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このページは、ライマン・フランク・ボームの本の感想のページです。

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「魔法がいっぱい!」ハヤカワ文庫FT(2006年3月読了)★★★

【モーの<美しが谷>の巻】…<モーの谷>のご紹介。
【王さまの首の不思議な冒険の巻】…一番美味しいチョコレート・キャラメルをいつも丁度熟れ時に食べてしまうムラサキ・ドラゴンに、<モーの谷>の王様は戦いを仕掛けるのですが…。
【ノラ犬と王さまの堪忍袋の巻】… 山の麓の茂みにクロイチゴの実を探しに出掛けた王さまは、そこで小さな犬に出会います。王さまが犬を見るのは初めてでした。
【フルーツケーキ島の腹痛の巻】…父親である王さまが決して死なないので、いつまで経っても王さまになれないジンロク王子。王さまを深い穴の中に突き落とします。
【王さまの誕生祝いの巻】…年に3度の王さまの誕生日には、盛大な祝宴が催されます。その日は祝い後で、皆が<クリスタル湖>でスケートをすることになるのですが…。
【ニガムシ王と鋳鉄怪人の巻】…<モーの谷>から山を隔てて北に住むニガムシ王は、モーの王さまやその国民を憎んでおり、鋳鉄で大男を作ってモーの国を目茶目茶にさせようと企みます。
【ティムトムとパイケーキ姫の巻】…お姫さまの中でも飛びぬけて美しい、しかし癇癪持ちのパイケーキ姫に恋をしたのは、ティムトムという若者。魔女のメッタに助けてもらうことに。
【ヨーキナ王子の勇気の巻】…<モーの谷>の遥か東の荒地の洞窟に閉じ込められている、大きいギーガブーという怪物が、洞窟の壁を壊して歩き出し、<モーの谷>に踏み込んで来ます。
【魔法使いとトルエラ姫の巻】…<モーの谷>の東の山のルビーの洞窟に住んでいる<意地悪な魔法使い>。いつも背が低いのを笑われるので、背が高くなる魔法の薬を作ろうとするのですが…。
【パントバタ公爵夫人、アベコベ国への巻】…王さまの47番目のいとこのパントバタ公爵夫人は、いつものように河遊びをしている時につい眠り込み、ボートが流されてしまいます。
【キーキコ王子と巨人の巻】 …末っ子のキーキコ王子は、広い世間を見るために、バイオリンを持ち、自転車に乗って<モーの谷>から旅立ち、巨人のオオワライに出会います。
【サル人間の国の巻】 …自分の背丈の倍もある大きな凧を作ったジンロク王子は、凧揚げをしているうちに凧に引っ張られ、サル人間の国へ飛ばされて行ってしまいます。
【ぬすまれたプラム・プディングの巻】 …王さまの畑のプラム・プディングが盗まれ続け、王さまはお抱えの博士たちに3日以内に泥棒を捕まえるように命令します。
【ムラサキ・ドラゴン退治の巻】…ムラサキ・ドラゴンを退治するために、博士や国中の王侯貴族、犬、そして智恵者のロバが集まって作戦会議を開きます。(「THE MAGICAL MONARCH OF MO」佐藤高子訳)

「オズの魔法使い」のシリーズで有名なライマン・フランク・ボームの処女作。14編の短編が収められた連作短編集です。このうち「王様の首の不思議な冒険の巻」と「ムラサキ・ドラゴン退治の巻」は、アンソロジー「ビバ!ドラゴン」にて既読。そちらを読んだ時に、まるでオズの国の延長にいるような可愛らしいおとぎ話だと思っていたら、実際にこのモーの国はオズの国に繋がっているのだそうです。「フルーツケーキ島の腹痛」に登場する<知恵者のロバ>は、「オズのつぎはぎ娘」に登場するリコウなロバですし、「ぬすまれたプラム・プディング」に登場する黄色いニワトリは、「オズのオズマ姫」にも登場。「ニガムシ王と鋳鉄怪人」のニガムシ王もノーム王のようですし、鋳鉄怪人もまるでチクタク。そしてオズの国の南東の隅、マンチキン国とカドリング国の死の砂漠を越えたところにモーの<美しが谷>があるのだそうです。しかしオズが外界から切り離されてしまったため、ロバはマンチキンの国に行ったっきりになってしまったようですね。
モーの国は、太陽は沈むことなくいつも照っていて、その光は香水の香り。必要なものは何でも木に生っているので、お金は必要ありません。この谷に住んでいる人は誰も死ぬことがなく、いつも若々しくて美しい容姿をしています。そしてその国は何と様々なお菓子から出来ているのです。「<モーの国>には二筋の河があり、その一つにはとても濃い牛乳が流れています。このミルク・リヴァーの中には島がいくつかありますが、なかにとびきり上等のチーズできている島があり、人々はいつでも食べたいと思うときにシャベルですくっていいことになっています。流れがゆるやかな岸辺の淵には、舌もとろけるようなクリームが牛乳の面てに盛り上がっており、睡蓮のかわりにイチゴの大きな葉が浮かんでいて、よく熟れた赤いイチゴが鼻先をクリームの中にトップリとつっこんでいるさまは、さあここへ来て召し上がれといわんばかりです。河岸を形づくっている砂は、まじりけなしの白砂糖。藪の中にはありとあらゆるキャンディやボンボンが鈴生りで、だれでも気軽に摘み取ることができます。」…これだけの描写でも子供たちは夢中になってしまうのではないでしょうか。この他にも美味しそうな描写がたっぷり。こういう作品は子供の頃に読みたかったです。大人になってから読んでも可愛らしくはあるのですが、それだけでは少し物足りなく感じられてしまうのが残念でした。
首を挿げ替えるお姫さまの話はオズのシリーズにもありましたが、王子さまの全身バラバラに切られてしまったり、博士たちが肉挽き機にかけられてしまうというのは、オズシリーズではなかなか見られないようなシーンですね。それでも年代が古い作品のせいか、まるでグロテスクに感じられないのです。それどころか上品なユーモアに見えてしまうのが、この作品の大きな魅力なのでしょうね。

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