「イタリア文学論」…ナタリア・ギンズブルグ論、イタリア中世詩論、イタリア現代詩論、文学史をめぐって、という4章に分けられた、イタリア文学論。
「翻訳書あとがき」…須賀敦子さんが訳したナタリア・ギンズブルグ作品、アントニオ・タブッキ作品、そしてイタロ・カルヴィーノの「なぜ古典を読むのか」につけられたあとがき集。
イタリア文学論と、須賀さんが邦訳したイタリア文学の訳者後書きを集めた第6巻。イタリア文学論で取り上げられているのは、まずナタリア・ギンズブルグの「ある家族の会話」、イタリア中世詩論としてダンテ以前のイタリアにおける最も重要な宗教詩人と言われるヤコポーネ・ダ・トーディや宗教詩ラウデ、ダンテに影響を与えたトゥルバドゥールやダンテの「新生」について。さらに「イタリア現代詩論」としてウンベルト・サーバやエウジェニオ・モンターレ、現代詩の創始者と言われるウンガレッティなど。最後に日本で発刊された「イタリア文学史」に関する書評。このイタリア文学論に関してはかなり専門的な内容で、ダンテの「神曲」は読んでいるものの、ウンベルト・サーバなどの名前は須賀敦子さんの著作を通して知った程度の私にとっては少し難しかったです。研究論文もあれば、講演の原稿もあり、やはり講演の原稿の方が初心者にとっては読みやすい内容。しかしいずれにせよ、それらの作品に対する須賀さんの愛情はひしひしと感じられます。そして講演での須賀さんによるイタリア詩の朗読は、ぜひ聴いてみたかったです。やはり他のヨーロッパ言語に比べて音楽的に感じられるでしょうね。
後半の翻訳書あとがきには既読のものもいくつかあったのですが、改めて読んでもエッセイとして楽しめるものばかりでした。イタリア語を全く異質な日本語に置き換えるという作業は相当大変だったのではないかと思いますが、これ以上の日本語を生み出す翻訳者はいなかったのではないかと思えるほど。それは前半のイタリア詩を取り上げた文章での須賀さんの訳を読むだけでも十分感じられます。
「どんぐりのたわごと」…須賀敦子さんがローマ留学時代に1人で企画・製作、コルシア書店で出版して日本に送っていた冊子。全15号で、7号には「こうちゃん」が収録されています。
「日記」…夫・ペッピーノの死から4年。翻訳の仕事をしながらミラノに住み続ける須賀敦子さんの、ミラノを去ることになるまでの日記。
「書簡」…イタリア時代の須賀敦子さんが、両親や友人、そして後の夫となるペッピーノ・リッカに宛てて書いた手紙。
「『聖心(みこころ)の使徒』所収エッセイ」…日本祈祷の使徒会の「聖心の使徒」に、1957年から1968年にかけて発表された作品及び、コルシア・デイ・セルヴィ会報誌に発表された作品の翻訳。
「荒野の師父らのことば」…1960年から1962年にかけて「聖心の使徒」に連載された翻訳をまとめたもの。
「ノート・未定稿」…構想のまま、結局未完成に終わってしまった「アルザスの曲りくねった道」に関するノートと未定稿。
「年譜」…須賀敦子さんの記した日記や手紙、作品などから日時の分かる事柄に、家族や友人知人の証言などを補って作成された、詳細な年譜。