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このページは、おーなり由子さんの本の感想のページです。

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「しあわせな葉っぱ」新潮文庫(2004年12月読了)★★★★

ある朝気がついてみたら、頭のてっぺんに芽が出ていた女の子。見ていると葉っぱがまるでリボンのようで、どこかくすぐったい嬉しい気持ちに。しかし友達の反応を楽しみに学校に行くのですが、その葉っぱは誰にも見えないようなのです。冗談だと笑われてしまった女の子はがっかり。葉っぱを抜いてしまおうとします。しかしその葉っぱは後から後から生えてきて…。

おーなり由子さんの文章と絵で、10分ぐらいで読めてしまう絵本のような1冊です。女の子が、葉っぱを見てウキウキしたり、しょんばりとしたりする姿が可愛いのです。自分がこの年齢だった頃のことを思い出して懐かしくなってしまいます。ほんのり暖かくなったり、ほのぼのとしたり。心がちょっぴり疲れている時にもぴったりです。


「きれいな色とことば」新潮文庫(2002年7月読了)★★★★★お気に入り

ふんわりとした雰囲気につつまれている、おーなりさんのエッセイ集。子供の頃から今に至るまでの、色にまつわる様々なエピソードや詩が、透明感のあるイラストと一緒におさめられています。

読んでいると、どこか懐かしい気持ちになったり、「あ、私も!」という感覚でいっぱいになります。例えば、炭酸が苦手なくせにサイダーが好きなこととか… 口の中に泡がピリピリと当たるのが痛くて飲めないのに、あまりに綺麗なので飽きずに見てしまう。あけたがるくせに少しずつしか飲めないので、とうとう頬をリスのようにふくらませて飲むようになる… これはもう私もまるで一緒です。そんな風に読みながらシンクロしてしまう場面がとても多く、読んでいて嬉しくなってしまうほど。色や匂いが、突然ある特定の過去の場面を呼び起こすことがありますが、私にとってはこの本自体がそんな感じでした。慌しい毎日を送っているとつい忘れがちなことを、優しい笑顔で差し出されたような感じ。そしておーなりさんの感性にとっぷりと浸かっていると、毎日見ている情景からまた全く違う色合いを見つけられそうな、そんな新鮮な気持ちにもなれます。
この中で一番好きな話は、「夕やけ青やけ」。青版の夕焼けの話です。夕方前の「すっごいすっごい透明な青色」の空、「自分が青い明るい光の底にいるみたい」な気分になってしまうほどの青い空、胸の中まで青くなってしまうような青い空、ぜひ一度見てみたいです。もちろん毎日の「梅シロップの紅茶のような」色の夕焼けも大好きなのですが、こんな風に色を体中で体感してみたいものです。
あと印象的だったのは、「水のようなひと」。私はどれに当てはまるんだろう、あの友達は何に当てはまるんだろう… なんて考えながら読むのもまた楽しくて。でも人のことはよく分かるのに、自分のこととなるとあまり分からないですね。おそらく葉をさざめかせることはあっても真ん中はしっかり立っている「木」か、独りでいるのが好きなのに時々寂しがりになる「風」かと思うのですが…。

P.25「せつなさは、かなしみより、すこしあたたかい」


「モーラと私」新潮社(2004年5月読了)★★★★★

ある日気がついてみたら、ポケットの中に入っていたモーラ。最初は小さくて、わたしの指をちゅうちゅう吸っていたモーラも、ミルクやごはんをあげるごとにぐんぐん大きくなっていきます。大人には見えないモーラと私の物語です。

とても短い物語の中に、優しくて暖かいものがいっぱい詰まっています。友達があまりいなくて、時々男の子にいじめられている「わたし」、お父さんとお母さんの喧嘩を見て悲しくなってしまう「わたし」の一番の友達であり、拠り所となっているのがモーラ。1人ぼっちで寂しい時にモーラに救いを求めている「わたし」の姿には、とても切なくなってしまうのですが、それでもただモーラに逃げ込んでいるのではなく、大切な仲間として時間を共有しています。そして周囲の環境が徐々に変わり、大人になっても、もっと年をとっていっても、やっぱりモーラと仲良しだというのが嬉しいところですね。モーラのような存在を子供時代の夢として片付けてしまう物語も多いですが、本当に大切なものは、決して忘れることはないはずですから。
おーなりさんご自身によるイラストもとても綺麗。特に「夜のむこうにある あかるい みどりの野原」に行くシーンが一番好き。夜の深い蒼色が美しいです。


「ひらがな暦-三六六日の絵ことば歳時記」新潮社(2004年5月読了)★★★★★

「三六六日の絵ことば歳時記」という副題通り、1年366日の1日ごとに1ページ、その日が何の日なのか、その日に各地で執り行われるお祭や行事、その季節ならではのお料理のレシピ、身近な草花や鳥や虫のこと、星座のこと、そしてそういう事柄からおーなり由子さんが思い出すエピソードなどを、優しいイラストを交えて書き綴っていった本。

タイトルを「ひらがな暦」としたのは、歳時記や暦に詳しくない人でも楽しめる、ひらがなのようにやさしい本にしたいからだとあとがきにありましたが、本当にその通りの本になっていると思います。とても可愛いらしい本。しかしこういった本は、本来ならば一度に全部通して読むなどせずに、その日その日に毎日少しずつ読むのが向いてるのでしょうね。私は図書館で借りてしまったので、結局通して読んでしまったのですが、手元に置いておいて毎朝ページを繰ってみるというのが本来あるべき読み方のような気がします。そしてこういった本を読むと、四季折々の美しい日本に生まれたことが嬉しくなります。
この本を読んだ1月21日は大寒。「一年中で一番、寒い日。」。

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