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このページは、佐々木俊介さんの本の感想のページです。

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「繭の夏」創元推理文庫(2002年10月読了)★★
16年前両親が交通事故で他界して以来、伯父の藤森家に厄介になっていた並木祥子と敬太郎は、伯父の事業の躓きがきっかけで、アパートを借りて自活していくことになります。姉の祥子は鷹丘大学の4年生で就職も内定済。弟の敬太郎は、現在高校2年生。2人の新しい部屋はカナリヤ荘の301号室で、かつて伯父夫婦の1人娘・咲江が大学生の時に住んでいた部屋でした。アパートへと引越しした日、掃除をしていた祥子は、天井裏に隠すように置かれている奇妙な人形を見つけます。稚拙な作りの指人形の指がはまる部分には古いノートの切れ端が入っており、そこには「ゆきちゃんはじさつしたんじゃない。まおうのばつでしんだんだ…」という言葉が。咲江は大学時代、児童文化研究会というサークルに所属し、人形劇の上演などをしていたのです。もしやその人形は、8年前の咲江の自殺と何か関係があるのか、2人は夏休み限定のスリーピングマーダーを気取って繋がりを調べ始めます。

第6回鮎川哲也賞佳作受賞作品。
夏休み期間限定の探偵ということで調べ始める姉と弟。この2人がなんとも子供っぽくて可愛いらしく、いかにも青春物という雰囲気で始まるのですが、実際の事件の方はかなり痛いもの。楽しいお遊びだったはずの探偵ごっこは思わぬ真実を探り当て、重苦しい現実が浮かび上がってきます。読後感も、正直あまり良くないですね。しかしこの事件の真相の苦さと、青春小説特有の「若気の至り」的ほろ苦さが、うまく重なっているのでしょう。それがこの作品の良さでもあり、悪さでもあるのではないでしょうか。この2人にはもっと日常の謎系の物語が似合いそうなので、少々もったいなかったような気がします。しかし「繭の夏」という題名が、内容の様々な面を内包しているようで上手いですね。それに解説に若竹七海さんという人選が本当にぴったりです。
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