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このページは、クリスチアナ・ブランドの本の感想のページです。

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「招かれざる客たちのビュッフェ」創元推理文庫(2004年4月読了)★★★

第一部コックリル・カクテル
【事件のあとに】
…老刑事がコックリル警部に語った「オセロー事件」。芝居がはねた後、女優のグレンダ・クロイが楽屋で絞殺され、夫であるジェイムズ・ドラゴンが容疑者となることに。
【血兄弟】…一卵性双生児のフレッドと「おれ」は、何から何まで瓜二つの仲睦まじい兄弟。しかしフレッドから「おれ」がリディアを奪った時から、その仲の良さは崩壊し始めるのです。
【婚姻飛翔】…横暴な富豪・サイラス・キャクストンの妻が亡くなり、その看護婦をしていたエリザベスがサイラスと結婚することに。しかしその結婚式のパーティの席上で、サイラスが苦しみ始め…。
【カップの中の毒】…モルヒネを致死量飲んだとステラを訪れたのは、病院の看護婦のアン・ケリー。彼女はステラの夫・リチャード・ハリソン医師の子を妊娠していると話します。
二部アントレ
【ジェミニー・クリケット事件】
…ジャイルズ・カーベリーはある老人にジェミニー・クリケット事件のことを語ります。弁護士のジェミニーは、密室状態の自分の事務所の中で殺されていたのです。
【スケープゴート】…13年前の地元の病院の定礎式で、有名な奇術師・ミスター・ミステリオーゾの代わりに付き人のトムが死んだ事件について、徹底的に話し合うために関係者8人が再び集まります。
【もう山査子摘みもおしまい】…ボーヨーとグウェニーは2人で洞窟へ。しかしその後、2人が川に遊びに行ってみると、ボーヨーの姉のミーガンが腹ばいになって水に顔をつけていたのです。
第三部口なおしの一品
【スコットランドの姪】
…レディ・ブラチェットの家政婦・グラディスから生活ぶりを聞き出したエドガーと、その家の真向かいにある病院のドクター・フェイブルに取り入ったパッツィーの目的は。
第四部プチ・フール
【ジャケット】
…妻のエルサを殺害することを考えていた三流小説家のジェラルド・フレッチャー=ストアは、わざと指に傷をつけ、アリバイ工作のために女性のタイピストを雇うことに。
【メリーゴーラウンド】…夫のハロルド・ハートリイ氏を病気で失ったルイーザを訪れたのは、ビンデル氏。ハロルドが残したというポルノ写真のコレクションを持参していたのです。
【目撃】…アラブの族長ホラー・ホラーの乗るロールスロイスの座席に、粗野な感じの男が座っているのを見たミセス・ドリンダ・ジョーンズ。そしてホラー・ホラーが刺殺されているのが発見されます。
【バルコニーからの眺め】…太りすぎて夫の愛を失ったミセス・ジェニングスは、夫の浮気を知り、本気でダイエットを始めます。その一部始終を向いの家のバルコニーに座った老婆が見ていました。
第五部ブラック・コーヒー
【この家に祝福あれ】
…霧雨の中、家の軒先にいたのは、若い男女。お金はあるが、赤ん坊が生まれるため部屋を貸してもらえないという彼らに、ミセス・ボーンは納屋を貸すことに。
【ごくふつうの男】…その家を訪ねてきたのは、ごく普通の男。子供の頃、その家に住んでいたことがあるという男を家にあげてしまった彼女は…
【囁き】…16歳のダフィ・ジョーンズは、従兄のサイモンにせがんでいかがわしいブルー・バーに連れて行ってもらうのですが、そこで乱暴された挙句、乱暴したのはサイモンだと両親に言いつけます。
【神の御業】…ビル・エバンズ巡査の目の前で、娘と幼い孫を轢き殺した男は、なぜかその男を庇います。目撃者の証言はまちまちで、結論は事故死。しかし再び事故が起き…。
(「BUFFET FOR UNWELCOME GUESTS」深町真理子他訳)

短編集。凝った構成が一見お洒落な印象なのですが、その中身は皮肉と悪意がたっぷり。ブラック風味で胸焼けしてしまいそうな作品が並んでいます。ラストまで二転三転、そしてラストの強烈なインパクトの一行。凄いですね。ちょっとした小道具の使い方や伏線の巧さには驚きましたが、私の場合、基本的にあまり毒が強い作品は好きではないので、「上手いのは良く分かるのだけれど、好みとはまた別問題」といった状態でした。作者のスタンスは、どちらかといえば、正義側よりも犯人側に重点を置いているように感じられます。
私がこの中で特に好きなのは、一番毒が薄めの「スコットランドの姪」。コミカルな作品です。まさに「口なおしの一品」となっていますね。そして「目撃」のミセス・ドリンダ・ジョーンズの存在もほのぼのとしていて好き。後は、「事件のあとに」の舞台俳優ならではの思考と行動が面白かったです。
そしてここに収められている「ジェミニー・クリケット事件」は、イギリス版。テイストの少し違うアメリカ版が、北村薫さんの「北村薫の本格ミステリ・ライブラリー」に収められていますので、比べて読んでみるのも良いかと。北村薫さんはアメリカ版の方がお好きだと書いてらっしゃいましたが、私はこちらのラストの方がインパクトが強くて好きです。

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