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このページは、はやみねかおるさんの本の感想のページです。

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「都会のトム&ソーヤ」4 講談社YA!ENTERTAINMENT(2006年7月読了)★★★

【大脱走 THE GREAT ESCAPE】…幕井涼太、金田竜二、中山明は3人揃って映画好き。しかし町のタウン誌「ぷあ」の自主制作映画コンテストの締め切りはその日の2時。内藤内人と竜王創也はマラソン大会を抜け出して八ミリビデオを届けることに。
【番外編 栗井栄太は夢をみる。】…突然の交通事故で、6歳の時に両親を失ったジュリアス・ワーナー。そのジュリアスを神宮寺直人、鷲尾麗亜、柳川博行がスカウトにやって来ます。
【深窓の令嬢の真相】…究極のゲームを作るための資金作りに、内人と創也は堀越美晴の父の番組に出演。オバケ屋敷探検の舞台となる斑屋敷は、内人が塾の行き帰りに眺めていた洋館でした。
【おまけ 保育士への道 THE WAY OF THE "HOIKUSHI"】…夕食の終わった卓也は保育士拳の練習のために夜の公園へと向かいます。

「都会のトム&ソーヤ」第4弾。副題は、「四重奏(カルテット)」。今回も前回同様、ショートショートをはさんで中編2作が収められています。
相変わらずのテンポの良さが楽しいシリーズ。「深窓の令嬢の真相」の方も、いかにもこのシリーズらしい展開ですが、今回は内人と創也がマラソン大会を脱走する「大脱走」が、ごく日常的な中学校生活にいかにもあり得そうな感じに物語に馴染んでいて、とても面白かったです。ただ、前回はショートショートを挟んだ中編同士が繋がって1つの長編になっていたように思うのですが、今回はそれぞれに独立した短編となっていたのが少し残念。そろそろ読み応えのある長編作品を読みたい頃です。
それにしても、「トム」と「内人」の関係には驚きました。そして卓也の上司の黒川さんが今川寮の住人だったというのもまるで気付きませんでした。しかし作者のはやみねさんご自身が気付いてらっしゃらなかったというのは本当でしょうか!


「都会のトム&ソーヤ」5 上下 講談社YA!ENTERTAINMENT(2009年4月読了)★★★★

栗井栄太が内人と創也に誘いをかけてきます。「IN 塀戸(INVADE)」が完成し、そのお披露目が次の三連休にN県の今は廃村となっている塀戸村で行われることになったのです。創也は卓也が付いて来ないように細工し、内人と2人で塀戸村へ。参加者は栗井栄太、塀戸村のただ1人の住人・水上亜久亜、ジャパンテレビの堀越隆文とその娘の美晴、80歳ぐらいの老人・金田昭之助、そして自称冒険家の森脇誠でした。

「都会のトム&ソーヤ」第5弾。副題は、「IN 塀戸(VADE)」。今回は久しぶりの長編。連作短編が続いて、4巻ではかなりトーンダウンしている印象があったのですが、今回は久々にパワー全開。
山の中でのサバイバル、暗号の解き方のような正統派の楽しみもあるのですが、ジャパン・テレビの堀越ディレクターの26人の部下はA(アー)からZ(ツェット)まで名前が付いていて、中でもコンピューターを専門に扱うのがI(イー)、B(ベー)、M(エム)の3人だとか、ジュリアスのコンピュータの名前が「春」さんだとか、「金銀パールプレゼント」、「バナナはおやつに入ります」などもむしろ大人向けの小ネタですね。ということで、後半やや失速したように感じられてしまったものの、全体的にはとても楽しく読めました。印象に残ったのは、創也の「ゲームは、のめりこんでプレイするほうが楽しいじゃないか」という言葉。これはゲーム以外のことにも通じますね。何事でも、自分も積極的に参加する気持ちがなければ楽しさも半減。
そして今回、内人と創也のお父さんが登場するオマケ付き。そしておまけのおまけの物語に登場する真田志穂というのは、もしや彼女なのでしょうか…?


「都会のトム&ソーヤ」6 講談社YA!ENTERTAINMENT(2009年4月読了)★★★

とうとう創也の「第六の(シックスス)ゲーム」が始動することになり、内人は創也の家に招かれます。咄嗟に断る内人でしたが、堀越美晴も来ると聞いて態度を翻す内人。内人が創也の家に行くのは今回が初めて。内人は創也のリクエスト通り、小学校時代にお年玉をためて買った「おにぎり王子の大冒険」のゲームソフトを持って、卓也の運転する車に乗って家に向かいます。

「都会のトム&ソーヤ」第6弾。副題は「ぼくの家へおいで」。ということで、今回は家の中でのサバイバルが中心。
今回も面白いのですが、前回の「嵐の山荘」上下巻に比べると、やはり家の中とその周辺が舞台ということで、やや迫力不足な気もします。こじんまりとまとまってしまっているという印象。本来はその方が内人と創也の2人のキャラクターには合っているはずなのですが…。読者は欲張りですね。


「卒業-開かずの教室を開けるとき」講談社青い鳥文庫(2009年3月読了)★★★★

サクセス塾の事件から4ヶ月ほど経ち、中3の亜衣たちが受験勉強に本腰を入れた3学期のある日のこと。謝恩会の実行委員長に任命されたレーチは謝恩会の会場探し中。無料で使えて多少の騒いでも大丈夫だという場所がなかなか見つからないのです。そんな時、2年の片桐弟が提案したのは、3学期が終われば取り壊される予定の旧校舎。取り壊されるのが決まっているだけにドンチャン騒ぎには最適なのではないかという話にレーチはすっかりその気になり、亜衣・ 真衣・美衣と共に旧校舎へ。しかしその旧校舎には、40年前に「夢見」によって「夢喰い」が封印された開かずの教室があるのです...。

夢水清志郎シリーズ最終巻。15年書き続けたというこのシリーズも亜衣たちの中学卒業と同時にシリーズからも卒業となります。
卒業というのは、それぞれがそれぞれの選択をしなければならない時期。その選択が正しかったかどうかはすぐには分かりませんし、それからの長い人生で、あの時選択を間違た、と思うこともあるかもしれません。しかしその時その時に自分にできる最善の選択をしていれば、後々後悔することだけはないですよね。亜衣も真衣も美衣もレーチも、それぞれの旅立ちの時期を迎えています。自分自身で決めた道だからこそ、おそらくこれから先、後悔などせず真っ直ぐ進んでいけるのではないでしょうか。そして今回一番印象に残ったのは、亜衣と出版社の人の会話。これは本当にその通りですね。亜衣には急がず、時には回り道をしながらでも、様々なことを吸収して素敵な人間に成長していって欲しいです。その時に夢が叶えば、それが最高のプレゼントとなるのですから。
この作品はシリーズ最終巻に相応しく、とても素敵な物語となっています。楽しいシリーズ物はいつまでも続いて欲しいと思ったりもしますが、このようにきちんと区切りがついてみると、やはり卒業するというのもいいものだなと思いますね。

P.138「密室を解くとき、大切なのは、密室にする方法じゃない。どうして密室にしなければいけなかったのかという動機なんだ。」
P.208「名探偵は知ってるのかしら?名探偵が動くから、事件はおきるんだってことーー」
P.208「彼に教えてあげてね。名探偵がいなければ、不思議な事件はおこらないのよって。」
P.254「現実的じゃないから、夢なんです。その夢を見られるから、子どもなんですよ。」
P.347「すてられないのがほんとうの夢。すてられるのは、夢ではなく憧れ。」

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