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このページは、東川篤哉さんの本の感想のページです。

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「密室の鍵貸します」カッパノベルス(2004年1月読了)★★★★
神奈川県と千葉県の間にある烏賊川市。烏賊川市大映画学科に籍を置く戸村流平は、3年先輩の茂呂耕作のコネで、地元のテレビ局・ONSの系列であるONS映画社というこぢんまりした映像製作会社に就職が内定。しかしその覇気のなさのために、付き合っていた紺野由紀にはあっさりフラれてしまうことに。ヤケ酒を飲んで暴れた流平の噂を聞いた茂呂に誘われ、流平は「殺戮の館」というマイナー映画のビデオを持って、家に遊びに行くことになります。しかしその晩、紺野由紀が殺されるという事件があり、しかもアリバイを証明してくれるはずの茂呂もまた、殺されてしまうのです。しかもその密室の中にいたのは自分ただ1人…?!流平は、元義兄で探偵事務所を開いている鵜飼杜夫に相談することに。

光文社の「カッパ・ワン」からデビュー。同時デビューは、加賀美雅之さん、石持浅海さん、林泰広さんの3人。
好き嫌いは分かれそうですが、基本的に軽くて読みやすい文体。烏賊川市の成り立ちについて読み始めた時は、この文体は自分には合わないかもしれないかもしれないと思ったのですが、本編が始まるとすぐに気にならなくなりました。主な登場人物は、主人公の流平と流平が頼る鵜飼探偵、そして砂川警部と志木刑事の4人。それぞれに情けなく、緊張感のなさがなんともいい味を出しています。作風自体もユーモアたっぷり。コメディを狙っているというよりは、天然ボケの印象です。この文章だと、どんなにガチガチの本格ミステリを書いても、一種独特な雰囲気になりそう。しかしそれにしても、労が多い割に… の犯人で、気の毒になってしまいます。この動機は真実だったのでしょうか?
烏賊川市というのは作者の作った架空の都市なのですが、これからもここを舞台に書き続けていくという構想のようです。この題名は、ビリー・ワイルダー監督の「アパートの鍵貸します」からなのですね。流平の趣味から言っても、作者の東川さんはおそらくかなりの映画好きな方なのでしょうが、マニアックなところが前面に出ていないところがいいですね。

「密室に向かって撃て!」カッパノベルス(2004年1月読了)★★★★
金属加工の職人・中山章二を逮捕に向かった砂川警部と志木刑事。しかし本当は障害及び器物破損の容疑での逮捕だったにも関わらず、密かに改造拳銃を製造していた中山は拳銃不法所持の容疑と勝手に勘違い。逃走しようとして4階の窓から墜落してしまいます。砂川たちが駆けつけた時には、中山は既に死亡。持っていた拳銃は消え失せていました。弾丸が最大8つ篭められているはずのその拳銃の紛失に、砂川たちは青くなります。そして数日後、烏賊川市の海岸で銃で撃たれて殺されたホームレスの死体が発見されます。一方、戸川流平はその海岸で十条寺食品の会長・十条寺十三とその孫娘・さくらと知り合い、その関係から、鵜飼はさくらの結婚相手に関する調査の依頼を受けることになります。そして鵜飼と流平が調査結果を持って十条寺家を訪れた夜、再び銃声が…。

「密室の鍵貸します」に続く、鵜飼探偵事務所と戸川流平、砂川警部と志木刑事のコンビが活躍するシリーズの第2弾。流平が正式に探偵助手に、そして前回登場していた朱美も前面に出てきて「第2の助手」となりますし、新しいメンバーも加わり、さらに賑やかになります。
読んでいて一番感じたのは、前回以上に芝居っ気が強くなったということ。相変わらずの天然ボケぶりですが、特定の登場人物が天然ボケというよりは、作品全体にその空気が流れているという印象が強かったです。前作以上に開き直っているという感じですが、しかしなかなかいいバランスですね。十条寺さくらのキャラクターも楽しくて、今後の展開に期待大。
肝心のトリックもなかなかでした。しかしこの作者のシリーズは、どれも犯人が大真面目に苦労してしまう運命なのでしょうか?1作目もそうでしたが、こちらも犯罪が上手くいかせてあげたかったと、犯人がちょっぴり気の毒になってしまいました。銃声のカウントダウンが面白かったです。
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