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このページは、シャルル・ペローの本の感想のページです。

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「ペロー童話集」岩波少年文庫(2009年7月読了)★★★★

王さまとお妃さまに待望の赤ちゃんが生まれ、小さなお姫さまのために洗礼式が盛大に執り行われることになります。名付け親として招かれたのは、国中で見つかった7人の妖精たち。妖精たち一人一人から贈り物をしてもらい、想像できる限り最高のお姫さまになるようにするのが、当時の習慣だったのです。しかし宴の席に8人目の妖精が現れます。その妖精は50年以上も前から塔の外に出ておらず、生きているのかどうかすら分からなかったため、招かれていなかったのです。妖精用のどっしりした黄金のケースに入った純金のスプーンとフォークとナイフは7つしか作っておらず、その妖精の前に出されたのは普通の食卓道具。ばかにされたと思い込んだ年取った妖精は、口の中でぶつぶつと脅しの文句を呟きます… という「眠りの森の美女」他、全10編の童話集。(「CONTES DE PERRAULT」天沢退二郎訳)

「過ぎた昔の物語またはお話集・教訓付き」という題で1697年に刊行された童話8編と、韻文で書かれたという「ロバの皮」と「おろかな願い」の計10編。同じく韻文で書かれた「グリゼリディス」だけは未収録なのですね。
「そして2人は幸せに暮らしました...」の後の王太妃の恐ろしい後日譚まできちんと書かれている「眠りの森の美女」や、狼に食べられたきりで終わってしまう「赤頭巾ちゃん」。特に王太妃に関するエピソードは子供心にも強烈だったのですが、その後、そのような展開となる「眠りの森の美女」の本を全く見かけず、一体どこに載っているのだろうと思っていたので、今回は嬉しい再会でした。この結末はペローだったのですね。この「眠りの森の美女」を始め、この本を改めて読んでみて、絵本などで知られているお話とはまた一味違うと感じられる方も多いのではないでしょうか。お話もそれぞれに面白いですし、そのそれぞれのお話の終わりに「教訓」や、時には「もう一つの教訓」が付けられてるのが楽しいのです。私は10編のうち「巻き毛のリケ」というお話だけは全然知らなかったのですが、訳者あとがきによると、この作品だけはグリムにもバジーレにもヨーロッパ各地の民話・説話には明らかな類話が見当たらない物語なのだとのこと。ペロー童話集の中でも、異色の物語と言えそうです。
以前から、民間伝承に忠実なグリムに対して、同じく民間伝承を採取しながら、ルイ14世の宮廷で語るためにその伝承を物語に洗練させたペロー、というイメージがずっとあったのですが、訳者あとがきによると、「赤頭巾ちゃん」などはペローの方がグリムよりも基本的構造に忠実なのだそうです。グリムの「いばら姫」では「眠りの森の美女」の後日譚はカットされ、「赤頭巾ちゃん」には新たな結末が付け加えられたのですね。しかしやはり洗練ということで、元の伝承とは少し形が違ってしまった部分もあるようですね。例えば「サンドリヨン(シンデレラ)」で、サンドリヨンが舞踏会に行くのは2回だけ。伝承につきものの「3度の繰り返し」がなくなっています。それでもやはり物語として、とても面白いです。
マリ林(Marie Lyn)さんという方による挿絵がまたとても素敵な本。マリ林さんは、天沢退二郎氏の奥様なのですね。

収録:「眠りの森の美女」「赤頭巾ちゃん」「青ひげ」「長靴をはいた猫」「妖精たち」「サンドリヨン-または小さなガラスの靴」「巻き毛のリケ」「おやゆび小僧」「ロバの皮」「おろかな願い」

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