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このページは、河合隼雄さんの本の感想のページです。

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「子どもの本を読む」講談社+α文庫(2005年12月読了)★★★★★お気に入り
臨床心理学者であり、心理療法家でもあった河合隼雄さんの児童書解説本。先に読んだ「ファンタジーを読む」ほど既読の作品はなかったのですが、こちらもとても良かったです。特に良かったのは、やはり既読のケストナーの「飛ぶ教室」とリンドグレーンのピッピシリーズでしょうか。「飛ぶ教室」は、子供の頃から何度も繰り返し読んだ大好きな作品なので、河合隼雄さんの書かれていることには1つ1つ納得できましたし、子供の頃読んでいた時に感じた思いが蘇ってくるような気がしました。そしてピッピシリーズが、ウェブスターの「あしながおじさん」にヒントを得た作品とは知りませんでした。スウェーデン語では、「長くつしたのピッピ」は「Pippi Langstrump」で、「あしながおじさん」は「Pappa Langben」なのだそう。2つの作品は題名もそっくりだったのですね。そしてギリシャ神話におけるアテネーを引き合いに出した「父の娘」論もとても興味深かったです。
さらに、既読ではないものの、ピアスの「まぼろしの小さい犬」とロビンソンの「思い出のマーニー」、ヘルトリンクの「ヒルベルという子がいた」の章では、「こちらの世界」と「あちらの世界」について、子供との信頼関係についてなど、色々と考えさせられました。今度ぜひ読んでみようと思います。

紹介されている作品は、「飛ぶ教室」(ケストナー)、「まぼろしの小さい犬」(ピアス)、「思い出のマーニー」(ロビンソン)、「ぼんぼん」「兄貴」「おれたちのおふくろ」(今江祥智)、「ヒルベルという子がいた」(ヘルトリング)、「長くつ下のピッピ」「ピッピ船にのる」「ピッピ南の島へ」(リンドグレーン)、「ねずみ女房」(ゴッデン)、「ふたりのひみつ」(ボーゲル)、「つみつみニャー」(長新太)、「首のないキューピッド」(スナイダー)、「砦」(ハンター)、「わたしが妹だったとき」(佐野洋子)

「ファンタジーを読む」講談社+α文庫(2005年10月読了)★★★★★お気に入り
臨床心理学者であり、心理療法家でもあった河合隼雄さんのファンタジー解説本。読みなれた名作に心理学者ならではの視点からの深い解釈がなされていきます。氏曰く、ファンタジーとは「人間が考え出すものではなく、どこか他の世界から、人間の心のなかにわきでてくるもの」であり、ファンタジーは「たましいのあらわれ」であり、ファンタジーをそのように捉えた時、「ファンタジー作者からわれわれは実に豊かなメッセージを受け止められるように思う」とのこと。
実際に臨床で様々な患者と出会う機会があるのだそうですが、1人1人の患者との穏やかなやりとりが想像できるような誠実で静かな語り口。分かりやすい文章で、それぞれの作品に関する解釈もとても分かりやすいです。私が子供の頃から不思議な思いを持っていた「はるかな国の兄弟」については、その「不思議」が解消されるところまでいかずに少々物足りなかったのですが、他の作品、特に「マリアンヌの夢」や「人形の家」、「ゲド戦記」に納得できる部分が多かったです。ぜひもう一度作品を読み返してみたくなりました。
13冊中、既読は9冊。あらすじが丁寧に紹介されているので、未読の作品ばかりでも大丈夫だと思いますが、紹介がやや丁寧すぎるきらいもあるので、やはり実際に作品を読んでから本書を読んだ方が良さそう。その方が理解も一層深まりそうです。

紹介されている作品は、「マリアンヌの夢」(ストー)、「人形の家」(ゴッデン)、「はるかな国の兄弟」(リンドグレーン)、「七つの人形の恋物語」(ギャリコ)、「エリコの丘から」(カニグズバーグ)、「トムは真夜中の庭で」(ピアス)、「床下の小人たち」(ノートン)、「足音がやってくる」(マーヒー)、「北風のうしろの国」(マクドナルド)、「犬のバルボッシュ」(ボスコ)、「影との戦い ゲド戦記I」(ル=グイン)、「こわれた腕輪 ゲド戦記II」(ル=グイン)、「さいはての島 ゲド戦記III」(ル=グイン)の13冊。

P.270 「ファンタジーが深くなる、あるいは、無意識界への下降が深くなると、それはきわめて死と近接したものとなる」

「猫だましい」新潮文庫(2005年10月読了)★★★
猫だましいとは、「猫」+「たましい」と「だまし」を掛けた言葉なのだそう。河合隼雄さんによれば、人間がなぜこれほどペットに惹き付けられるかといえば、「それは人間がたましいという不可解な存在をもっているから」であり、その「たましい」が、「何かの姿をとって顕現してくる。あるいは、たましいのはたらきを何か外的なもののなかに認める」という時にペットペットがその役割をするから。そしてそういう場合、犬よりも猫の方が、たましいの不可解さやとらえどころのなさを感じさせるように思われるというのです。
ここで紹介されているのは、「牡猫ムル」(E.T.A.ホフマン)、「長靴をはいた猫」(ペロー)、「空飛び猫」(ル=グイン)、 「100万回生きたねこ」(佐野洋子)、「こねこのぴっち」(ハンス・フィッシャー)、「トマシーナ」(ポール・ギャリコ)、「猫と庄造と二人のおんな」(谷崎潤一郎)、宮沢賢治の作品や「鍋島猫騒動」、日本昔話に出てくる猫の話と猫尽くし。物語だけでなく、漫画の「綿の国星」(大島弓子)も登場します。古今東西の猫の話が、心理療法家の河合隼雄さんによって解釈され、猫の物語を通して人間のたましいについて語られていきます。ただ、これもとても楽しかったのですが、「ファンタジーを読む」を読んだ後では、1つ1つの作品に対する掘り下げが浅く感じられてしまいました。もう少しページ数をとってじっくりと書いて欲しかった気がします。巻末には大島弓子さんの猫漫画も。
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