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このページは、滝沢馬琴さんの本の感想のページです。

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「南総里見八犬伝」1〜4 偕成社(2006年1月読了)★★★★★お気に入り
京の室町将軍も坂東の関東公方も共に力が衰え、全国の大名が勝手に争っている乱世。房総半島の南端・安房の国の里見義実の姫・伏姫は、3歳になっても口がきけず、家中の者たちに心配されていました。そんなある日、洲崎明神からの帰り道の一行に声をかけたのは、まがりくねった杖を持ち、髪も髯も真っ白な老人。姫に女人の強い呪いがかかっていると見てとった老人は、首にかけていた水晶の数珠を姫の首にかけ、その数珠を肌身離さずつけているようにと言います。数珠の108個の珠のうち、大きな8つの珠には「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の8文字が燦然と輝いていました。伏姫に呪いをかけた女人とは、4年前に義実が安房にやって来た時に討ち取った妖婦・玉梓。神余光弘の側室だった玉梓は、その家来・山下定包と手を組んで神余光弘を滅ぼし、悪逆の限りを尽くして義実に捕らえられます。しかし一度は命を助けると言っておきながら家臣に諌められると簡単に言葉を違えた義実に憤り、未来永劫里見の家に祟ってやると言い残していたのです。そして伏姫が16歳になった時、凶作に見舞われた里見領に安西景連が攻め込みます。落城を覚悟する義実。しかし景連の首を取ってくれば伏姫を嫁にやるという義実の戯言を真に受けて、犬の八房が本当に首を取ってきたのです。約束通り、伏姫は八房の元に輿入れをすることに。

滝沢馬琴による「南総里見八犬伝」を、浜たかやさんが児童書として編集しなおしたもの。山本タカトさんによる表紙絵が非常に美しい本です。1巻「妖刀村雨丸」2巻「五犬士走る」3巻「妖婦三人」4巻「八百比丘尼」。
あまりにも有名な滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」、いつかは岩波文庫から出ている全10巻の現代語訳を読破したいと思いながらも未読です。子供の頃に子供用にリライトされた本を読んだだけなので、どの程度省略されているのか実感として分からないのですが、この4冊はかなりレベルが高いのではないでしょうか。非常に読みやすく、面白かったです。しかも山本タカトさんによる登場人物絵も随所に挿入されているため、非常にイメージが掴み易いのです。4巻の巻末には浜たかやさんによる八犬伝解説があり、それによると、原作を六分の一から七分の一ほどに縮めてあり、後半部分は思い切って割愛、約400人と言われる登場人物も大幅に整理したとのこと。数多い敵役を整理して籠山逸東太に兼ねさせ、原作にはいない安西土佐や山下小助といった登場人物を作り出し、最後の決戦に犬江親兵衛を登場させるなどエピソードを変えた部分が多々あるのだそうです。しかしこれらがきちんと説明されているのも良心的でいいですね。おそらく八剣士や他の登場人物たちのそれぞれの性格も、原作よりも分かりやすく強調されているのでしょうね。正義の味方も悪役もそれぞれに個性的で、非常に楽しかったです。そしてこの解説の中で、本宮ひろ志「群竜伝」、遠崎史朗「アストロ球団」、日渡早紀「ぼくの地球を守って」、テレビ番組「秘密戦隊ゴレンジャー」など八犬伝の影響を受けていると思われる現代の作品も紹介されているのが、またとても興味深いところです。
ちなみに八剣士の名前は登場順に、犬塚信乃戌孝(もりたか)、犬川荘助義任(よしとう)、犬山道節忠与(ただとも)、犬飼現八信道(のぶみち)、犬田小文吾悌順(やすより)、犬江親兵衛仁(まさし)、犬坂毛野胤智(たねとも)、犬村大角礼儀(まさのり)。しかし玉梓は結局どうなったのでしょう。それだけが気になるといえば気になるのですが…。
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