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このページは、千野帽子さんの本の感想のページです。

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「文藝ガーリッシュ-素敵な本に選ばれたくて」河出書房新社(2007年1月読了)★★★★★

讀者が本を選ぶのではなく、本が讀者を選ぶ……「志は高く心は狭い文科系小娘(フィエット)」のための、スヰートで辛口の読書案内。

奥泉光さんの「モーダルな事象」の解説のインパクトが強かった千野帽子さんの書かれたブックガイドです。とは言っても、ただの読書案内ではありません。この本のキーワードは「ガーリッシュ」。(「ガーリー」という言葉にはあまり良くないニュアンスもあるのだそう) この本は装幀もとても素敵で、カバーの紙の質感もデザインにぴったりですし、本の天の部分のざくざくした辺りも懐かしい雰囲気。しかし購入の一番の決め手となったのは、素敵な装幀ではなく、「はじめに」の中にあった以下の文章でした。
「批評家でもなんでもない、ただの本好きにすぎない私でも、もちろん知っています。ひとりでいる時間を大切にする、聡明で誇り高いお嬢さんは、いつも本を二冊以上−−読みかけの本と、出先でそれを読み終わってしまったときのための本と−−鞄に入れて持ち歩いてるんだってことを。
ベストセラーは、ふだん本を読まない人たちが買うからベストセラーになる。本好きのあなたのための本は、そんなところにはありません。一冊一冊のスヰートな書物が、喫茶店や地下鉄のなかでの、よいお友だちである以上、本との出会いは叮嚀なものでありたいと、あなたは思っているのですから。」
普通のブックガイド以上に未読本が多く、知らない作家も多かったのですが、大作家の意外な作風の作品が登場していたり、名前も聞いたことのない作家の作品がとても面白そうで興味を引いたりと、読んでいるうちにどれもこれも読んでみたくなって困ってしまうほど。普通に書店に並んでいたら、どうということもなく通り過ぎてしまう本も多いと思うのですが、こうしてまとめられることによって、見事に「ガーリッシュ」な本としての存在を主張しているのですね。特に2章「だれもあの子を止められない」、それと11章「『トモダチ以上』な彼女とわたし。」に興味津々。思わず手元に置いておきたくなるような、キュートでチャーミングなブックガイドです。
 
以下、「志は高く心は狭い文科系小娘(フィエット)」の定義。
・つい古本屋や喫茶店をハシゴしてしまう。 たぶん、肺病で夭折した文學少女の霊に取り憑かれてしまったんだと思う。
・女子どうしだから解かり合える、なんて嘘。女だからって、あんな女といっしょにしないでくれる?
・《ダ・ヴィンチ》に載る十冊の話題の新刊より、《彷書月間》で紹介された一冊の古本。
・日本の書店で小説の棚が作者の性別で分けられてる意味がわからない。
・「等身大」「本音」「自分探し」のたぐいの言葉が苦手。
・「ミステリ」とか「ファンタジー」「SF」といった既存の特定ジャンルが好きなのではなく、一冊一冊の小説が好き。
・「若い女性に人気」と言われている本が、「いつまでも少女でいたい自分を肯定するF1層(おばさん)の文学」にしか見えない。
・ある日悪い宇宙人が攻めてきて怪光線を放射し、日本の識字率が三○パーセントになってしまっても、自分は文盲にならないという根拠のない自信がある。
・「オチ」のある小説は退屈。
・自分が本好きだってことを言うときに、「活字中毒」「乱読」などの高校の文芸部臭い常套句を臆面もなく使うことができない。

もちろん全部ではないですが、結構当てはまる… かもしれません。(笑)

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