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このページは、緑川聖司さんの本の感想のページです。

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「晴れた日は図書館へいこう」小峰書店(2004年7月読了)★★★★★お気に入り
【わたしの本】…春。いつものように雲峰市立図書館へと出かけた、小学校5年生の茅野しおりは、お母さんを探している3歳ぐらいの女の子・カナちゃんに出会います。「魔女たちの静かな夜」という本を見て、「あ、わたしの本」と本を抱きしめるカナちゃんですが…。
【長い旅】…6月。学校から帰る支度をしていたしおりは、同じクラスの安川くんに話しかけられます。なんと安川くんの家には60年ぐらい延滞している本があり、今度返したいと言うのです。
【ぬれた本のなぞ】…7月のある日、図書館の開館時間外に返却本を入れておくブックポストが使用禁止になっていました。美弥子さんによると、缶コーヒーが投げ込まれていたというのです。
【消えた本のなぞ】…夏休みの宿題で自由研究を選んだしおりは、雲峰市の歴史を調べるために図書館へ。しかし検索機では図書館にあるはずになっている本が、探しても見つからないのです。
【エピローグはプロローグ】…秋。図書館では図書館祭りが開催されます。

第1回日本児童文学者協会・長編児童文学新人賞・佳作受賞作。
図書館を舞台にした連作短編集。本が大好きなしおりと、しおりの従姉で図書館に勤めている美弥子さんこと葉山美弥子が中心となって、図書館で起きる様々な謎を解いていきます。謎は、図書館に関連が深い「日常の謎」。もちろんその謎だけでもなかなかいいのですが、その真相と共に、それぞれの本に込められている様々な思いが明らかになっていくのが、なんとも温かく、余韻があって良いのです。もしかしたら、この作品の本当の主役は図書館そのものかもしれませんね。図書館で起きる色々な出来事や様々な人々を、図書館が温かく見守っているような感じ。最後の「エピローグはプロローグ」では、それまでに登場した人々や本が再登場、思わずほろりと来る素敵なラストとなっています。
作中では、図書館のしくみや歴史、そこでの仕事、利用のマナー、良くあるトラブルなど、図書館に通っていてもよく知らないままのことがさらりと紹介されていきます。この作品の中で紹介される本も、読みたくなってしまうような本ばかり。(実際には架空の本ばかりのようなのが残念ですが…)ますます図書館が身近に感じられ、本が大好きになれるような1冊です。

「プールにすむ河童の謎」小峰書店(2005年7月読了)★★★★
緑川小学校の5年生の片桐圭太は夜10時頃、塾からの帰り道に緑川小学校のプールに河童のようなものを目撃。しかし同じく5年生の新聞部員で、緑川新聞の緑川事件簿という記事を担当している遠藤恭子は、圭太の話を聞いてもまるで信じようとしないのです。河童の話を、近くにあるゲンゴロウ池で目撃したことにして伝説を絡めて記事を書こうと決める恭子。同じく新聞部員でオカルト好きの島崎ゆかりと共に市立図書館へと向かいます。そこで出会ったのは、パズルの本にいたずら書きをしていた相馬空也でした。

大人のミステリ読みにはとても分かりやすい謎なのではないかと思いますが、児童書にはぴったりですね。とても丁寧に作られている正統派ミステリ。伏線が綺麗に回収されていく様は読んでいて気持ち良かったです。こういう本に出会ったのがきっかけで、ミステリに興味を持つようになったら素敵だなと思います。登場人物たちもそれぞれに造形がしっかりしていて魅力的。特に相馬空也がいいですね。相馬空也の父親のシーンに関しては少々唐突に感じられてしまいましたが、そこでも伏線が回収されたのにはびっくり。ただ、宝石店の表に面したウィンドウにはイミテーションが飾ってあるなど、宝石店関係で気になる記述がいくつか目につきました。本当にそのようなことをする宝石店があるのでしょうか。私が知っている範囲では聞いたことがないですし、いくら精巧なイミテーションでも見る人が見れば一目瞭然。そのような信用問題に関わることをする店があるとは思えないのですが…。
森友典子さんのイラストも作品のイメージにぴったりですね。ぜひシリーズ化して欲しくなってしまう作品です。
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