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このページは、西尾維新さんの本の感想のページです。

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「クビキリサイクル」講談社ノベルス(2003年6月読了)★★★★★お気に入り
5年前、16歳の時に祖父である赤神財団の現当主に勘当されて以来、日本海に浮かぶ小島・烏の濡れ羽島に4人のメイドと共に暮らしている赤神イリア。島からの外出を一切禁止され、言わば島流し状態の彼女の楽しみは、世界の天才たちを屋敷に招くことでした。そして今回、天才的な技術屋・玖渚友も招かれ、彼女に頼まれた「ぼく」こと「いーちゃん」も一緒に烏の濡れ羽島を訪れます。島で一緒になったのは、天才画家・伊吹かなみとその介添人・逆木深夜。ER3システムの七愚人の座にまで登りつめた天才・園山赤音。ESP系の超能力を持つ天才占い師・姫菜真姫。そして1年以上も前から島に滞在し続けている天才料理人の佐代野弥生。天才だけにエキセントリックな人々が集まったこの島で、やがて密室殺人事件が起こります。しかもその死体には首がなかったのです。

第23回メフィスト賞受賞作。
青色サヴァンとは玖渚友、戯言遣いとはいーちゃんのこと。玖渚友は真っ青な長い髪が特徴で、数年前いきなりネットに登場し、究極絶無にありとあらゆることをやりまくったという、謎のサイバーテロリスト集団「チーム」のリーダー。いーちゃんも、中学2年からの5年間ER3でプログラムに参加していたというのですから、相当能力のある人物のはず。しかし、いかんせん記憶力が欠落しており、無気力で無感動。他人に関わりたくない、しかも物事をはっきりさせることが嫌いな曖昧主義。いわゆる天才ではないようなのですが、破綻しています。
一癖も二癖もある登場人物ばかり集まり、何も起きなければ不思議なぐらいの状況の中で、事件が起こります。警察は呼ばないというイリアの意向で、哀川潤という人物の到着を待つことになるのですが…。一旦は解決したと思った事件は、最後の最後にまた新たな展開を見せ、ごくささいなはずだった疑問の意味が意外と大きかったことに気付いて驚かされます。それらが全て「完膚なきまで草一本残さずに解決」されることに。凄いですね。リアリティが全く欠如していると言えるほどの環境の中に、逆に生真面目なほどの本格ミステリが存在していたという印象です。まだまだ明かされていない登場人物たちの謎も、次回徐々に明らかになっていうのでしょうね。続きを読むのがとても楽しみです。

P.191「私は、園山赤音は、いつ、どこで、誰に、どんな風に、どのような理由で殺されようとも、文句を言うつもりは、一切、ない」

「クビシメロマンチスト-人間失格・零崎人識」講談社ノベルス(2003年8月読了)★★★★
烏の濡れ羽島から戻り、私立鹿鳴館大学に通うようになった「いーちゃん」は、ある日学食で葵井巫女子という女の子に声をかけられます。「いーちゃん」にとっては初対面、しかし彼女は「いーちゃん」と同じクラス、基礎演習のクラスではもちろん、語学も一緒、ゴールデンウィーク前のクラス合宿でも一緒の班になり、英語の授業ではペアも組んだことがあるという仲。やけにハイテンションな巫女子に誘われて、「いーちゃん」は仕方なく翌日の江本智恵の誕生日パーティに出席することに。そのパーティには、貴宮むいみと宇佐美秋春という面々も来ることになっていました。しかしその晩「いーちゃん」は、四条通りで嫌な視線と殺気を感じます。それはおそらく現在京都を騒がせている連続通り魔犯の視線。「いーちゃん」は鴨川の四条大橋の下で通り魔犯と対峙することに。

戯言シリーズ第2弾。
前回は孤島の殺人という非常に本格ミステリらしい設定があったのですが、今回はもっとキャラ萌え的な展開。玖渚友の出番は大幅に減り、代わりに大きく登場するのは葵井巫女子とその友達たち。しかしその彼らも十分個性的な面々ではあるのですが、前回登場した、所謂天才と呼ばれるエキセントリックな人間たちの個性に比べると少々物足りなく感じてしまいました。
正直、今回の殺人の動機についてはあまり納得できなかったですし、トリックに関しても、実行可能なのか少々疑問。通り魔殺人犯・零崎人識についても、せっかく前面に出てきたのですから、もう少し重要な役どころで活躍して欲しかった気がします。しかし彼を通して「いーちゃん」の本質を浮き上がらせるという意味では、なかなか良かったと思いますし、動機に関しても、このシリーズの登場人物がそれぞれに独特の確固とした思考回路と世界観を持っていることを考えれば、それほど大きな問題ではないのかもしれません。むしろ一般的なミステリ作品と同列に並べて考えること自体が間違いのような気もします。
今回はとにかく「いーちゃん」が主役。前回はワトソン役に甘んじることになった彼ですが、それも周囲に天才が多すぎたせいなのでしょうね。彼に関してはまだまだ語られていない部分が多いので、シリーズのこれからの展開がとても楽しみです。隣人の浅野みいことその友人・鈴無音々、刑事の佐々沙咲もこれから活躍してくれそうですね。
全体としては面白かったのですが、前作ほどの鮮烈さは感じられなかったのが少々残念といったところでしょうか。しかし逆に尖った部分が減った分、前作よりも一般的に読みやすい作品とも言えそうです。

「クビツリハイスクール-戯言遣いの弟子」講談社ノベルス(2003年8月読了)★★★★★
その日「いーちゃん」の元にやって来たのは、哀川潤。京都郊外にある、名門進学女子校にして上流階級専門学校と言われる澄百合学園に潜入し、紫木一姫という生徒を救い出すのが今回の哀川の仕事。それを「いーちゃん」にも手伝って欲しいというのです。超がつくお嬢様学校は管理体制が非常に厳しく、制服マニアの玖渚友ですら制服入手を諦めたという学校。哀川に言われるがまま、澄百合学園の制服姿で偽造学生証を持ち、校内に潜入する「いーちゃん」。しかしそこはただのお嬢様学校ではありませんでした。別名「首吊学園」で繰り広げられる殺人バトルとは。

戯言シリーズ第3弾。
講談社ノベルス20周年記念の密室本の1冊。一応密室本らしく密室殺人事件、しかもバラバラ殺人事件が起こるのですが、実際にはこの密室殺人事件、すっかり霞んでしまっています。物語の展開の中で中心となるのは、「バトル・ロワイアル」を彷彿とさせる殺人バトル。
まず、この名門女子校の設定には意表をつかれました。彼女たちは本当に上流階級のお嬢様たちなのでしょうか。そして卒業すれば、既に決められているらしい人生設計に沿って生きていくのでしょうか。しかしこのシリーズの中にあると、この設定もあまり突飛には感じられないのですね。一旦読み始めると、この世界にあっさり引きずり込まれてしまいます。しかも「バトル・ロワイアル」を読んだ時のような、「この話はちょっとマズイでしょう」的な感覚が生まれてこないのが、逆に少々怖くもあります。しかしこのシリーズは、いつでもリセットボタンを押せるような非現実感が最大の魅力なのでしょうね。リセットボタンを押しさえすれば、もしくはRPGゲームの中なら、呪文を唱えさえたり、ある程度のお金を払いさえすれば、死んだ人間が簡単に生き返る。この作品の中では、人の命にはその程度の重さしかないのです。そんな非常識的な乾いた感覚こそが、このシリーズの身上なのではないかと思います。そして読者は、ゲームをしているかのように、この限られた世界の中で暗黙のお約束事に沿って楽しむことに… それは、非常に危険なことのようにも思うのですが、それでもやはり面白いです。この世界に一度囚われたら滅多なことでは逃げられないかも。

「サイコロジカル」上下講談社ノベルス(2003年8月読了)★★★★★お気に入り
「いーちゃん」と玖渚友は、愛知県にある《堕落三昧(マッドデモン)》・斜道卿壱郎研究施設へ。ここには玖渚友がかつて「チーム」で一緒に活動をしていた兎吊木垓輔、破壊(クラック)専門のさっちゃんこと《害悪細菌(グリーングリーングリーン)》がいるのです。玖渚友の目的は、彼をこの施設から助け出すこと。2人の保護者役として鈴無音々が同行します。しかし玖渚友の説得に対して、兎吊木はこの施設を出るつもりはないと言い、卿壱郎博士も兎吊木を手放すつもりはないという答。しかし次の朝、兎吊木垓輔が凄惨な死体となって発見されます。人里離れた研究室の敷地内への出入りは厳重に管理されており、7つある研究棟への出入りも、予め登録されている研究者たちのみ。しかし元々この施設のシステムを作った玖渚友は簡単に出入りできるはずだと、博士は玖渚友たち3人を拘束します。

戯言シリーズ第4弾。
上巻の副題は「兎吊木垓輔の戯言殺し」、下巻の副題は曳かれ者の小唄」。
今回初登場する、チーム時代の仲間・兎吊木垓輔との関係において、かつて《死線の蒼》と呼ばれた、チームの統率者としての玖渚友への興味が否が応でも高まります。話し方からして、普段とはまるで違うのです。そして6年前、玖渚友といーちゃんという2人の間には、一体何があったのか、いーちゃんは玖渚友の何をどのようにして壊したのか。これはシリーズ最初からの謎ですし、解かれるのはまだまだ先の話なのでしょうね。しかしこれらに対する興味は非常に強いです。
そして今回も完全に展開に押されてはいますが、きちんとした本格ミステリ。窓もなく、唯一の出入り口は厳重にチェックされ、しかも出入りのログが残るという完全な密室状態において、殺人事件が起こります。こんなシリーズなので、あまりに常人離れした才能を持つ人間が次々と登場しても、「あれ、この人も?」とうっかり見逃してしまう、それが最大のミスリーディングとなっているような気もします。そしてデビュー作からそうでしたが、最後の二転三転も見事。なかなか安心して読了させてくれません。
「クビツリハイスクール」も良かったですが、今回のこの作品も満足度が非常に高いです。私は何が好きと言って、この「天才」という存在がとても好きなのかもしれません。

「ダブルダウン勘繰郎-JDC TRIBUTE」講談社ノベルス(2004年2月読了)★★★
京都市の河原町通りと御池通りの交差点に立って、日本探偵倶楽部の八階建てのビルディングを一心不乱に眺めていたのは、15〜6歳の色の白い少年。蘿蔔(すずしろ)むつみは、突然その少年に話しかけられて驚きます。少年の名は、虚野勘繰郎(むなしのかんぐろう)、年は15歳。勘繰郎は、「格好いいから」という理由で、日本探偵倶楽部に入ることを考えていたのです。その時、河原町通りを挟んだ向こう側には、大きな黒いバンが停まっていました。車体のあちらこちらにデフォルメされた眼球が描かれ、サイドに大きく「殺目」と書かれているその車の持ち主は、逆島(さかしま)あやめ。かつて日本探偵倶楽部の第一斑に所属した探偵であり、2年前に起こした連続名探偵殺戮事件の犯人として指名手配となっている人物。あやめはコンビを組む「静」こと椎塚鳥籠に、ニトログリセリンを大量に積んだバンで特攻をさせようとしていたのです。

清涼院流水氏のJDCに対するトリビュート作品。
元々のJDCシリーズに比べれば、非常に普通とも大人しいと言えるかもしれません。しかしJDCの独特な世界観は借りながらも、まさに西尾維新流の世界を描いてしまっているのはさすがですね。ノベルスで130ページ弱という短い作品で、冒頭こそ少々読みにくかったのですが、本題に入ってしまうとテンポも良く、楽しめました。ミステリとしては実は反則のような気もするのですが… それを言うのは野暮というものでしょうか。探偵という存在についてのあやめの主張には、納得できる点も多いですね。

「ヒトクイマジカル-殺戮奇術の匂宮兄妹」講談社ノベルス(2003年8月読了)★★★★
国立高都大学人類生物学科の木賀峰約助教授に、夏休みの後半の1週間のバイトを誘われた「いーちゃん」。初めは渋る「いーちゃん」ですが、日給が2万円から5万円に値上がりするにつれ、態度が軟化。そのバイトとは、8月22日から28日まで鴨川の上流にある集落にある木賀峰助教授の個人的な研究室に泊り込み、助教授の「死なない研究」のモニターをすること。そして「いーちゃん」には、さらに数人のモニターも集めて欲しいというのです。「いーちゃん」からその話を聞いた哀川潤は、嫌な予感を感じ、「いーちゃん」に《ジグザグ》の紫木一姫を連れて行くことを勧めます。そしてもう1人、なぜか現在「いーちゃん」の下宿に居候中の生物学者・春日井春日も研究所に行くことに。しかしそのバイトのための適性試験を受けに行った時、春日井春日は試験も受けずに帰ってしまうのです。そしてその研究所で「いーちゃん」は、先日行き倒れているところを拾った《人食い》匂宮理澄に再会することに。

戯言シリーズ第5弾。
徐々にこの世界の構造やら本質が見えてきたようです。しかし今回はなかなかに非人間的な展開ですね。やはり登場人物などという存在は、西尾氏にとってはただの駒でしかないのでしょうか。
今回のいーちゃんと玖渚友の会話を聞いていると、そもそもいーちゃんを壊した(もしくは壊れたと本人に認識させた)のは、他ならぬ玖渚友のような気がしてしまうのですが…。玖渚友が本当に壊れているのかというのも謎ですし、いーちゃんが彼女を壊したという認識が本当に正しいのかどうかも謎です。このシリーズは、最終的にはそこに立ち戻ることになるのかもしれませんね。最終的にこの2人の対決抜きには決着を見ることはできないような気がします。そして現在この時点で名前だけが先行している、他の登場予定人物たちのことを思えば、今丁度折り返し地点辺りでしょうか。
今回もまずまずの展開だったのですが、しかし単独の物語として存在しているというよりも、どこか次の話へと繋がる伏線のために存在するような気がしてしまったのだけが少々残念。狐面の男の存在などによって、次作を読むのも非常に楽しみではあるのですが…。

「きみとぼくの壊れた世界」講談社ノベルス(2004年2月読了)★★★
高校3年生の櫃内様刻(ひつうちさまとき)と、同じ桜桃学園に通う2年生の妹・櫃内夜月(よるつき)。2人は普通の血の繋がった兄妹ながらも、夜月が小学校2年生の時にひどいいじめに遭い、それに気付いた様刻が夜月をいじめた5人のクラスメートたちに制裁を下して以来、普通の兄妹以上に依存している関係。その夜月が、様刻が学校で女生徒と楽しそうに話していのを目撃したと言い出します。その女生徒とは、様刻と同じクラスの琴原りりす。どうやら夜月が直接目撃したのではなく、夜月に悪意を吹き込んだ人間がいるらしいのです。それは夜月と同じクラスの数沢六人。しかし様刻が数沢六人に警告を発した次の日、六人が学校内で死体となって発見され…。

櫃内様刻と親友の迎槻箱彦(むかえづきはこひこ)。そして様刻を巡る女性3人、愛らしい妹・夜月と仲間的感覚の琴原りりす、そして今回戯言使いの役回りとなる病院坂黒猫。キャラクターたちがそれぞれに個性的で、戯言シリーズに比べるとどこか薄味な印象ではあるのですが、なかなか楽しいです。このキャラクターの魅力で引っ張っていくタイプの作品なのでしょうね。物語の形態としては一応ミステリで、「もんだい編」「たんてい編」「かいとう編」「えんでぃんぐ」と分かれているのですが、むしろ青春小説のように感じられました。ミステリの古典作品を初代ファミコンのゲームにたとえているところなどの探偵小説論的な部分が、その必然性はあまりよく分からなかったものの、楽しかったです。
しかしこのラストは凄いですね。まさに時限爆弾のような世界。様刻自身は、常に最善の選択をしていると自負しているようですが… 一体この後どうなるのでしょう。この作品のタイトルの「きみとぼくの壊れた世界」の「きみ」と「ぼく」というのは、普通に考えるとあの2人なのでしょうけれど、これは色々と深読みもできそうですね。登場人物それぞれに様々な崩壊が見られます。

「零崎双識の人間試験」講談社ノベルス(2004年3月読了)★★★★★
無桐伊織、17歳。県下で一番進学率の高い私立高校の2年生で、ごく普通の女子高校生だったはずの伊織は、学校から一緒に帰ったクラスメイトの夏河靖道に突然襲われ、逆に靖道のバタフライナイフを奪い取って喉首に突き立ててしまいます。靖道の死体を前に茫然とする伊織。そこに現れたのは、零崎双識と名乗る男。彼は伊織を「生まれたてほやほや」の殺人狂と断定し、靖道の首を巨大な鋏のようなもので切断した上で、自分の妹にならないかと誘います。逃げ出した伊織が自宅に帰ってみると、そこには黒い袴姿の見知らぬ男が…。

戯言シリーズにも登場済の零崎人識の兄・双識が登場。時系列的には、「クビシメロマンチスト」の後でしょうか…?他にも戯言シリーズで見かける面々が登場するのですが、おそらく番外編ということになると思います。今回は特に謎らしきものはなく、ミステリ作品でもありません。
相変わらず、人間の死があまりに軽く扱われているのが気になるのですが、それでもテンポの良さと読みやすさで面白かったです。零崎双識は零崎一賊の長兄で、「二十人目の地獄」とも呼ばれる首斬役人。武器は自殺志願(マインドレンデル)と呼ばれる巨大な鋏。相対する早蕨兄弟は、太刀遣いの刃渡・薙刀遣いの薙真・弓矢遣いの妹・弓矢という兄弟妹の3人。伊織もなかなか頑張っていましたし、零崎一賊の設定が面白かったです。しかし呼吸をするかのように人を殺しながらも家族主義の双識は、既に人格が崩壊しているとしか…。
早蕨一族は、匂宮の分家。匂宮兄妹の名前は既にシリーズに登場していますが、匂宮・闇口・薄野・墓森・天吹・石凪・零崎の家を合わせて「殺し名」7名と呼ぶのだそうです。そしてその対極に位置しているのは、時宮・罪口・奇野・拭森・死吹・咎凪・呪い名という6名。いーちゃんがER3に入ることになったきっかけがちらりと語られており、全てのことが明らかになる日がとても待ち遠しいです。

「新本格魔法少女りすか」講談社ノベルス(2004年9月読了)★★★★
魔法使いの水倉りすかと、「魔法使い」使いの供儀創貴(くぎきずたか)。2人は現在小学校5年生。出会ったきっかけは、4年生の時に、キズタカがクラス委員として登校拒否のりすかを訪ねて行ったこと。しかしりすかを見た瞬間、キズタカはりすかが恐るべき魔法使いであることを見抜いたのです。それもそのはず、りすかは属性(パターン)は「水」、種類(カテゴリ)は「時間」の運命干渉系の魔法を持ち、10歳にして乙種魔法技能免許を持つという天才的な「赤き時の魔女」。現在、りすかとキズタカが住んでいるのは佐賀。りすかの出身は、「魔法の王国」長崎の首都である魔道市、森屋敷市。長崎と佐賀の間には天を衝く「城門」があり、行き来は自由ですが、魔法使いが長崎から出ることは滅多にありません。
【やさしい魔法はつかえない。】…地下鉄の駅のホームで電車を待っていたキズタカは、自分の前に並んでいた4人が一斉に、電車の入ってくる線路に吸い込まれるように落ちていくのを目撃します。そこに魔法の存在を感じたキズタカは、早速りすかの元へ。
【影あるところに光あれ。】…キズタカの元同級生の在賀織絵が誘拐され、その時の状況を一緒にいた妹から聞きだしたキズタカは、早速りすかの元へ。話を聞いたりすかは、魔道市でも有名な5つの称号を持つ魔法使い、影谷蛇之が犯人だと言います。
【不幸中の災い。】…りすかと連絡がとれなくなって10日。執事のチェンバリンにすら門前払いを食わされていたキズタカは、学校帰りに再度喫茶店を訪れます。そこにはりすかの姿が。そしてキズタカの前に現れたのは、りすかの従兄の水倉破記でした。

りすかシリーズ第1弾。西尾維新さん初の連作短編集となっています。
本当に魔法が登場するということで、どのような作品なのか読むまで不安があったのですが、読んでみるとこれがなかなか面白いですね。長崎が魔法の王国という設定も面白いですし、それぞれの魔法使いの持つ魔法の「属性」「種類」なども、読んでいてわくわくしてしまいます。しかもテンポも良いのです。読み始めこそ、りすかのまるで翻訳文のような言葉遣いには驚きましたが、案外すぐに慣れるものですね。戯言シリーズを初めて読んだ時のインパクトこそないものの、この新シリーズも楽しめそうです。
キズタカの傲慢さなど、少々食傷してしまう部分もあったのですが、基本的には可愛らしい雰囲気。そこに17年後のりすかのアンバランスさが、華を添えています。水倉神檎は一体どのような魔法使いで、現在何をしているのでしょうか。佐賀を舞台にしたエピソードも良いのですが、魔法王国の長崎を舞台にしたエピソードもじっくりと読んでみたいですね。

P.105「やるからには、勝たなくてはならない。絶対に絶対に絶対に。本当に本当に本当に。」
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