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このページは、クリスティーネ・ネストリンガーの本の感想のページです。

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「きゅうりの王さまやっつけろ」岩波少年文庫(2005年10月読了)★★

もうすぐ70歳になるおじいちゃん、40歳で自動車保険会社の課長のお父さん、同じく40歳の専業主婦のお母さん、15歳のマルチーナ、12歳のボルフガング、小学校2年生のニキと6人暮らしのホーゲルマン一家。そのホーゲルマン一家に驚くべき出来事が起きたのは、去年の復活祭の日曜日のことでした。台所でバターンという音がしたので見に行ってみると、そこのテーブルに座っていたのは、冠をかぶったきゅうりかぼちゃ、クミ・オリの王さまのトレッペリーデ2世。なんと家の地下室で反乱が起きて家来たちに見捨てられてしまったので、台所に避難して来たというのです。(「WIR PFEIFEN AUF DEN GURKENKONIG」若林ひとみ訳)

ドイツ児童文学賞受賞作品。
きゅうりの王さまというのは、50cmぐらいのきゅうりのようなかぼちゃのようなものに、顔や手足がついた奇妙な生き物。赤い宝石のついた金の冠をかぶり、手には白い手袋、足には赤いペディキュアをしているという奇妙奇天烈な姿。
訳者のあとがきによると、これは子供の親離れの物語とのこと。確かにそう言われてみれば、そうかもしれないですね。ボルフガングは、きゅうりの王様にへつらう父親のことを苦々しく感じながらも、小さい頃は良く遊んでくれていい父親だったことを思い出し、自分がいつ頃から父親とそりが合わなくなったのか考えていますし、姉のマルチーナは色々と禁止ばかりされ、しかも自分の意思に関係なく家庭教師のことを決められてしまい、腹を立てています。復活祭の休日も、父親が決めたしきたり通りに過ごさなくてはいけません。子供も立派な1人の人間としての人格を持っているのに、父親はそのことを全く分っていないのです。母親のように大人になっていれば、父親の言うことにもそれなりに付き合い、適当に流すこともできるのでしょうが…。そしてきゅうりの王さまは、そんな家長としての父親、父親としての一方的な権威や権力を象徴しているような存在なのでしょうね。だからこそ、お父さんは王さまのことをかばい、家来のように甲斐甲斐しく世話をしたりするのでしょう。そんなお父さんの姿が可笑しくもあり哀しくもあり、でした。

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