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このページは、雪乃紗衣さんの本の感想のページです。

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「彩雲国物語-紅梅は夜に香る」角川ビーンズ文庫(2006年9月読了)★★★
久々に王都へ帰ってきた秀麗ですが、ただいま謹慎処分中。しかし日々家で過ごしながらも、「垣根の低い」官吏である秀麗には、近所の人々から苦情や悩みの文が毎日山のように届き、それなりに忙しい日々を送っていました。そんなある日、秀麗のもとに届いたのは胡蝶からの文。秀麗に会いたがっている人物がいるというのです。秀麗は早速、丁度家に来ていた王商家の三男坊の三太と共に胡蝶の元へと出かけようとするのですが、家の門前には、秀麗に「ガツン」と求婚しにやってきたという貴族の青年が。それは親が金で買った官位についているという棒蘇芳でした。一方、鄭悠瞬は一の宰相に任じられていました。悠瞬は柴凛からの極秘情報で碧幽谷が貴陽近辺にいると聞き、劉輝に報告。劉輝は楸瑛や絳攸、静蘭と共に幽谷を探しに出るのですが…。

彩雲国物語第11弾。新章スタート。
謹慎処分でも、秀麗の周囲は相変わらず。むしろ今回は贋作や贋金、妙な求婚者などが絡んで、いつも以上に賑やかです。しかし賑やかでテンポが良いのは楽しいのですが、今回は物語としての出来が、いつもほど良くないように感じられてしまいました。静蘭によって「タンタン」というあだ名をつけられてしまった蘇芳に関しては、終盤なかなか良かったと思いますし、すっかり頼もしくなった幼なじみの三太や1人であたふたしている碧珀明、パワフルな歌梨にも楽しめたのですが、やはり登場人物を急に増やしすぎているのではないでしょうか。「外見的フカフカ可愛さ」の「うーさま」こと羽官吏も、確かに可愛いですが、狙いすぎているような印象。そしてそれ以上に、今回はエピソードを詰め込みすぎ、暴走しすぎだったように思います。例えば劉輝たちが幽谷を探しに出る場面にしても、常識的に考えれば、何も情報もない状態、しかも政務がかなり忙しい状態で、いきなり劉輝が街に出るなど、悠瞬が絡んでいるだけに理解しがたく、ただ作者が話を賑やかにするためにしたこととしか思えません。それにいつもなら、暴走しつつも、ふと立ち止まって読ませてくれる場面があったと思うのですが、今回は最初から最後まで走り通し。もしかすると、秀麗の目には、いつもこのように映っているのかもしれないですが、それにしても、物語自体の緩急をもう少し大切にして欲しいところです。それに、いつもなら秀麗の言葉や行動にもっと瞠目させられる場面があり、それこそがこのシリーズをただの少女小説から一線を画した作品にしているところだと思っているのですが、今回はそういった部分もなく… ただのドタバタ劇に感じられてしまったのが残念です。
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