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このページは、リュドミラ・ウリツカヤの本の感想のページです。

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「ソーネチカ」新潮クレスト・ブックス(2009年3月読了)★★★★★

幼い頃から本の虫で、兄にその冴えない容姿をからかわれて育ったソーネチカは、7歳の時から27歳になるまでの丸20年間というもの、のべつまくなしに本を読み続け、やがて図書館専門学校を卒業すると、古い図書館の地下にある書庫で働き始めることに。そんなソーネチカがロベルト・ヴィクトロヴィッチに出会ったのは、第二次世界大戦勃発後に疎開したウラル地方のスヴェルドロフスクの図書館でのことでした。それまでは女たらしで一生結婚する気のなかった47歳のロベルトは、見た目は冴えないソーネチカに運命を感じて結婚を申し込むことに。(「SONECHKA」沼野恭子訳)

96年にフランスのメディシス賞及びイタリアのジュゼッペ・アツェルビ賞を受賞したという作品。
主人公は、幼い頃から本が大好きで読んでばかりいたというソーネチカ。彼女がここまで自分のことを客観的に受け止められるようになったのは、13歳の頃の失恋が大きく関係していたのでしょうか。本を沢山読んで育ったことも関係あったのでしょうか。元々の性格というのもあるのでしょうけれど、そのことこそがソーネチカを幸せな人生に導いたようです。ロベルトとの結婚後も何度も「なんてこと、なんてこと、こんなに幸せでいいのかしら…」とつぶやくことになるソーネチカ。経済的には貧しくとも、どれほどの困難が先行きに待ち受けていようとも、これほど精神的に豊かな女性はなかなかいないでしょうね。現在の満ち足りた状態に感謝し、周囲の人々に愛を惜しまない女性。神の恩寵という言葉がこれほどまでに似合う女性はなかなかいないのではないかと思います。物が溢れていても飽くことを知らず、欲しがり続ける現代の日本人とはまるで違いますね。
そんなソーネチカに晩年降りかかった出来事は、他の人間には災難としか言いようのないものですが、ソーネチカにとってはそれもまた神に感謝すべきもの。こんな風に物事を受け止めることができれば、どれほど幸せか…。実際、ソーネチカの幸せな一生は、ソーネチカ自身が得たものだとはっきりと言うことができます。彼女のような芯の強さが、本当の強さなのでしょうね。そして大きな愛情の持ち主には、おのずと大きな愛情が返ってくるものなのでしょう。幸せとは人にしてもらうものでも人に頼ってなるものではなく、自分からなるものだということを改めて認識させられます。

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