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このページは、黒田研二さんの本の感想のページです。

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「ウェディング・ドレス」講談社ノベルス(2004年6月読了)★★★★

自分に何1つ自信が持てず、自分には恋愛感情が欠如していると思い込んだまま31歳になってしまった松井祥子。しかし3歳年下の「ユウくん」こと三笠勇紀に出会ってから、変わり始めていました。出会いからわずか3ヶ月でプロポーズされ、6月の第2日曜日には2人だけの結婚式をあげることに。しかしその当日、指輪を忘れて取りに戻った「ユウくん」が事故に遭ったという知らせが教会に入ったのです。祥子はウェディングドレスのまま、急いで病院へ。そこに現れたのは、「ユウくん」と同じ会社の人間だという2人の男でした。しかしその2人の乗っていた車に乗り込んだ祥子は2人に陵辱されることになり、さらに教会に戻った祥子を待っていたのは、「ユウくん」の事故死の知らせでした。3ヵ月後、自分を取り戻した祥子は、一体自分たちに何が起きたのかを調べ始めます。

第16回メフィスト賞受賞作。プロローグの悪魔趣味的なおどろおどろしいシーンには驚きましたが、物語が始まるとごく普通のカップルの恋愛模様になり、その後は一気にサスペンスモードへ。物語は「私」と「僕」の2人の視点から交互に描かれていきます。しかし愛し合っているはずの2人のそれぞれの見ている情景にはズレがあるのです。最初に「ユウくん」視点のパートを読んだ時から、違和感を覚えていたのですが、それは結婚式当日、決定的な齟齬となることに。とは言っても、その違和感や齟齬は、この作品の主眼ではないのでしょうね。少しでもミステリ慣れしている読者なら、そこに何かしらのトリックや伏線があるのを予想するはず。私もある程度は予想しながら読んでいたのですが… 最後に待っていたこの真相には驚きました。しかも思わず呆気に取られてしまった、おまけトリックまで。ミステリ慣れしている読者の知識を、逆手に取るような作品ですね。
レイプの扱いがやや軽すぎるようなのが気になりましたが、全体的にはテンポが良く一気に読ませる力のある作品。しかもプロローグからは想像もしなかった爽快な読後感でした。面白かったです。


「ペルソナ探偵」講談社ノベルス(2004年7月読了)★★★★

<星の海☆チャットルーム>は、プロの作家を目指す6人の男女の集う会員制のチャットルーム。会員たちは、カストル、ポルックス、アンタレス、スピカ、カペラ、ベガと星にちなんだハンドルメールを名乗り、毎週木曜日になると、チャットルームに集まり、雑談や創作談義に花を咲かせていました。しかしこの会で、メンバーの本名や住所などを知っているのは、会長のカストルだけ。お互いに本名や住所・電話番号はもちろん、メールアドレスすら明かさないというのが規則となっているのです。メンバーはそれぞれカストル宛に自分の書いた小説やエッセイをメールで送り、カストルはそれらの原稿を編集・製本、3ヶ月に1度同人誌<スターチャイルド>を発行。各メンバーに送るという活動をしているのです。

物語は、スピカの「フィンガーマジック」、アンタレスの「殺人ごっこ」、カペラの「キューピッドは知っている」という3つの短編が、最後のポルックスの「五人プラスひとり」に繋がっていくという構成。読み始めは各章の短編が実話なのかと思っていたのですが、それぞれに実際にあった出来事を元にして書かれたミステリ作品だったのですね。ネットでの匿名性を始めとして、読んでいると各所に綾辻さんの作品を彷彿とさせる部分が見えてくるように思えます。
3つの短編もそれぞれ面白かったです。特に「フィンガーマジック」の、カストルの論理的な謎解きが、非常に鮮やか。そして思わせぶりな「インタールード」を経て、最後の「五人プラスひとり」へ。いかにも何かが隠されていそうだと思って身構えて読んではいたのですが、二転三転する真相には素直に驚かされてしまいました。これは凄いですね。一読しただけでは、理解しきれなかったほど。面白かったです。ただ欲を言えば、1行目から引き込まれるというベガの書いた作品、特に「NEW SEASON」を全部通して読んでみたかったですね。

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