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このページは、福永令三さんの本の感想のページです。

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「クレヨン王国の十二ヶ月」講談社青い鳥文庫(2009年2月読了)★★★

大晦日にユカがふと目覚めると、枕元に置いておいたクレヨンの箱がからっぽ。なんとクレヨンたちがカメレオンを囲んで会議をしていました。シルバー王妃の12の悪い癖を直さないと城には戻らないとゴールデン王が家出をしてしまったというのです。1年以内にゴールデン王が戻らなければクレヨン王国は徐々に色を失い、世界は白黒の写真のようになり、ついには人間も地球も滅びてしまうという緊急事態に、カメレオン総理大臣はシルバー王妃に直ちにゴールデン王を探しに行くように要請。そしてそこに現れた王妃は、早速ユカを連れて12色のクレヨンが治める12ヶ月、12の町を探しに行くことに。

クレヨン王国シリーズの1作目。
シルバー王妃と小学校2年のユカの冒険物語は、これはこれでとても可愛らしいのですが、やはり児童用の童話だなという印象です。散らかし癖、お寝坊、嘘つき、自慢屋、欲しがり癖、偏食、意地っ張り、げらげら笑いのすぐ怒り、けちんぼ、人のせいにする、疑い癖、お化粧3時間という12の悪癖を直すという教訓話ですし、そもそも王様が1年以内に戻らなければ地球が滅びてしまうというのに、それでも家出してしまう王様というのが納得しづらいところ。シルバー王妃とユカが旅する12の町は12の月の町で、 1月は白、2月は黄色、3月はピンクとそれぞれの町の色が決まっており、その町に入るにはその町の色の服装をしなければならないという設定は楽しそうなのですが、色彩が鮮やかに書かれている割にあまり伝わってこなかったです。ユカが目覚めた時に1年が過ぎていた、という辺りはとても好きなのですが…。小学校の頃に出会っていれば、おそらくもっと楽しめたのでしょうね。残念です。


「クレヨン王国のパトロール隊長」講談社青い鳥文庫(2009年2月読了)★★★★★

学校の春休み、5年1組では岩戸山の自然公園で星座の観察が行われることになりノブオも参加。しかしノブオと右田先生はなぜか犬猿の仲で、あれほど評判の良い右田先生もノブオにだけは辛く当たりノブオも右田先生の前では憎まれ口を叩いてばかり。星座の観察でも、妹から借りてきたクレヨンの箱をひっくり返されたことがきっかけで級友と言い合いになり、先生に叱責されたノブオは暗闇に向かって走り去ることに。そしてノブオが見つけたのは、どこか見覚えのある山小屋風の丸太づくりの別荘。それはノブオの腹違いの妹のきよ子が交通事故で失明する前に、市で募集していた児童画に応募して見事銀賞に輝いた絵とそっくりだったのです。ノブオはその家にいたフクロウに出迎えられ、気を失ってしまいます。

クレヨン王国シリーズの4作目。こちらは小学校5年生のノブオの成長物語です。
ノブオの家は複雑。実の母は既に亡くなっており、父親は再婚。再婚相手は大人しい口数の少ない人でノブオはすぐに懐き、新しいお母さんが連れてきた赤ん坊のきよ子とも仲良くなるのですが… きよ子が交通事故にあった辺りから事態は一変。車にはねられたきよ子は一命は取り留めるものの失明し、きよ子を避けようとした車は対向車と衝突して、運転していた男性が亡くなってしまうのです。きよ子の世話をするためにお母さんは仕事を辞めなければならなくなり、5年生の途中で受け持ちとなった右田先生と上手くいかなくなった頃からノブオの性格はどんどん変わり始め、全てが雪だるま式に悪い方へと転がり始めます。
憎しみと悲しみで心がもう限界まで来てしまっているノブオ。そのことを知ったクレヨン王国の国王はカメレオン総理に後処理を任せることになるのですが、ここですごいのはクレヨン王国がノブオの心を表面的になだめて解決するのではなく、抜本的な荒療治をすること。もちろん最初はそこまでの意図はなかったのかもしれませんが、結果的にノブオはパトロール隊長として責任の重い任務に就き、クレヨン王国を滅ぼしかねない火と水の争いに巻き込まれてしまうことになります。下手をすれば心の限界を超えてしまうというのに、自分にできる最善を尽くそうとするノブオ。そして辛い思いをしながら生きているのが自分ではないことに気づき、自分を犠牲にしてクレヨン王国を守ろうとすることに…。児童書とは思えないほど厳しい深さを持った物語。これは大人にも十分読み応えがありますね。

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