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このページは、稲垣足穂さんの本の感想のページです。

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「一千一秒物語」新潮文庫(2005年11月読了)★★★★
稲垣足穂の作品9編が収められた1冊。

やはり一番印象に残るのは、表題作の「一千一秒物語」。大正時代に書かれてるはずなのに、どれを読んでもなぜこれほど違和感がないのだろう… とびっくりしてしまうほど。レトロな雰囲気を持ちつつ、すごくモダンなのです。この「一千一秒物語」に、たむらしげるさんがイラストをつけた絵本もあり、物語の雰囲気にたむらしげるさんの青を基調とした絵がとても良く似合っていて、そちらもとても素敵です。そしてアラビアンナイト風の「黄漠奇聞」もいいですね。煌びやかで、天上の星の巡りと魔術的な雰囲気が何とも好きです。最後に登場する「ダンセーニ大尉」とは、ロード・ダンセイニのことなのでしょうか。ちなみに稲垣足穂とロード・ダンセイニは、同じ日に亡くなったのだそうです。「チョコレット」は、アイルランドの妖精譚を思わせるファンタジー。まるで「一千一秒物語」の中の1編のよう。「星を売る店」のファンタジックな情景もとても綺麗です。長野まゆみさんも、おそらく稲垣足穂さんの影響を受けてらっしゃるのでしょうね。共通するモチーフが色々と見られます。
しかし後半の作品は、前半に比べると自伝的で、どこか重い雰囲気となるのですね。足穂らしいモチーフは見られるものの、極貧生活を送っていた足穂自身の姿も垣間見えますし、文章も難解になります。そして同性愛的傾向も濃くなります。前半の作品群との間には、酒や煙草の中毒で断筆していた期間があったようですね。私としては、前半のおとぎ話風の作品の方が断然好みです。

収録作品:「一千一秒物語」(1923.1)、「黄漠奇聞」(1923.2)、「チョコレット」(1922.2)、「天体嗜好症」(1926.4)、「星を売る店」(1923.7)、「弥勒」(1940.11)、「彼等」(1946.7)、「美のはかなさ」(1952.8)、「A感覚とV感覚」(1954.7-9)


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