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このページは、古泉迦十さんの本の感想のページです。

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「火蛾」講談社ノベルス(2003年10月読了)★★★
ヒジュラ暦6世紀、西暦で言えば12世紀頃。詩人であり作家でもあるファリードは、ペルシャ語による聖者たちに関する伝記録編纂を志しており、諸国を遍歴しながら多くの逸話や伝承を蒐集していました。取材旅行も一段落がつき、家で蒐めた資料の整理をしていたファリードは、とある高名な聖者(ワリー)に関する噂を耳にします。なんでもその聖者の法燈を継ぐ人間がいるというのです。その聖者に連なる人間に会ってみたかったファリードは、早速アリーと名乗る行者に会うことに。アリーは自分がかつて遭遇した出来事を話し始めます。それは姿を現さない導師・ハラカーニーと、その下で修行する4人の僧、ホセイン、カーシム、シャムウーン、そしてアリー自身しかいない山で起きた、連続殺人事件の話でした。

第17回メフィスト賞受賞作品。
途中で殺人事件は起きるのですが、ミステリというよりはイスラムの宗教に重心が傾いているかのように思える作品。イスラムの色濃い世界が繰り広げられていきます。日本人にはそれほど馴染みのないイスラムという世界を舞台に起きた殺人事件は、この時代、この世界独自のルールでもって推理しなければなりません。それはある種、SFのような感覚ですね。
私はイスラム教の世界には以前から関心がある方ですし、予備知識も全くないわけではないのですが… しかしこのひたすら淡々と進む説明の流れには少々退屈してしまいました。文章もきっと私にはあまり合わなかったのでしょう。結局なかなか物語の中に入り込むことができず仕舞い。翻訳物を読んでいるような感覚もありました。きっと好きな方は好きなのでしょうし、雰囲気も満点なのでしょうけれど…。ただ、アリーと導師・ハラカーニーの言葉に関する問答の部分は面白かったです。
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