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このページは、狩野あざみさんの本の感想のページです。

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「乱世の暗流-華陽国志3」中央公論社C★NOVELS(2004年8月読了)★★★★★
共王に代わって太子英が即位して2年。秦の攻撃を鮮やかに撃退した英は、姫惺を宰相に、朱華公子を司馬に任命、親秦派の佞臣を糾弾、段氏と常氏を引き立てて新しい施政を進めていました。姫惺の立てた政策を元に、国力の整備増強に腐心する蜀。しかしそんな折り、楚が秦の後押しを得て蜀に攻め入るつもりだという情報が入ります。

華陽国志3巻。朱華公子に髭が生えないのを、これからどうするつもりなのだろうと秘かに思っていたのですが、まさか英や姫惺自ら剃ってしまうとは。しかしそうでもしないと続かないですものね。蜀という架空の国を舞台にしているからこそなのでしょう。英と朱華公子の関係を男色のように思わせてしまうというのにも驚きましたが、こちらは中国ではそれほど珍しいというわけでもなさそうです。日本の戦国武将の衆道のようなものでしょうか。 朱華公子が 褒じ(女+以)の生まれ変わりならば、幽王は英なのかと思っていたのですが、しかしどうやら英だけでは済まなさそうです。秘かな危機感を孕んでいる部分がいくつかあるようで、今後の展開がとても気になります。
英王の「おれは、王としてそなたの兄の言う改革が正しいと判断した。だから、すべてそなたの兄に任せて、他の奴等にはなにも言わせん。それが、王の役目だ」という言葉、そして姫惺が王であった場合の国の行く末についての鋭さには脱帽。これほどの賢王ぶりを見せるとは思ってもいませんでした。

「権謀の大地-華陽国志4」中央公論社C★NOVELS(2004年8月読了)★★★★★
先の楚の侵攻を察知できなかったことの責任を負って宰相の職を辞し、楚姫らと共に楚に赴いた姫惺。しかしそれは宰相を罷免されて蜀に居づらくなったためではなく、姫惺自ら蜀と楚の正式な盟約を結び、秦の張儀の謀を破るための行動だったのです。姫惺は早速、楚で開かれた歓迎の宴の席で、秦がかつて自分の婚姻の時に刺客を送ってきたことを楚王に告げ、その宴席の空気を一気に蜀に傾けるという説客ぶりを見せつけます。そして蜀で姫惺の代わりに宰相の地位 についたのは、朱華公子でした。

華陽国志4巻。一見物静かに見える姫惺の策士振り。これで24歳という若さなのですから凄いですね。こういった社会の中で育つ人々は、今よりもずっと成熟するのが早かったのでしょうか。これまでの3巻はどちらかというと英の活躍が目立っていたのですが、この4巻での姫惺の活躍が目立ちます。しかしその姫惺の前に立ちふさがる秦の宰相・張儀の存在はあまりに大きいのですね。
宰相になれなかった段栄の味わっている苦さもまた、今後の不安材料となりそうです。

「戦塵の荒野-華陽国志5」中央公論社C★NOVELS(2004年8月読了)★★★★
朱華公子を伴って楚領の夷陵へと赴き、正式な盟約を行った王英。帰国して間もなく、姫惺の作成した法文を元に、大々的な機構の改革に着手します。しかし新法施行に対する大夫たちの反発は、予想通 り激しかったのです。そして続けて布告された、領巴を持ち、そこに住んでいる大夫たち全て華陽に居住し、代わりに地方官を領巴に派遣するという件で、国内の緊張は一気に高まります。そして朱華公子はやはり褒じ(女+以)の生まれ変わりであるとの囁きが広がり…。

華陽国志5巻。徐々に歯車が狂い始めているようです。国のためとはいえ、あまりに一気に改革を進めすぎた罠。これで 姫惺が蜀にいればまた話は変わっていたのでしょうけれど、姫惺は秦に対抗するために忙殺されている状態。せめて常大夫や段大夫ら、英が即位 する時に協力した人間にだけでも、了承を得て欲しかったかと…。やはりこの辺りは若さ故のことなのでしょうか。

「亡国の微笑-華陽国志6」中央公論社C★NOVELS(2004年8月読了)★★★★★
秦に対抗するために、周辺諸国の合従を計っていた姫惺。しかし秦の逆襲によりその合従が崩れ、姫惺は5年ぶりに帰国することに。姫惺は、段栄亡きあと空いていた司徒の座につきます。しかし数日後、騎兵の訓練のために狩猟が行われている頃、商人の清が 姫惺の屋敷を訪れていました。なんと張儀が秦の宰相に返り咲き、先の内乱の時に姿を消していた苴君が秦王に保護されているというのです。苴君が厳しい捜索をかいくぐって通 った道は、狄道と呼ばれる山岳地帯を抜ける道。今まで知られていなかった道の存在に、王英たちは早速苴へと向かうことに。

華陽国志、最終巻。王英は30歳、姫惺は31歳。朱華公子は26歳。
最終的にこういう結果に終わってしまったとはいえ、物語を読み始めた時に、不吉な伝説から予想した形とはかなり違っていました。色々な出来事はあったものの、3人がそれぞれに自分のできることを精一杯やってのこの結末。ここまでやれたのは逆に凄かったのではないかと思いますし、朱華公子も伝説になど負けていなかったのではないでしょうか。伝説の生かし方が、やや甘かったとも言えるかもしれませんが、それでもやはり良かったと思います。あまりどろどろとした結末にならなかったのも好印象。王英が、最後まで男気を見せてくれたのも嬉しかったです。すっかり蜀や3公子たちに感情移入して読んでいたので、最後は涙々。しかしとても読み応えのある作品で、大満足。本当の歴史物に比べても全く遜色がない作品ですね。とても良かったです。
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