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このページは、銀林みのるさんの本の感想のページです。

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「鉄塔武蔵野線」ソフトバンク文庫(2007年11月読了)★★

美晴は物心が付いた頃から鉄塔に興味を持ち、鉄塔を眺めるのが何よりも好きだったという小学校5年生。そんな美晴の家が夏休み明けに東京郊外の北多摩地区に引っ越すことになり、美晴は引越し前の最後の夏休みを近所の少年たちと遊んで過ごしていました。しかし少年たちがそれぞれに避暑や旅行に出かけてしまい、美晴が1人でサッカーボールを蹴りながら近所の市営グラウンドへ行った時、そこにある鉄塔を今までになく奇妙だと感じたのです。そして「武蔵野線75-1」と書かれた金属板を見た時、この鉄塔を辿っていくと、どこにたどり着くのだろう、1番の鉄塔は原子力発電所にあるのだろうか、という強い興味が芽生えたのです。

第6回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。池上永一氏「バガージマヌパナス」と同時受賞出、映画化もされている作品。
小学校5年生の環見美晴と小学校3年生の磨珠枝暁が2人で「75-1」の鉄塔から1つずつ辿っていく様子を描いた、文字通りの鉄塔小説。夥しい数の鉄塔の写真も収録されて、まるで小学5年生の少年による実録小説のような趣き。元々の新潮社版の単行本や文庫には全ての写真を収録することができず、今回のソフトバンク文庫でその夢がやっとかなったのだとか。
「男性型」「女性型」「料理長型」「婆ちゃん鉄塔」など、鉄塔に色々な名前をつけ、その「結界」にメダルを埋め込むことに執着して最後までやり遂げようとするところなどは、少年の鉄塔に対する愛情が感じられていいと思うのですが、私自身鉄塔にはまるで興味がないのが辛かったです。しかも文章が合わず…。小学5年生の少年の一人称の小説だというのに、地の文章の主語が「わたし」ですし、大人並みの語彙力がありながら、小学生の作文のような拙さを演出していて、そのどっちつかずの様子がどうも読んでいて気持ちが悪かったです。最後まで読み終えた時は、本当にほっとしました。

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