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このページは、上村勝彦さんの本の感想のページです。

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「インド神話-マハーバーラタの神々」ちくま学芸文庫(2006年9月読了)★★★★
インド・アーリア人にとって最古の文献「リグ・ヴェーダ」が成立したのは、紀元前1200年前後。インドの神話について書くように依頼された上村氏は、いざインドの神話について調べ始めて、既存の参考文献は二次的資料を元に書かれたものがほとんどであり、あまり信頼できないものが多いと知ったのだそうです。そして結局、「マハーバーラタ」を原典で読むことに。そんな上村氏が、「マハーバーラタ」やヴェーダ諸文献をあたって選び出した諸々の神話を、極力二次的資料に頼らず、原典に忠実に紹介してゆく本。

「リグ・ヴェーダ」での神々は「デーヴァ」(deva)と呼ばれ、これは神を意味するラテン語のデウス(deus)、ギリシャ語のテオス(theos)と語源的に対応するのだそう。それほど古い文献で、しかも地域的にかなり離れているというのに、語源的に繋がりがあるというのは興味深いですね。
有名な、不死の飲料である甘露(アムリタ)を得るために、神々と阿修羅がマンダラ山で大海を攪拌する「乳海攪拌」の神話を始めとして、様々なエピソードが「マハーバーラタ」やリグ・ヴェーダ諸文献などから抜き出されており、純粋に読み物として面白いと思います。また、似たような神話に関してはそれぞれに比較することによって、より理解を深めようという作り。インドラが帝釈天であるなど、中国や日本に伝わった後の仏教名も書いてあるところも分かりやすいです。ただ、「マハーバーラタ」を原典で読み訳したという上村氏の著述ですし、副題も「マハーバーラタの神々」。比重は断然「マハーバーラタ」に傾きがち。あとがきにも書かれていたのですが、「マハーバーラタ」の原典訳と対応するような作りとなっているので、やはり「マハーバーラタ」を読む時の副読本として役立てるというのが正解なのでしょうね。 二大叙事詩と並び称される「ラーマーヤナ」については、必要に応じて引用されていますし、ラーバナがシータを無理矢理陵辱しようとしなかった理由などは分かるものの、やはりそれほど触れられていないのが少し残念。「マハーバーラタ」を読んだ後で、ぜひもう一度読み返したいと思います。
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