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このページは、茅田砂胡さんの本の感想のページです。

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「デルフィニアの姫将軍」(王女グリンダ)中央公論社C★NOVELS(2000年8月読了)★★★★★お気に入り
デルフィニアの内乱がようやく収まり、ウォル・グリークが国王となって3年。王女という身分になったリィは、西の離宮に一人で暮らしていました。女官長のカリンが、幾度となく王女の世話をする娘を連れていくのですが、離宮とは名ばかりで、野生の狼も出入りするような暮らしに3日と耐えられる娘はおらず…。そして今回選ばれたのは新参の侍女・シェラ。山育ちであるということを買われての抜擢だったのですが、このシェラは実は、王女の命を狙う暗殺者だったのです。

デルフィニア戦記が書かれる以前に大陸書房で書かれていた作品。1992年に2冊刊行された後、大陸書房が倒産したため、未完のまま廃刊となっていました。その後同じ世界の物語が「デルフィニア戦記」として完成、この2冊に関しては幻の作品とされていたのですが、2000年8月中央公論社から1冊にまとめて「王女グリンダ」として復刻されました。
この「デルフィニアの姫将軍」はリィと彼女を狙う刺客であるシェラが中心の物語となっており、「デルフィニア戦記」では常に中心にいるウォルが、完全に脇役となっているのが特徴です。イヴンやシャーミアン、カリンなどのおなじみの登場人物はいるのですが、ナシアスやバルロが登場しないなど、人物もエピソードも「デルフィニア戦記」とは微妙に違います。しかし既に独特な世界は確立されており、全く違和感なく読むことができるのはさすが。それどころか茅田さんの筆力で一気に読ませてくれます。全18巻という「デルフィニア戦記」に手を出すのを躊躇される方には入門編としてぴったりです。

「グランディスの白騎士」(王女グリンダ)中央公論社C★NOVELS(2000年8月読了)★★★★★お気に入り
ある日突然リィに縁談話が持ちあがります。相手は南の新興国家であるグランディスの第一王位継承者・カミール王子。王女という肩書きはあるものの、王家の血が流れているどころか、素性も知れない娘を、何故グランディスは次期国王妃として迎えようとしているのか…。初めは性質の悪い冗談かと困惑したウォルですが、グランディスはいたって真面目な様子。どう穏便にこの縁談を断るかということでデルフィニア側は苦慮することに。

前作「デルフィニアの姫将軍」とは違い、こちらはウォルとリィが中心に据えられているので、二人の掛け合い漫才もも楽しむことができるのが嬉しいところ。バルロも登場してイヴンとの良い喧嘩相手となっていたりと、こちらの方が「デルフィニア戦記」に近い作りと言えるかもしれません。そして、それ以外にもリィの縁談の相手であるカミール王子、その部下であるホーリー・ダルトンなど個性的なメンバーが揃っており、一話完結としても楽しむことができる物語です。

「桐原家の人々-恋愛遺伝学講座」1 中央公論新社C★NOVELS(2001年1月読了)★★★★★お気に入り
呉里六郷市。県立呉里六郷高等学校の高校1年生の桐原眞己(男)は、桐原家の3つ子の1人。しかし骨太で男性的な容貌の眞己に比べ、あとの2人、都(男)と猛(女)は色白の美しい顔つきに繊細な体つき。なぜ自分だけが家族の誰にも似ていないのか?子供の頃から、自分だけが他人なのではないかと密かに悩んでいた眞巳を待っていた真実とは。

以前角川ルビー文庫から出ていた「恋愛遺伝学講座」が改題・再販された作品。
「 デルフィニア戦記」「スカーレット・ウィザード」のような迫力はありませんが、とても楽しいドタバタ系のホームコメディ。元が角川ルビー文庫というBL系の作品が多く出ているところというのも納得、冒頭から眞己は都に告白されて大慌て。兄弟であわや、という展開になります。しかしBLに関してはほのかに香りがするだけでした。
「馥郁たる上品そうな美人」という外見とは裏腹に鉄火な母親・豊、黙ってさえいれば文句なしに美人の長女・麻亜子、色の白い端正なハンサムの長男の零、そして猛のクラスメートの能代瑛子が言ったように、「ブルーのシールポイントのシャム猫とジャーマンシェパード並べて兄弟なんですっていうのと同じぐらい、無理がある」都&猛vs眞己。なんとも個性的な面々が揃っているのが楽しいです。しかし1巻後半で怒涛のように明かされる真実にはびっくり。1巻でこんな爆弾が落ちるとは、これからの展開が思いやられてしまいますね。(笑)

P.167「一緒に暮らしてるんでなけりゃ、なかなか親子にはなれないさ。その逆にね、一緒に暮らしてるうちにだんだん家族になるもんだよ。」

「放浪の戦士-デルフィニア戦記1」中央公論社C★NOVELS(2000年3月読了)★★★★★お気に入り
10人もの刺客に襲われていた自由戦士のウォル。絶体絶命の彼を救ったのは、異世界から迷いこんできたという少女リィでした。どこにも行くあてのないリィは、ウォルと共に旅をすることに。しかしこの自由戦士こそが、王位を追われたデルフィニアの正統な国王ウォル・グリーク・ロウ・デルフィンだったのです。二人はコーラル奪還に向けて動き出し、ラモナ騎士団と合流します。
デルフィニア戦記第1巻。すでに物語の主要人物はほとんど登場します。

「黄金の戦女神-デルフィニア戦記2」中央公論社C★NOVELS(2000年3月読了)★★★★★お気に入り
ウォルとリィはラモナ騎士団と一旦別れてコーラルへ。しかしその途中、成り行きで山賊退治をすることになります。そこに現れたのはタウの自由民たち。山賊に勝手にタウの名を騙られたのを知り、その退治に来たのです。そしてそのリーダーはなんとウォルの幼なじみのイヴンでした。これによって、イヴンたちタウの自由民がウォルの味方につくことになります。そしてウォル達はラモナ騎士団とドラ将軍と合流し、政府軍と激突。一方コーラル城ではペルーゼン侯爵による巧妙な罠が。デルフィニア戦記第2巻。

「桐原家の人々-恋愛心理学入門」2 中央公論新社(2001年1月読了)★★★★お気に入り
複雑な家庭の事情が突然明かされて数日後。一番当事者だったはずの眞己はそれほど衝撃を受けなかったものの、ショックが尾をひいて睡眠不足の猛と都。どことなくぎくしゃくした空気が漂っていました。しかしそんな桐原家に、突然麻亜子が帰ってきます。なんと断りきれないお見合いのためだと言うのです。眞己はその頃、父親に会いに行ってみようかと考えていました。

以前角川ルビー文庫から出ていた「恋愛心理学入門」の改題・再販作品です。「桐原家の人々」の第2巻。
私生児という言葉に過剰反応する猛というのはどうもイメージに合わないですし、そもそも茅田さんがそういう話を書かれるというのもイメージに合わなくて、前半はあまり話に乗れなかったのですが、後半森崎のぞみが登場する辺りから、物語は俄然楽しくなっていきます。森崎崇は何年も怒り続ける相手としては人が良すぎるのですが、それでもやはり麻亜子の怒りはごもっとも。麻亜子と豊の正論には納得です。「あれを許せたら女って言わないわ!!」という台詞にも、黙って頷くしかありませんね。

「白亜宮の陰影-デルフィニア戦記3」中央公論社C★NOVELS(2000年3月読了)★★★★★お気に入り
ペルーゼン侯爵は、ウォルの育ての親であるフェルナン伯爵の命を楯にウォルに王座は諦めるように要求。そしてリィ達はコーラルの北の塔に投獄されているフェルナン伯爵を救出する為にコーラル城へ向かいます。難攻不落と言われるコーラル城に潜入、フェルナン伯爵を救出することに成功はするのですが、想像を絶する投獄生活をおくっていた伯爵は最後の力を使い果たしてしまい、ウォルに看取られて息をひきとることに。コーラル城の中では、ペルーゼンによって国王の素性が明らかにされ、親王派の貴族たちに動揺が走ります。デルフィニア戦記第3巻。

「桐原家の人々-恋愛統計総論」3 中央公論新社C★NOVELS(2001年1月読了)★★★★★お気に入り
学校では眞己と都にホモ疑惑が流れ、零には地球の果てのような陸の孤島への長期海外派遣の話が持ち上がっていた頃。桐原家に現れたのは、なんと零の亡くなった母親の父親だという三条成臣からの使いの人間でした。零の母・園子は、夫の俊美と駆け落ちする時に既に実家からは勘当されており、交通事故で死亡した時も、「三条家とは何も関係がない」と言われていたのです。16年もの間放っておいたのに、今更なぜ零を迎えに来たのかというと、なんと零は政略結婚の駒にされようとしていたのです。

以前角川ルビー文庫から出ていた「恋愛統計総論」の改題・再販作品です。「桐原家の人々」の第3巻。
各巻でそれぞれ爆弾が落ちているこのシリーズですが、今回の爆弾は零絡み。零が12歳の時に事故で両親を亡くし、父親の兄である桐原広美に引き取られたというのは1巻で明らかにされていましたが、まさかここまで上流階級に繋がっているとは想像もしていませんでした。絵に描いたような嫌な一族でしたが、見合い相手の武者小路萌子の幸せは願いたいですね。それに三条家のおかげで、零も収まるところに収まれたのですから、悪いことばかりではないどころか、災い転じて…でしょうか。今までも十分テンポの良い展開でしたが、この3巻の怒涛の展開は、一旦読み始めると本当に目が離せないです。

「空漠の玉座-デルフィニア戦記4」中央公論社C★NOVELS(2000年3月読了)★★★★★お気に入り
大義名分を失った国王軍の目指す物はペルーゼンの首ただ一つ。国王軍は本来腹心の部下であるべきサヴォア侯爵バルロ率いるティレドン騎士団とぶつかります。しかしリィの活躍によって戦闘は避けられ、バルロとヘンドリック伯爵を取り込む事に成功。ペールゼン侯爵の知略により事態は2転3転しつつ物語は終幕へ。デルフィニア戦記第4巻。王都奪回編ついに完結。

「異郷の煌姫-デルフィニア戦記5」中央公論社C★NOVELS(2000年3月読了)★★★★★お気に入り
内乱が終わりウォルはデルフィニア国王へ、そしてリィはウォルの養女となります。それから3年。サヴィア公爵バルロとその叔父マグダネル卿の仲が険悪になり、挙兵も辞さないという一触即発の事態に。バルロも周辺の人々もその理由をなかなか語らないのですが、リィはそれを探り出し、ウォルは双方に謹慎を命じます。しかしデルフィニア国王をつぶすためにリィの命を狙う者が現れ…。デルフィニア戦記第5巻。
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