姫もなかなかいいコンビ。焦るイルマ姫をたしなめるジョーカーの苦しい説明ぶりも面白いですし、クイーンによる怪盗講座も楽しいです。そして彼らの会話の中から、ジョーカーの過去も明かされます。
一応ジュブナイルなのですが、大人ならではの楽しめる場面も満載。特にイルマとジョーカーの最後のシーンを読むと、やはり子供向けだけの本ではないのだと思えます。同じシーンを読んでも、やはりこの映画を観ている人と観ていない人とでは、感じる余韻も違ってくるはずですよね。
本の最後には「読了認定証」が!この遊び心もいいですね。ただ、最初の食事の場面、本文にはダイヤモンドと書いてあるのですが、挿絵はどう見ても真珠…(笑)


「あやかし修学旅行-鵺のなく夜」講談社青い鳥文庫(2003年9月読了)★★★★

中学3年生の最大イベントは修学旅行!岩崎3姉妹とレーチの通う虹北学園の今年の修学旅行の行き先はO県T市。ここの学校では、毎年生徒たちの希望を元に修学旅行実行委員会を中心に話し合いが持たれ、3年の始業式の日に行き先が貼り出されることになっているのです。O県T市は、「龍神殺人事件」や「鵺伝説」、「持ち帰るなの石」など不思議な伝説の宝庫。宿泊も星降り荘と決まり、表の日程表・裏の日程表共に着々と決定、生徒たちの気分も盛り上がりを見せ始めます。しかし修学旅行気分一色の学校に、「修学旅行を中止せよ 鵺」という手紙が届くのです。この脅迫状とも言える手紙が届いたことから、教授こと名探偵・夢水清志郎も修学旅行に同行することに。校長が急性盲腸炎で入院したことで、教授は校長代理となってしまいます。

夢水清志郎シリーズの第11弾。副題が「鵺のなく夜」ですし、行き先も誂えたようにO県なのですが、特に横溝正史風というわけではありません。どちらかといえば、学園物の楽しい修学旅行の物語。大きな謎こそ登場しないのですが、しかし修学旅行先の土地に残るいくつかの伝説を始めとして、小さな謎がいっぱい。最後の謎の真相の解明もロジカルでいいですね。
途中で挟まれた「修学旅行のしおり」のバス座席表に、どこかで見たことのある名前がちらほらとあって笑えますし、旅先の旅館の女将さんの名前にもニヤリ。修学旅行中の真夜中のイベント、肝試しのや枕投げの場面もとても楽しかったですし、虹北学園に通う生徒たちが羨ましくなってしまいます。でもバナナがおやつかデザートかの論争に対する回答の肝心な部分が、亜衣のこぼれたインクで読めなくなっていて残念。やはりこれは、これからも永遠の論争であり続けるのですね。

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