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このページは、城平京さんの本の感想のページです。

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「名探偵に薔薇を」創元推理文庫(2001年12月読了)★★★
【メルヘン小人地獄】…三橋荘一郎は、駅で近づいてきた不審な男に「小人地獄をご存じか?」と話し掛けられます。訳の分からない荘一郎に、男はさらに「藤田恵子さんは小人地獄をご存じですよ。」と言って立ち去ります。そして起こる「メルヘン小人地獄」の童話の見立て殺人。犯人と思われながらも鉄壁のアリバイがある鶴田が接触してきたのをきっかけに、荘一郎は瀬川みゆきに連絡をとることに。
【毒杯パズル】…メルヘン小人地獄事件から2年後。藤田家のリビングで、荘一郎の後をついで鈴花の家庭教師になった山中冬美が毒殺されます。紅茶のポットの中には大量の毒物が混入され、最初に紅茶を飲んだ冬美が死ぬことになったのです。明らかに内部の人間の犯行だと思われるのですが。

読み始めは、言葉遣いや地の文章がアナクロで大げさで、それが少しストーリーにそぐわない印象。本当は昭和初期や第二次世界大戦直後を舞台にしたミステリを狙っていたのではないかと思ったのですが… 読み進めてみると、特にそのようなことはなかったようですね。
「メルヘン小人地獄」の童話を通して瀬川みゆきが真相を見抜く点が凝っています。本当にこれだけの手がかりで解決できるのかと思いつつも、童話を書いた人物の造形を考えると、本当にそこまで考えているような気にさせられてしまう所にリアリティがありますね。なかなか練られています。そして「毒杯パズル」。こちらの二転三転の構成は見事です。「小人地獄」の設定を生かしながら、さらに展開を見せる作品。「小人地獄」はこの作品のために書かれたのですね!完全に予想外でした。そして気がつけば、最初の文体の違和感はすっかりなくなっていました。
瀬川みゆきは人気が出そうなキャラクターですね。完璧な毒に対抗する、完璧な探偵。ぶっきらぼうな口調といい、独特の存在感といい、その深い悩みといい、特に同人誌が放っておかなさそうです。
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