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このページは、ローレル・フェランの本の感想のページです。

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「アーサー王妃物語」角川文庫(2007年2月読了)★★★
ローレル・フェランは、ある晩、自分がグウィネファーと呼ばれる女性になった夢をみます。その頃、不眠症治療のために過去世退行セラピーを受けていたローレルは、グウィネファーがアーサー王妃であるグイネヴィアであることに気づき、自分の過去世がグウィネファーその人であることを知ることに。そして数年後。ローレルは2日間6時間をかけて、改めてグイネヴィアの過去を辿ることになります。その体験の中で知ったグウィネファーは、今まで思っていたような温和で愛らしい女性ではなく、自尊心の強い、エネルギーが全身にいきわたった強い女性でした。(「GUINEVERE」奥野昌子訳)

アーサー王妃・グイネヴィアの生涯を、自分の過去世として辿ることによって描き出したという物語。通常のアーサー王伝説では、その美貌によってアーサー王妃となり、しかしやがて円卓の騎士のうちでも最も輝かしいランスロットと相思相愛の仲になるというグイネヴィアは、良くも悪くも女性らしい女性として描かれていますが、ここに登場するグウィネファーは男まさりの強さと賢さを持ち、自分の中の「女性」を拒否するような女性。愛する男の子供を産み、女性としての幸せを得るためにではなく、戦士として指揮官として戦うべく育てられたため、自分では心の鎧を脱ぐことができなくなってしまった不器用でまっすぐな女性です。
今までにないグイネヴィアを描いた物語ということで面白く読めましたし、グウィネファーの生まれ育ったケルトの文化と、アーサー王のキリスト教文化の慣習の違いが興味深かったです。グウィネファーを支え続けるメレウィン、そしてアーサーとグウィネファーの導き手となるマーリンもいいですね。しかし実際に自分の目で見た情景のリアルな力強さはあるものの、やはりローレル・フェランが本職の小説家ではないせいか、グウィネファーなど登場人物の造形にあまり深みを感じることができず、ランスロットとモルガナに至ってはまるで魅力が感じられないままに終わってしまい、それがとても残念でした。それよりもグウィネファーとしての過去世を体験したローレル・フェラン自身の物語の方が、知らなかった世界を垣間見たという意味で興味深かったです。
ちなみにグウィネファーとは、従来のケルト語、ブリトン語の発音に基づいた読み方をしたグイネヴィアのこと。ランスロットはランシラス、ガウェインはガルウェインという名前で登場しています。
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