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このページは、カイ・マイヤーの本の感想のページです。

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「鏡のなかの迷宮-水の女王」あすなろ社(2007年9月読了)★★★

パラレルワールドのヴェネチアは、水の女王に守られた町。歴史上最大で最強と言われたエジプト帝国軍がヴェネチアのラグーナに侵入しようと攻めてきたのを撃退した時以来30年間、ヴェネチアは水の女王の力に守られてきていました。そんな町のに育った14歳のメルレは、孤児院出身の女の子。同じく孤児院出身で目の見えない13歳のジュニパと共に、追放されし者の運河にあるアーチンボルトの魔法の鏡工房に弟子入りすることに。(「DIE FLIESSENDE KONIGIN」遠山明子訳)

「鏡のなかの迷宮」の第1部。
大運河のレガッタ(ボート競漕)では人魚がボートをひき、人魚のほかにも半人半鳥の怪女セイレーンや海の怪物レヴィアタン、翼のある岩のライオンが存在する世界。しかしその人魚とは、美しい目と白くすべらかな肌、そして長い髪を持っているところは私たちの知っている人魚の姿なのですが、顔を2つに裂くようにぱっくりと開く口を持ち、その中にはサメよりも鋭く尖った恐ろしい歯が生え揃っているというのです。主人公のメルレ弟子となるのは、魔法の鏡を作る工房。その向い側にあるのは、ほっそりと見えるだけでなく、身につけると文字通り痩せる衣装を作るウンベルトの織物工場。そしてこのヴェネチアが水の女王に守られているように、エジプトはファラオに、ロシア皇帝ツァーの帝国はババ・ヤガーという魔女に守られており、地球の内部には地獄があると大学教授によって立証されているというのです。この現実の世界とはかなり違うよう。
1巻だけでは、まだ登場人物たちのことすらよく分からず、正直面白いと思えるほどではありませんでした。このページ数にしては物事が忙しく展開しすぎて、じっくりと状況を知る間もないような印象。メルレとゼラフィンのことに関しても、あまりにお手軽すぎるような気がします。私がドイツのファンタジー作家とあまり相性が良くないせいかもしれませんが…。


「鏡のなかの迷宮-光る石」あすなろ書房(2007年9月読了)★★

メルレと水の女王は、黒曜石のライオン・フェルミトラクスと共にヴェネチアを脱出。エジプト帝国の包囲網をかいくぐり、北に向かって進みます。ロシアのツァーの帝国を除き、世界はあらかたミイラ軍団とスカラベの大軍に蹂躙されており、エジプト軍が通った土地の荒廃ぶりは見るも無残。そしてその頃、エジプトの太陽の舟の軍団がヴェネチアに向かっていました。一方、ヴェネチアではウンベルトの織物工場のゼラフィンが、アーチボルトから事情を聞き、ジュニパのことを地獄の王から救う道がないか考えていました。アーチンボルトは職人組合を追われて以来、長年<光の王>に魔法の鏡を納めており、ある時、盲目のジュニパに魔法の鏡を使って視力を与えよとの注文を受けていました。そしてそのジュニパが、近いうちに<光の王>に引き渡されることになっていたのです。(「DAS STEINERNE LICHT」遠山明子訳)

「鏡のなかの迷宮」の第2部。
第1部はヴェネチアが舞台でしたが、第2部は地球の内部にあるという地獄が舞台。第1部でのメルレとゼラフィンのことも少々お手軽すぎるのではないかと思っていたのですが、この第2部の展開も、登場人物の感情がきちんと描きこまれていないせいか、全てが上滑りのように感じられました。そもそもメルレとジュニパに感情移入しようにも、彼女たちについてあまりに情報が少なすぎるのではないかと思います。外見的な情報1つ取ってみても、メルレは黒髪、ジュニパはプラチナブロンドで、2人ともどちらかというと細い、という程度。ゼラフィンは、ジュニパほど明るくないブロンドで、淡いブルーの目というだけ。そもそも彼らがどんな性格をしている少年少女なのか、何をどのように感じるのか、読んでいても掴み切れません。ただ単に色が白いとか黒いとか、熱いとか冷たいとか、そんな言葉だけが並んでいても、こちらにはほとんど何も実感として伝わってきませんし、そんな状態のところに、水の女王が物事をあからさまに隠そうとするので、非常にストレスが溜まりました。地獄「アクシス・ムンディ」の情景にもまるで魅力が感じられず、残念。
第1部を読んだので、とりあえず第2部も読んでみましたが、第3部「ガラスの言葉」はもう読む気にはなれないです。

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