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このページは、筒井康隆さんの本の感想のページです。

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「ロートレック荘事件」新潮文庫(2002年9月読了)★★★★★お気に入り
「おれ」のせいで、8歳の時下半身の成長が止まってしまった従兄弟の重樹。しかし重樹は「おれ」を許し、「おれ」は学校でも遊びの場でも重樹と共にいて、常に重樹の面倒をみることに。それは打算や奉仕抜きの、純粋な友情であり、それから20年ほどその関係が続くことになります。そして28歳の夏。「おれ」たちは、かつては自分たちの父親の持ち物だった別荘へと招待されます。父親達が共同経営していた会社が6年前に破産して以来、今や木内文麿氏の所有となっている別荘は、木内氏の集めたロートレックの作品群から「ロートレック荘」と呼ばれるようになっていました。「おれ」たちの他に別荘に集まったのは、木内氏と弥生夫人、1人娘の典子、典子の友達の牧野寛子と立原絵里、そして立原絵里の母親の五月未亡人。

何を書いてもネタばれになってしまう作品とは、この作品のことではないでしょうか。迂闊にあらすじも書けない作品です。
手がかりは確かにいくつも文中に残されています。私も読み始めてから数箇所妙に感じた部分があり、意味がよく汲み取れず、最初の部分を何度も読み返してしまいました。しかしまさかこういうことだったとは。いくら手がかりが残されているとはいえ、作者が最後に懇切丁寧にカラクリを明かしてくれるとはいえ、これはアンフェアではないのかと言いたくなってしまうのですが… しかしこのトリックを見破る方もいらっしゃるのですね。しかしフェアかアンフェアかはともかく、本当に面白い作品でした。ミステリ作品にもある程度慣れてきている私ですが、まだこのような作品が残っていたことにも驚きました。これほど気持ちよく驚かされたのは久しぶりです。元来ミステリ作家ではない筒井氏にこんな作品を書かれてしまうとは、本職のミステリ作家さんたちは、さぞかし戦々恐々となさったのではないでしょうか。やはり筒井さんは凄いですね。脱帽です。
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