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このページは、山田正紀さんの本の感想のページです。

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「女囮捜査官-触姦」徳間ノベルス(2003年12月読了)★★★★
警視庁科学捜査研究所特別被害者部に所属する囮捜査官・北見志穂。幼い頃から男性に特別な目で見られやすかった志穂は、大学を卒業すると同時に、科学捜査研究所特別被害者部に所属する囮捜査官となり、品川駅のトイレで起きた通り魔殺人事件の捜査のために捜査本部に参加します。駅の女子トイレで見つかった女性の絞殺死体からは、スカートだけが剥ぎ取られていました。囮捜査官らしく挑発的な服装で捜査に参加する志穂ですが、ホシと思われていた人物がシロと判明。そして次の火曜日、またしても品川駅の女子トイレで絞殺死体が発見されることに。

女囮捜査官シリーズの第1弾。
実は表紙とタイトルから官能小説だとばかり思い込んでいたのですが、その中身は正統派の警察ミステリ。捜査と人間関係の二本立てのスピーディな展開で、ぐいぐいとひっぱられます。しかし実際、官能的な描写もあり、今回の事件の発端となる満員電車の中の痴漢の描写がとてもリアル。私はそれほどひどい痴漢に遭ったことはないのですが、しかし痴漢行為に遭っている女性の気持ちの悪さが、これでもかと伝わってくるほど。そしてそこに女性の囮捜査官を投入するというアイディアが、男性作家ならではでしょうか。私が官能小説かと思ったのは、「触姦」というサブタイトルのせいもあるのですが、やはり感覚的にも少々微妙なところですね。
志穂の立場は、囮捜査官という日本では基本的に認められていない存在。大学時代に犯罪心理学を学んだ志穂は、構内で募集していた「特別被害者部」という科学捜査研究所の外郭団体の女性部員に応募、数十倍の競争を勝ち抜いた「被害者タイプ」の女性です。警察学校で半年聴講し、合気道と逮捕術の実技訓練も受けていますが、正式な警察官ではなくて「みなし公務員」という身分。そのためどこにいてもよそ者扱いで、警察官からも検事からも次々と嫌がらせを受けることになります。この辺りの縄張り意識に関しては、他の警察ミステリでも読むことができるのですが、それでも普通は自分が所属する署があってこその捜査本部。やはり囮捜査官という宙ぶらりんな立場というのは相当つらそうです。
真犯人には驚きました。てっきりあちらが犯人なのかと…。すっかり騙されてしまいました。

「女囮捜査官2-視姦」徳間ノベルス(2003年12月読了)★★★★★
首都高で大掛かりな事故が起きます。居眠り運転をしていた陸送12トン積みディーゼルトラックが、南池袋パーキング・エリアに100キロ近いスピードで突っ込み、そこに止まっていたタンクローリーに激突したのです。タンクローリーは横転し、積んでいたガソリンに引火。連絡を受けた東京消防庁は、消防車と共に救急車を出動。早速救助活動に取り掛かります。しかし救急車に運び込もうとした、30代後半に見える白髪の男の傍には、なんと女性の右足が転がっていました。救急隊員はとりあえず白髪の男とその右足を救急車に乗せて救命救急センターへ。そして事件は、大掛かりな首都高連続バラバラ殺人事件へと発展することに。

女囮捜査官シリーズの第2弾。
冒頭で、いきなり強烈なシーンが展開されるのには驚きましたし、かなり抵抗があったのですが、しかし事件の捜査の方はなかなか面白い展開です。思わせぶりなタクシー運転手と料金所の係員の会話、京子たちが言い残したという「凄いもの」の謎、そしてその真相。次から次へと新しい展開が起こり、一気に読みきってしまいました。首都高速という舞台も新鮮でしたし、思いがけない展開を経て明かされる犯人。なかなか壮絶な事件ですね。作品全体のスピード感がとても良かったです。ただ、今回は北見志穂の囮捜査官としての仕事が少々ありがちに感じられ、それほど魅力的ではなかったのが残念。その割に、本人もかなりしんどそうでしたし。
捜査自体もとても良かったのですが、その過程で、逮捕状が出ても逮捕する義務はないことや、血液鑑定の手順など、専門的な内容にちらりと触れられていたのもとても興味深かったです。
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