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このページは、近藤史恵さんの本の感想のページです。

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「凍える島」創元推理文庫(2000年6月読了)★★★★★お気に入り

喫茶店・北斎屋のオーナーのあやめは、ひょんなことからお店の客と一緒に無人島への慰安旅行に行くことに。参加者するのはあやめと一緒に働いているなつこさん、そして客の椋くん、うさぎくん、うさぎくんの彼女・静香さん、うさぎくんの友人・守田さん、あやめさんの恋人である矢島鳥呼(とりこ)とその妻・奈奈子さんという8人。一行は1週間の予定で、瀬戸内海の真中に浮かぶS島へと向かいます。

第4回鮎川哲也賞を受賞した、近藤史恵さんのデビュー作。話はミステリ仕立てで、某有名作品を下敷きにしているのですが、私にとってはミステリというよりも純粋な恋愛小説でした。微妙な人間関係の集まりとなってしまった慰安旅行を通 して、あやめが淡々と語る恋愛観はとても希薄で現実感がなく、しかし同時にとても狂おしく、泥沼であるのに純粋で、凍っているのに熱く、透き通 って透明なのに美しいだけでは終わらない、というような、相反するものを感じます。あやめの危ういバランスがとても魅力的。
「ボォト」「ジィンズ」「アコォディオン」「イメェジ」といったカナ使いが、この作風と少し合わないような気もしたのですが、これもこの現実感のなさを一層深めているのかもしれませんね。
まるで長い長い詩を読んでいるような気がした、透明感のある作品でした。


「ねむりねずみ」創元推理文庫(2000年11月読了)★★★★★お気に入り

今をときめく若手歌舞伎役者の中村銀弥こと棚橋優。矢倉一子は父につれられていった芝居で初めて見た銀弥に一目惚れ、そのまま結婚することになります。親同士で話の決まっていた政略結婚ではあったものの、幸せいっぱいの一子。しかしお互いの価値観の違いのせいで、徐々に一子と優の気持ちは徐々にすれ違っていきます。そんな時、優は物の名前が思い出せなくなるという奇病にかかり、そして梨園では殺人事件が。大部屋役者の小菊と、小菊の旧友で探偵の今泉が事件解決に乗り出します。

銀弥がすごいですね。歌舞伎以外まるで何も見えていない、根っからの役者。自分をとりまく全ての物は、歌舞伎のために存在し、役作りのためになら何でもするという人間です。「愛だの恋だのは舞台の上だけで、たくさんだ」という台詞を本気で言っているのが分かるだけに、その情熱が却って恐ろしく感じられます。しかしだからこそ素晴らしい役者となり得るのでしょうね。そしてこの生粋の「役者」と対極にいるのが、三階(大部屋)の小菊。小菊のキャラクターがまた良いのです。この「小菊」という名前と、女形修行で普段から女言葉を話しているということで、読んでいると女性なのか男性なのか分からなくなってしまいそうになるのですが、勿論れっきとした男性です。
私は数えるほどしか歌舞伎を見たことがないのですが、そんな初心者にもとても入りやすい作品でした。説明が全く煩くないどころか、とても分かりやすくて上手いですね。舞台の描写もとても美しく、実際には見たことのない場面でも、頭の中に情景が浮かんでくるようです。歌舞伎の家に生まれた者とそうでない者との意識の違いについての考察も面白いですし、「歌舞伎で、立役がこんなかたちをして、膝に女形が寄り添っているのは、実は濡れ場を暗示しているのである。」のような説明もとても興味深いもの。このような様式について少しでも知っていると、歌舞伎の見方がまるで変わってくるのでしょうね。ぜひ一度、機会をつくって勉強してみたいものです。


「ガーデン」創元推理文庫(2002年12月読了)★★★★★お気に入り

我慢するのをやめたことによって自分が全くの空っぽだと気付いてしまった奥田真波は、自殺の下見のつもりで訪れた海岸の浜辺で、火夜と名乗るエキセントリックな魅力を持つ女の子に出会います。火夜はその日から、1人暮らしの真波の部屋に転がり込むことに。共通点はどちらも眠ることが好きだということぐらいで、正反対の性格の2人は、生活のリズムが違うこともあり、お互いにほとんど干渉しない同居生活。2人でいてもほとんど口をきかないで過ごすことが却って心地よい関係。しかしそんな生活が8ヶ月ほど過ぎたある日、火夜は「真波、わたし気づいちゃったの。だから、もうあんたの友だちじゃいられない」という言葉を残して部屋を去ります。火夜が去ることも運命のように感じる真波。しかし2週間後、差出人不明の荷物が届きます。その中には、火夜がいつもつけていた珊瑚色のエナメルが塗られた小指が入っていたのです。驚いた真波は、同じマンションの中にある小泉文吾探偵事務所へ。

「ねむりねずみ」「散りしかたみに」にも登場する探偵・今泉文吾の最初の事件。実際には「ねむりねずみ」よりも先に書かれたという作品です。
この作品には、それぞれに「死」を想う火夜と真波という2人の女性が登場します。複数の人間の視線から成り立つこの物語の中で、この2人の存在はまるで表裏一体。物語の中で構築されては崩され、そしてまた再構築され、どんどん違う姿へと変容していきます。そしてようやく掴んだと思った実体は、実はその影でしかなかったことを思い知らされることになるのです。この世界に入り込んでしまった人間はとことん翻弄されることでしょうね。危ういバランスの上に成り立つこの世界は、火夜や周囲の人間だけでなく、読者までをも容赦なく巻き込んでいくようです。
そしてそれらの印象は、全て「庭」の情景へと雪崩れ込みます。絶対の存在であるはずの探偵すら、この危うさから逃げられないのです。読んでいると足元から世界が崩壊していくような気分。とにかくディープで、これぞまさに近藤史恵さんの世界だと溜息をついてしまう作品。合わない人にはとことん合わないと思いますが、近藤史恵さんの世界が好きな人にとっては堪らないのではないでしょうか。

P.82「薔薇が咲く時期にはまだ早いのに、せっかちな茎は、ひたすら武装している。薔薇は怯えているのか、と思う。他者を傷つけようとするのは、怯えたものだけなのだから。」
P.175「樹も眠れないらしいのよ」「だから、樹も睡眠不足になるって言ったの。あんな風に、電気をつけられると」


「スタバトマーテル」中央公論社(2003年8月読了)★★★★★お気に入り

声域、音量、声質、どれをとっても並外れた才能がありながらも、コンクールや大きな演奏会になると失敗、結局母校・藤城芸術学園大学音楽学科の副手という立場に甘んじている足立りり子。そんなりり子が、講師の西邦生の伴奏でスタバトマーテルを歌っている時に通りがかったのは、美術学科の夏季特別講師で、銅版画家の瀧本大地でした。数日後、りり子はバスで一緒になった大地から銀座の個展のオープニングパーティに招待されます。急速に接近するりり子と大地。しかしオープニングパーティの翌日、大地の忘れ物を持って家を訪ねたりり子は、思わぬ悪意に晒されることに。りり子を大地に決して取り次ごうとしない桑畑。大地を完全に支配している、母親であり人気イラストレーターでもある瀧本瑞穂。そして盲目の瑞穂の手を引き世話をしている老婆。始まりは、凄まじい悪意を放つ夜中の無言電話でした。しかしそのうち、それだけでは済まないことが…。

恋愛小説とミステリとホラーがミックスされたような作品。読後に残るのは、なんとも言えない怖さ。非常に痛く怖い作品ではあるのですが、しかしこの世界にはとても強く惹かれます。それぞれの登場人物のそれぞれの想い、苦しみや哀しみ、愛情の強さが痛いほど伝わってきて、それぞれの存在感がひしひしと感じられました。印象に残る言葉もとても多かったです。「象牙の船に銀の櫂」「神様のための声」のような表現にも惹かれましたし、「おまえ、放っておけないよ」「だって、おまえ、泣くだろう」「本当に、大好きだった」のような、何気ない台詞も直に響いてくるようです。
さらに、りり子と大地の会話の中に出てきた、ある人間に見えている色が他の人間にも同じように見えているとは限らないという話は、最近私がずっと考えていたことだったので驚きました。同じ物を見てそれを「灰色」と認識していても、それが本当に同じ灰色に見えているとは限らない…。瀧本瑞穂の考えていることは、普通なら常軌を逸していると思われかねないようなことですが、しかしその想いはとてもよく分かります。
ちなみにスタバトマーテルとは、キリスト教聖歌の1つ。十字架の下に立つ聖母マリアの嘆きを歌った曲で、ハイドンやロッシーニ、ヴェルディなど多くの作曲家が曲をつけているのだそうです。りり子が歌っているのは、ペルゴレージのスタバトマーテルドロローザ。 大地の家でかかっていたのは、ドビュッシーやドヴォルザーク、ロッセリーニのスタバトマーテル。場面に合わせて1つずつ聴いてみたくなってしまいます。この曲は、この作品における「母親の無償の愛」の象徴なのでしょうね。

P.49「画集で見るのと、実物を前にするのとでは、ずいぶん違う。絵を印刷で見ることは、硝子越しのキスみたいだ、と思う。切なさが変わるわけじゃないけど、伝わらないことも多い。」


「散りしかたみに」角川文庫(2001年9月読了)★★★★お気に入り

歌舞伎「本朝廿四孝」の舞台で、毎日ある場面になるとなぜか降ってくる1枚の花びら。それは演目には全く関係ないもの。しかも今回の舞台装置からは花や雪の降る仕掛けは取り外されており、偶然とは言えないものでした。駆け出しの女形・瀬川小菊は、この舞台で八重垣姫を演じている師匠・瀬川菊花のいいつけで、大学時代の同級生であり、現在は探偵の仕事をしている今泉文吾に相談します。しかし楽屋を見にやってきた今泉は、やはりその芝居に勝頼役で登場する市川伊織の楽屋から出て来た和装の美女を見た途端に、この件には関わりたくないと言い出すのです。

「ねむりねずみ」に続く梨園を舞台としたミステリです。
舞台が梨園という華やかな世界だけに、物語自体がなんとも艶やかな色気を醸し出しています。そしてそこに小道具として使わレているのは、はらはらと舞う1枚の花びら。色彩的にもとても艶やかで美しいですね。しかし正直言って、ミステリとしては少し弱いような気がします。真相は普通なら反則技になりそうなものですし、今泉が虹子を一目見ただけで、いきなりほとんど全てを見抜いてしまう部分も少々唐突。それでも一度真相が分かってみると、それもまた梨園という特殊な世界にとても良く合っているような気にさせられてしまうのが、この作品の持つ力なのでしょうか。一応ミステリではありますが、むしろ梨園を舞台にした切ない愛憎劇として読んだ方が、満足度が高くなりそうです。
「ねむりねずみ」同様、歌舞伎の作品や舞台、世界についてもとてもわかりやすく書かれているので、あまり歌舞伎に詳しくない人でも気持ち良く読める作品。歌舞伎の世界を舞台にしたミステリというのは他に知らないので、今後もぜひとも続けていって欲しいシリーズです。


「演じられた白い夜」実業之日本社(2003年8月読了)★★★

劇団ガソリンボーイズの主宰者・神内匠は、今まで使ったことのない役者だけで舞台を作るという意図の下に、真冬の山奥のペンションに自ら選んだ人材を呼び集めます。神内匠の妻であり女優である神内麻子もその1人。他にやって来たのは、芝居は初めてだというミュージシャンの西口洋介、舞踏家の嶋原真澄、テレビや映画に出ている柏田日登美、女性ばかりの小劇団を主宰している手塚時子、モデルの真鍋祥子の5人と、舞台監督の水上慎二でした。今回の芝居は、犯人探しの本格推理劇。10日間の合宿の間、その日にやる稽古の分の台本だけが渡され、それぞれが自分がどういう役なのかはっきりとは分からないままに稽古に臨むことになります。芝居の題名は「マウス」。しかし現実の世界でも、まるで芝居と同じような殺人事件が起こり始め…。

雪の山荘を舞台に繰り広げられる芝居と現実。ミステリ劇と、まるでそれをなぞったような殺人事件。紛れもないミステリ作品なのですが、この作品をミステリとしてしか読まないとしたら、非常にもったいないですね。それはこの作品に限らず、近藤さんのどの作品を読んでも感じることなのですが。恋愛小説を読んでいても、恋愛小説というジャンルに収まりきらないものを感じますし、そういうジャンル分け自体が無意味に思えてきてしまいます。そしてそういう面が、近藤さんの作品の大きな魅力かと思います。
この作品でも確かに殺人事件は起こるのですが、事件という表層的な出来事に見え隠れする登場人物たちの感情が、実は一番のメインなのではないでしょうか。それぞれの熱い感情が、降り積もる雪によって冷やされ、体感温度が非常に下がっているような印象。冷たさのバランスが非常に心地よく感じられました。犯人やその動機に関しては、人によっては物足りなく感じる人もいるかもしれないですが、しかし私にはとてもよく分かります。現実と芝居のリンクもとても緊迫感がありましたし、冷たく静かな緊張感を孕んだ作品でした。


「カナリヤは眠れない」祥伝社文庫(2000年12月読了)★★★★

寝違えて首を痛めた週刊誌の記者・小松崎は、心斎橋で歩とぶつかったことがきっかけで、彼女の勤める接骨院へ連れて行かれることに。この接骨院の整体師である合田力は、口が悪いが、体の声を聞くことに関しては天才的という人物。小松崎は治療に通ううちに、合田の元に通う人々がみな何かしら問題を抱えていることに気が付きます。この接骨院で助手を務める恵と歩の姉妹も例外ではありませんでした。彼女たちは、合田の言う「カナリア」。そして不眠と頭痛を訴えてきた墨田茜もその1人。買い物依存症から立ち直って幸せな結婚をしたはずの茜は、またしても買い物依存症になっていたのです。

小松崎の視点で書かれた章と、墨田茜の視点から書かれた章が交互に配置されています。初めは全くミステリらしくないので、普通 の小説のような気分で読んでいたのですが、このラストには驚かされました。しかしそれがまたほどよい緊張感となっていて、なかなかの読後感です。
私はうっかりシリーズ2作目の「茨姫は眠れない」を先に読んでしまったのですが、「茨姫」よりもこちらの方がストーリーの流れも数段スムーズで、登場人物にも入りやすい気がします。合田先生のキャラクターも、こちらの作品の方がクローズアップされていて良いですね。小松崎との掛け合いも楽しい所です。体を触っただけでそれほど患者の心身のことが分かってしまうものなのかというのは疑問ですが、本当に実在したらいいですね。その時は、特に体に問題がなくても通ってしまいそうです。


「アンハッピードッグス」中公文庫(2001年10月読了)★★★★★お気に入り

真緒と岳はパリのアパルトマンで同棲中。3年前から仕事でパリに来ていた岳が、「犬の弁慶の世話のために」と真緒を呼び寄せたのです。幼稚園からの知り合いという、恋人のような、ただの腐れ縁のような2人。冬も近いある日のこと、岳は仕事帰りに日本人のカップルを連れて帰ってきます。新婚旅行でパリに来た都筑浩之・睦美夫妻が空港で荷物の置き引きに遭い途方にくれているところに、岳が居合わせたのです。旅券が再発行になるまで、と夫妻をしばらくの間アパートに泊めることにした真緒と岳。しかし4人で一緒に出かけたベルサイユ宮殿ではぐれ、岳と睦美、真緒と浩之、と2組に分かれてしまったことから、4人の関係の歯車は微妙に狂いはじめます。

とびきりの毒を含んだ恋愛小説なのですが、この2組のカップルの関係は、それだけで十分ミステリですね。岳に惹かれる睦美、そんな睦美の心を察して不機嫌になる浩之。そして浩之と真緒の接近。しかしいろいろと波風は立ちながらも、物語自体はとても静かに進みます。本来なら修羅場となり得る場面もとても静か。自暴自棄になってしまう人間もいません。だからといって、衝撃を受けていないわけでも、傷ついていないわけでもなく、それぞれ深いところに色々な想いを隠し持っているのですが…。もちろん真緒も岳も、ただの「良い人」ではありません。こんな危ういバランスの上に成り立っているカップルと出会ってしまったこと自体が、都筑夫妻の不幸だったのでしょうね。危険な破滅の香りと分かっていても惹かれてしまうのは、自分では止めようもないことですから。そして最後の言葉には納得と溜息。
恐らく日本では成り立たない物語。パリという街の風景に良く似合いますね。


「茨姫はたたかう」祥伝社文庫(2000年11月読了)★★★★

久住梨花子は、弟の結婚がきっかけで、実家を出て1人暮らしを始めます。しかし管理人の若い男は無表情でどことなく危なげ、両隣に住んでいる同年代の女性も最悪の第一印象。香水の匂いがきつすぎるホステスの桐生礼子にも、ずけずけと物を言うエロ漫画家の坂下早苗にもすっかり辟易した梨花子は、イヤイヤ始めた1人暮らしに、さらにナーバスになってしまいます。そんなある日、梨花子宛ての郵便物に開封された跡が。もしや職場の同僚の水科は本当にストーカーだったのか、それともまた別 の人物につきまとわれているのか。梨花子は慌てて数字錠をつけるのですが、あっさり外されてしまいます。

整体師である合田力のシリーズ2作目。
ストーカーにの影に怯える梨花子と、合田接骨院に通う週刊誌の記者・小松崎雄大の話が交互に配置され、その2つのストーリーが徐々に重なっていくという構成。一応メインの茨姫は梨花子なのですが、この梨花子というキャラクターが私にはなかなか掴めず、少々苦労してしまいました。こういうタイプの子なら早苗や礼子と話す時もしばらくは敬語のままなのでは、など細かい部分が気になってしまいましたし…。私としては他の茨姫たちの方が感情移入しやすいですね。特に早苗の「戦闘靴」についての下りが面白いです。
合田先生のキャラクターはなかなか良い感じ。整体をしながら、ちょっとした物事を見抜く目がすごいだなんて、こういう人が本当にいたらいいですね。体と心の両方から治療してもらえそうです。


「この島でいちばん高いところ」祥伝社文庫(2000年11月読了)★★

17歳の夏。葛葉、桃子、里美、聖、そして潤子(ユンジャ)がやってきた海水浴場は、5人が思い描いていた「海」とはあまりに違うものでした。しかし宿のおばさんに、少し離れた小島にきれいな海岸があると聞き、翌日5人は早速船で無人島へ。前日の海と繋がっているとは到底思えない、美しい海と砂浜が目の前に広がり、5人はすっかり夢中になってしまいます。そしてうっかり帰りの船に乗り遅れてしまうことに。それでも、宿のおばさんが気が付いて迎えに来てくれるだろうと楽観的な彼女たち。しかし他に誰もいないと思っていたその島には、実は男が1人潜んでいたのです。

祥伝社文庫創刊15周年記念の「無人島」テーマ競作作品です。(他は西澤保彦、恩田陸、歌野晶午)「凍える島」と同じく孤島物なのですが、雰囲気はまるで違います。「凍える島」にあるキラキラした透明感がなく、17歳の彼女たちが追い詰められていく様は痛々しくて、読むのがツラくなってしまうほど。作者はそれを上から優しく見守っているという感じでしょうか。「凍える島」との一番大きな違いは、作者と作品の一体感があまり感じられないということかもしれません。

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