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このページは、篠田秀幸さんの本の感想のページです。

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「蝶たちの迷宮」ハルキ文庫(2002年10月読了)★
1979年。K大学の3年生である「シノ」こと篠田秀幸、カオルこと高橋薫、そして山本邦彦の3人は、同人誌「停車場」を作っている同人仲間。シノの下宿で大騒ぎをした翌朝、隣の香川京平の部屋から聞こえる大音量の音楽に起こされてしまった3人は、ノックしても返事のないのに苛つき、仕方なく大家に合鍵を借りてくることに。しかし戻ってきてみると音楽はぷっつりと止み、部屋の中からは女性の悲鳴が。慌てた3人が合鍵で部屋を開けようと瞬間、何者かが内側からカンヌキ錠をかけてしまうのです。ドアを叩いても返事がなく、3人がドアに体当たりして開けてみると、部屋の中にはなんと香川の死体が。しかし他に人影はなく、部屋は完全に密室状態となっていたのです。香川はK大学出身で、「停車場」の指南役をしてくれているという存在。K大時代の学生運動の話を聞こうとした矢先の出来事でした。一方、それから遡ること6週間。同人誌に原稿を持ち込んできたH学院高校の3年生・池田賢一が農薬を飲んで自殺していました。2つの死に何か繋がりがあるのではないかと、3人は調べ始めます。

物語の初めに作者は1つの宣言をしています。それは「犯人=探偵=証人=被害者=作者⇒読者」という前代未聞のもの。しかしこれはあまり成功しているとは思えません。作者に気合が入っているのはよく分かりますし、その設定のために、自ら大上段に構えて読者を煙に巻こうとしているのも分かるのですが、その意気込みがなんとも空回りしているように思えます。それに「虚無への供物」や「匣の中の失楽」が何度も引き合いに出されているのですが、どうにも格が違うといったところでしょうか。メインテーマは家庭内暴力と学生運動。私はこの学生運動の時代の話が苦手なので、そのせいでなんとも話に入りづらかったというのもあると思いますが… 同じように学生運動の頃の話でも、この作品にも引き合いに出されている笠井潔氏の矢吹駆シリーズのように洗練された作品もありますし、庄司薫氏の薫くんシリーズのような親しみやすい作品も存在します。やはりテーマのせいだけではないのでしょうね。それになんとも馴染めない文章と、必要以上に複雑な(と思える)構成。非常に読みにくかったです。
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