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このページは、斉藤直子さんの本の感想のページです。

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「仮想の騎士」新潮社(2005年1月読了)★★★★

1751年のパリ。女にふられたばかりで不機嫌なジャック・カザノヴァは、下宿の隣室の美少女・ウェジアンが貴族の放蕩息子・ナルボンヌに弄ばれて捨てられたのを知り、決闘を申し込みます。しかしその決闘の場に現れたのは、ナルボンヌではなくルネサンス絵画の天使のような美貌の騎士・デオン・ド・ボーモン。そして4年後の1755年7月、この美貌の騎士はフランス国王の従兄弟であり参謀でもあるルイ・フランソワ・ド・コンティ親王の命を受けて、ダグラス・マッケンジー神父と共に変装し、ロシア皇帝であるエリザヴェーダ女帝に親書を渡すために、当時フランスと国交の断絶していたロシアに潜入することになるのです。

第12回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品。
舞台は18世紀のフランス、ルイ15世時代。「ーーもうええっちゅうに」…というカザノヴァの第一声には驚きましたが、これが案外はまっていますね。フランスが舞台だから、イタリア訛りのフランス語は大阪弁。この茶目っ気がカザノヴァのキャラクターにもぴったり。もちろんカザノヴァの大阪弁だけでなく、ロシアでの場面にもそれぞれに工夫が凝らしてあり、全編通してユーモアたっぷりです。主人公は、カザノヴァが思わず見蕩れてしまったほどの美貌の騎士・デオン・ド・ボーモン。カザノヴァもデオン・ド・ボーモンも実在の人物ですが、それ以外にもルイ15世やその寵妃・ポンパドゥール夫人、そしてサンジェルマン伯爵、フランツ・アントン・メスメルと実在の人物が次々に登場、史実の流れはそのままに縦横無尽に動き回り、物語を華やかに盛り上げていきます。全体的に少々軽すぎる気はしますし、ラストの盛り上がりは期待したほどではなかったのですが、それでもこのテンポの良さは素晴らしいですね。登場人物たちの肉付けもしっかりされており、特に太陽王・ルイ14世とフランス革命でギロチン台の露と消えたルイ16世に挟まれて地味な存在だったルイ15世が意表をついてくれます。楽しいですね。

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