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このページは、北山猛邦さんの本の感想のページです。

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「『アリス・ミラー城』殺人事件」講談社ノベルス(2003年12月読了)★★★
東北の西の日本海に浮かぶ江利ヵ島。地元の漁師も近づかないこの島にそびえ立つアリス・ミラー城に、全国から招かれた探偵たちが集まってきていました。やって来たのは、鷲羽、窓端、海上、山根、古加持、无多、入瀬、観月という、年齢も性別も経歴も様々な8人。招待者は、イギリス人と日本人のクォーターのルディ。そして世話係として雇われているのは、堂戸という女性。最初のディナーの席で、ルディによって、1つのルールが発表されます。最後まで生き残った1人が、「アリス・ミラー」を手に入れることができるというのです。探偵たちはそれぞれの依頼人のために、早速アリス・ミラーを探し始めることに。そして館の一室には、意味ありげに10の白の駒が配置されたチェス盤が。

ルイス・キャロルのアリスワールドで上演される、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」といった趣きの作品。ここでクリスティの作品と大きく違うのは、集められた客が全て探偵を生業とする人間だったということ。何か起きれば、皆が条件反射のように推理を始めます。これが、読み始めた時に想像した以上に効いていて驚きました。これはいいですね。そして起きる事件もその期待に応えるかのように、密室だったりバラバラ死体だったり、殺人鬼となった人間が斧で襲ってきたりとバラエティ豊か。しかし最後に明かされる真相に納得できるかどうかで、評価が二分されそうです。私は正直、少々ずるいと思ってしまったのですが…。このタイプのトリックは実は少々苦手なので、尚更そう思ってしまうのでしょうね。
それでも、それまでの展開は孤島物の王道、サスペンス味も十分でとても楽しめましたし、この事件で密室が作られた意義、そして閉塞状況における2種類の犯人像の定義や物理トリックに関する話なども面白かったです。既知の単語(ネタばれ→「そして誰もいなくなった」や「アリス」←)による読者の先入観を、ミスリーディングに利用しているようなところも、上手いですね。チェスにもっと詳しければ、きっともっと面白かったのでしょう。
この中では、傲岸不遜な割に童顔な観月が良かったです。登場人物の名前も、全部は分からなかったのですが、窓端がマッドハッターだったり、堂戸がドードーだったり、无多がダイナのもじりだったりと凝っていますね。
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